『腹立つ。ああ、腹立つなお前………、空っぽすぎるんだよ。』
建前を必要としないアナタは、ここでもわたしを射る。
──そうだ。だから。
わたしは誰かの面を被る。
否。皮を被るからこそ、わたしは空なのか。
…… まあ、どうでもいいか。
≪since 13:00≫ 化けの皮
「──そんなわけないでしょう!?」
ダン、と、机を叩く音が部屋の中に響いた。
男は取り乱した様子で、その場にいるスーツ姿の男性──齢40前後に見える──に掴みかかる。
「冗談も、大概にしてください!」
「事実です」
対し、掴みかかられた男は冷静だった。
まるで、この反応は予想の範疇だったとでも言うように。
若しくは、単純に慣れていたからかもしれない。
「今は冬です。腐敗は遅い。それでも、死体の状態、解剖結果から見ても、既に死後一ヶ月は経っています」
「そんな、そんなわけ。そんなわけ、ないじゃないですか……!!」
そんなわけない、そんなわけないと、同じ言葉ばかりを男は繰り返す。
彼の言い分は、その場の誰もが同意していた。
それは掴みかかられている、警察の人間でさえもそうである。
しかし、死体には口がなくとも、確と語っていたのだ。
"わたしは、ひと月前には死んでいるのだ"と。
「そんなわけ……」
男は掴みかかっていた手を離し、だらりとその場にぶら下げる。
深く俯き、驚愕に目を見開いたまま言葉を垂れ流していた。
そんなわけない、そんなわけない。
「だって、彼女は、」
顔をもたげる。
物言わぬ箱を見つめる。
中には切り刻まれていた死体を、さらに切り刻んだ肉が入っている。
「彼女は二日前、私と、式を挙げたばかりだったんですよ」
その姿は、誰もが目撃していた。
「もし、もしも。本当に彼女が、ひと月前には死んでいたのだとしたら」
誰もが羨む、幸せを絵に描いたような式だった。
この男の隣で微笑む女性の姿を、誰もが目にしていた。
この男の隣で手紙を読み上げる女性の姿を、誰もが目にしていたのだ。
「私の隣にいた彼女は──一体、誰だったというんですか?」
──その場の誰も、彼の叫びに答えを与えられる者はいなかった。
死体よりも、今この場では、生者こそ語る言葉をもたなかったのだ。
ミゼラブル・ハッピーエンダー
異能 『 泥被る造花 』
3.
2の████████████寄生させる▓▓▓、██████████████████。
████████████際には█████邪魔と▓▓、██████████てしまう。
███ものに▓▓▓▓▓▓ない█████を長時間███████こと▓▓▓▓弱化・崩壊████████████。
また、保有する███████せ、誘惑し、陶酔させること███。
4.
