第10回分更新予定だった内容を掲載します。
探偵は、小さな依頼人・ニコレットに案内されながらポールモール邸に向かう道中、事件の詳細について聞いていた。
ポールモール氏は高名な医学博士だ。この街の郊外に屋敷を構えている。
彼は現在、自宅に3人のメイドを雇っており、彼女らが身の回りの世話をしていたそうだ。
そのうちの1人が依頼人、ニコレット・タバカム。髪で目を隠した小柄な子供だ。
昨日の夕方は、ニコレット含めて2人が、それぞれ用事で出払っていたらしい。
事件が起きたのは、その時だった。
ポールモール氏と、屋敷に残っていたメイドが、ポールモール氏の部屋で倒れていたらしい。
部屋は内側から鍵がかけられていたが、なぜか内側から窓が割られた形跡があった。
テーブルには、ほとんど口をつけられていないワインがひと瓶。
そんな不可解な現場を、買い出しから帰ってきたニコレットが発見した。
ニコレットは慌てて鍵を開けて様子を確認したようだが、既に2人とも苦痛に満ちた表情で息絶えていたとの事だ。
その後、戻ってきたもう1人のメイドと共に、急いで警察を呼んだが、警察は現場の状況から、ポールモール氏とメイドの心中だという結論を導き出したそうだ。
だが、ニコレット曰く、それは納得のいかない状況だったそうだ。
「旦那様は無理心中なんてしないっス…」
目元が隠れていてもわかるほど、思い詰めた表情でニコレットは言う。
それを聞いた探偵は、片眉を上げ、小さな依頼人の見解を訊くことにした。
「ほう、どうしてそう思ったんだい?」
「あまり大っぴらには言えないっスけど、奥様に先立たれ、家族のいない旦那様は、アッシら使用人を半ば養子のように扱ってくれてたッス。とても優しい人でした。その旦那様が使用人を道連れに自殺なんて…アッシには到底、考えられないっス…あ、先生は…先生はどうして、アッシが依頼しに行く前から他殺だとお考えになったんスか?」
ニコレットに質問され、探偵はタバコの煙を吐き出してから答えた。
「…引っかかるんだよ。新聞にも、ポールモール氏は苦痛に歪んだ顔で死んでいたと書いてあった。だが彼は医学博士だ、きっと薬学にも精通している。だったら、苦しまずに死ねる薬を使って死ぬこともできた筈さ。わざわざ最期に苦しい思いなんてしたくないだろう?ここに違和感があったんだよ。彼は自殺ではなく、誰かに殺されたんだろうさ」
つらつらと語る探偵に、ニコレットは驚きの目を向けていた。
「ん?どうしたんだい、そんなに驚く事じゃあないだろう」
ニコレットは口をパクパクと何度か動かした後、ようやく言葉を紡ぎ出した。
「どうして…新聞の内容だけで、そこまで推理したんスか…?」
純粋に驚いていた。たった数行の新聞記事を流し読みしただけで、この探偵は警察の見立てを覆す推理に至ってしまったのだ。そしてそれは恐らく、外れていない。
探偵は薄ら笑いでタバコを燻らし、得意げに気障な煙を吐き出した。
「簡単な事さ。
灰色の脳細胞を使えばいいんだ。それだけだよ。」

[845 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[409 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[460 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[150 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[311 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[202 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[149 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
[68 / 500] ―― 《古寺》戦型不利の緩和
―― Cross+Roseに映し出される。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
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白南海 「・・・ロストの情報をやたらと隠しやがるなワールドスワップ。 これも能力の範疇なのかねぇ・・・・・とんでもねぇことで。」 |
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白南海 「異能ならリスクも半端ねぇだろーが、なかにはトンデモ異能もありやがるしねぇ。」 |
不機嫌そうな表情。
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エディアン 「私、多くの世界を渡り歩いてますけど・・・ここまで大掛かりで影響大きくて滅茶苦茶なものは滅多に。」 |
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エディアン 「そういえば貴方はどんな異能をお持ちなんです?」 |
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白南海 「聞きたきゃまずてめぇからでしょ。」 |
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エディアン 「私の異能はビジーゴースト。一定の動作を繰り返し行わせる透明な自分のコピーを作る能力です。」 |
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白南海 「あっさり言うもんだ。そりゃなかなか便利そうじゃねぇか。」 |
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エディアン 「動作分の疲労は全部自分に来ますけどねー。便利ですよ、周回とか。」 |
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白南海 「集会・・・?」 |
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エディアン 「えぇ。」 |
首を傾げる白南海。
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エディアン 「――で、貴方は?」 |
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白南海 「ぁー・・・・・どうすっかね。」 |
ポケットから黒いハンカチを取り出す。
それを手で握り、すぐ手を開く。
すると、ハンカチが可愛い黒兎の人形に変わっている。
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エディアン 「わぁー!!」 |
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エディアン 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・手品の異能ですかー!!合コンでモテモテですねー!!」 |
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白南海 「なに勝手に変な間つくって憐れんでんだおい。」 |
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白南海 「糸とかをだなー・・・・・好きにできる?まぁ簡単に言えばそんなだ。 結構使えんだよこれが、仕事でもな。」 |
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白南海 「それにこれだけじゃねぇしな、色々視えたり。」 |
眼鏡をクイッと少し押し上げる。
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エディアン 「え!何が視えるんです!?」 |
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白南海 「裸とか?」 |
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エディアン 「ぇ・・・・・」 |
咄嗟に腕を組み、身構える。
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白南海 「・・・嘘っすよ、秘密秘密。言っても何も得しねぇし。」 |
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エディアン 「ケチですねぇ。まぁ私も、イバラシティ生活の時の話ですけどねー。」 |
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白南海 「・・・・・は?」 |
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エディアン 「案外ひとを信じるんですねぇー、意外意外!」 |
そう言ってチャットから抜けるエディアン。
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白南海 「あぁ!?きったねぇだろそれ!クッソがッ!!おいいッ!!!
・・・アンジニティぶっ潰すッ!!!!」 |
チャットが閉じられる――