鏡を見る。

私を確認する。


―私は音和かなで。
ブランブル女学院に通う、普通の女の子。
ちょっとくせの強い桃色のハネ毛に
太めの眉とそばかすの目立つ顔。
正直、あんまりかわいいとは言えないかもしれない。
鏡を見るのが好きではない…というのもわかる気がする。
でもね、笑った顔はちゃんとかわいらしいんだよ。
きっと自分でも気づいていなかったと思う。
……邪魔だった前髪はもう切った。
私を隠すものは何もない。
暗くて人見知りで下ばかり向いている音和かなでは、もういない。

―私には弟がいる。
名前はかのん。音和かのん。
男の子とは思えないくらい、とてもかわいらしい中学1年生。
可愛い見た目の通り、女装趣味がある。
本人がそうしたいならそれでいいんだと思う。
両親にはそのことを内緒にしているけど、きっと無理に話す必要もない。
…最近は、なんだかよそよそしくて、姉としては寂しいけど。
急にお姉ちゃんの様子が変わったら、戸惑うよね。
でも大丈夫、そのうち慣れる。
私が音和かなでだって…お姉ちゃんだって、受け入れる日が来る。

―私には好きな人がいる。
好きな人…といっても、正直恋愛感情なのかどうかはよくわからない。
けれど、気がつけばいつもその人のことを考えている。
その人の前では、胸がドキドキして顔が熱くなる。
その人のことを―………したいと、思っている。
これって、やっぱり恋なのかな？
…女の子同士なのにね。
もう、自信のなさを理由に一歩引く必要はない。
こんなにも胸が苦しいんだ。
音和かなでが今まで出来なかったことを
私はやってみようと思う。

私には…、ううん、これはもう、いいんだ。
だって、今の私は…音和かなでだから。
***じゃない。
***は…ここには存在しない。
…こうしていることさえ、きっと奇跡なんだから。


私は変わる。

私は、替わる。


大丈夫、きっとうまくいく。
うまくできる。
生まれ変われる。


そう、私は。

今日からは、あたしが。





あたしが、音和かなでだ。

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