能力者自身に3を行う際は、容姿や声帯といった身体情報以外の【私】を引き継ぐことはできない。
そのため、████を█壊██████ない。
また、使用者に限り、用いる【私】は一部(例えば容姿のみ)でも可。
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ミハル 「……」 |
カサリ、カサリ。男は紙を折っていた。
端と端とを重ね合わせ、爪先で折り目を押し潰す。
──やがて立ち上がると、廊下に出て、さらに奥の重たい扉を押し開く。
そこには、見渡す限りの青が広がっていた。
海の上だった。
甲板に出ると、船室よりもやけに寒い。
そして鼻につくのは、潮よりもまず、オイルのにおいだ。
足を踏み出せば、カンカンカンと中身のないような軽い音が響く。
手すりの元まで歩いて行くと、手にしていた紙飛行機を構える。
「……あ」
しかし、彼自身の意思で飛ばすよりも早く、その飛行機は強風に連れ去られてしまった。
元々、こんな状況下で紙飛行機を飛ばすなど無理があったのだ。
ある意味では、当然の結果といっていいだろう。
「……」
風に煽られて消えていく、手紙だったものを目で追う。
遅かれ早かれ、あれの行く先は海の中だ。最後まで見守らずとも、知っていた。
──わたしが死に抱かれるその時は、溺死が良い。
足に重りを括りつけて、誰の目にも届かない場所まで沈むのだ。
わたしが苦し紛れに手を伸ばしても、決してだれも掴めないような、深く、深くまで沈んでいこう。
……嫌だな。きっと苦しい。とても寒いだろう。
痛いのも嫌いだし、苦しいのも嫌いだ。死ぬのだってきっと、怖い。
記憶がなくとも、他者との繋がりが途絶えようとも、漠然とした恐怖はいつもそこにいる。
それはこの身に巣食う、【異能】のように。
──否。異能が巣食っているからこそ、恐怖するようにされているのかもしれない。
ここにいるのは【私】なのか、それとも【異能】なのか、すでに判別がつかない。
わたしはきっと、容れ物だ。
わたしはきっと、【異能】なのだ。
だから──。

[845 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[409 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[460 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[150 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[311 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
[202 / 500] ―― 《商店街》より安定な戦型
[149 / 500] ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
[68 / 500] ―― 《古寺》戦型不利の緩和
―― Cross+Roseに映し出される。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
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白南海 「・・・ロストの情報をやたらと隠しやがるなワールドスワップ。 これも能力の範疇なのかねぇ・・・・・とんでもねぇことで。」 |
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白南海 「異能ならリスクも半端ねぇだろーが、なかにはトンデモ異能もありやがるしねぇ。」 |
不機嫌そうな表情。
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エディアン 「私、多くの世界を渡り歩いてますけど・・・ここまで大掛かりで影響大きくて滅茶苦茶なものは滅多に。」 |
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エディアン 「そういえば貴方はどんな異能をお持ちなんです?」 |
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白南海 「聞きたきゃまずてめぇからでしょ。」 |
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エディアン 「私の異能はビジーゴースト。一定の動作を繰り返し行わせる透明な自分のコピーを作る能力です。」 |
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白南海 「あっさり言うもんだ。そりゃなかなか便利そうじゃねぇか。」 |
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エディアン 「動作分の疲労は全部自分に来ますけどねー。便利ですよ、周回とか。」 |
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白南海 「集会・・・?」 |
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エディアン 「えぇ。」 |
首を傾げる白南海。
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エディアン 「――で、貴方は?」 |
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白南海 「ぁー・・・・・どうすっかね。」 |
ポケットから黒いハンカチを取り出す。
それを手で握り、すぐ手を開く。
すると、ハンカチが可愛い黒兎の人形に変わっている。
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エディアン 「わぁー!!」 |
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エディアン 「・・・・・・・・・」 |
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エディアン 「・・・手品の異能ですかー!!合コンでモテモテですねー!!」 |
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白南海 「なに勝手に変な間つくって憐れんでんだおい。」 |
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白南海 「糸とかをだなー・・・・・好きにできる?まぁ簡単に言えばそんなだ。 結構使えんだよこれが、仕事でもな。」 |
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白南海 「それにこれだけじゃねぇしな、色々視えたり。」 |
眼鏡をクイッと少し押し上げる。
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エディアン 「え!何が視えるんです!?」 |
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白南海 「裸とか?」 |
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エディアン 「ぇ・・・・・」 |
咄嗟に腕を組み、身構える。
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白南海 「・・・嘘っすよ、秘密秘密。言っても何も得しねぇし。」 |
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エディアン 「ケチですねぇ。まぁ私も、イバラシティ生活の時の話ですけどねー。」 |
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白南海 「・・・・・は?」 |
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エディアン 「案外ひとを信じるんですねぇー、意外意外!」 |
そう言ってチャットから抜けるエディアン。
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白南海 「あぁ!?きったねぇだろそれ!クッソがッ!!おいいッ!!!
・・・アンジニティぶっ潰すッ!!!!」 |
チャットが閉じられる――