［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

第11話　正義の味方は言葉少なに去る





──ケッケッケッケ。ほら本性を現したぞ──

　ゆらりと揺れるようにグラサン男が立ち上がると、背中から炎を噴き出した。
　さらにグラサンを地面に捨て、目と口、鼻からも火を噴き出す。
　背中の火は羽に、顔面から噴き出す火は虫の頭の形を取った。

　グラサン男改め、虫頭が現れた。

　虫頭が手を前にかざすと、火で出来た槍が現れる。

──あれは、赤蜂だな。少し変異しているが、古戦場の火でも取り込んだか……──


──悪魔じゃねぇな。石川県あたりに居る火を出す妖怪と、古戦場を照らす鬼火の怪異がくっついて位階を上げた奴だ。古戦場の火は戦の怨念の塊だ。位階を上げた時に怨念が形と感情を手に入れて人型に擬態してたんだろうさ──


──多少タフだが、俺様の敵じゃねぇよ。だがしかし、気合入れて殴れよ。油断してると火傷するぜ──

──赤蜂は実体のある妖怪だ。殴れる。ほら、来るぞ──

　虫頭が火の槍を突き出した。鋭く、勢いのある突きだ。
　とてもグラサン男の動きとは思えない鋭い突きに、大きく飛び退る。


　虫頭はここぞとばかりに突進しながら突いてくる。

──義手で払え──

　悪魔の声に腹を括ると、半身に構え、義手の手を突き出し、穂先に合わせて槍を払う。
　一瞬黒い光に覆われた義手は鉄の槍を火花を散らして弾いた。
　弾かれた槍は団扇で火を仰ぐように揺れ、形を失い消え去る。
　虫頭が動揺したように、動きを止めた。


──チャンスだろ？──


　言われるがまま踏み込み、左手で燃える虫頭の額を殴りつける。
　コンパクトに、最短距離を鋭く打つ。
　わずかに熱を感じるも、額を打ち据えた虫頭が弾かれたように仰け反った。
　いける、と確信めいたものが胸に落ちる。

　のけぞっているアカバチの胸を力任せに義手で殴りつける。
　常人の30倍の打撃力は、成人を超えるアカバチの巨体を持ち上げた。

　下がったアカバチの頭に鋭い左フックがめり込む。
　左フックを止めずに打ち抜き、そのまま背中を相手に向けてクルリと回転。右手の義手を裏拳気味にに相手に振り下ろす。
　脳天から振り下ろされる鋼鉄の一撃に、アカバチは地面に叩きつけられた。


　腹の芯から息を吐き出し、倒れたアカバチを蹴り上げる。
　なすすべもなく浮いたアカバチへ、そのどてっぱらへと真っすぐに義手を突き出した。


　砲弾のように勢いよく突き出された義手が、相手の胸に突き刺さった。

　同時、槍のように突き刺さった義手が、黒く輝いた。

──盗った！──

　虫頭の全身が激しく燃え上がり、炎を噴き上げる。
　激しく燃えたのも一瞬、虫頭は燃え尽きて灰となっていく。
　そして、脈打つように義手が赤々と燃え上がった。
　不思議と熱は感じない。


　虫頭が消え去るのを横目に己の手を見る。
　徐々に火は弱くなり、何の跡形も残さずに消える。

──パイロキネシス、というより火遁と言ったところか。まぁ魔術の一系統よ──


──火の権能ってのは強力なだけあって色んな分類や呼び名があってな。
　　正直系統図が作れない有様なのよ。
　　ゆえに最も古く火を魔術と呼び崇めたゾロアスター教に習って火の権能をまとめて魔術と呼ぶのが悪魔の習わしだ。
　　まぁ、今の時代は色んな異能を魔術と呼ぶから、違和感はあるだろうがな。火の歴史は古い。それ故の事だ。あまり気にせず慣れるといいぜ。
　　そもそも人類が今の文明を築いたのは火を得たからだしな。呼び名が色々出来るのは頷けるだろ──


──パイロキネシスは任意の地点に火を出したり操ったりできるサイコキネシスの系統を指す総合能力の事だが、今の俺達にはそこまでの力はねぇ。まぁ奪った相手は小物だからよ──


──赤蜂からは【纏い火】、古戦場の鬼火から【火の玉】の権能を奪ってやったぜ。
　　お前のエネルギーを糧に火と火薬を操れる。
　　パイロキネシスとは違って何も火が無い所からは火が出ねぇ。
　　これは忍術で言う火遁の力だ。まぁ、奪った相手が低級妖怪だからな、そんなもんよ。
　　火遁は火矢や火筒を使って火事を起こす科学寄りの術だからよ、お前の義手からしか出せねぇぜ。
　　まぁ火の権能は単純だが強力だ。幸先がいいな──


──気づいてなかったのか。この義手、火薬詰めてるシリンダーがあるぜ。可燃性オイルも詰まってるな──


──銃弾でも出るようにしたかったんじゃねぇの？　あとは爆弾とか──


──面倒な国だよなぁ。まぁいいや。ほれ、力込めて見ろよ。練習だ。義手の指先に火を灯すイメージだ。千里眼の時みたいに力を込めればいい──

　不思議なことに、すんなりと火が出た。
　指先にライターのように小さな灯が灯る。


　力を込めてみると火は手の全体に広がり、やがて手の平の上に拳ほどの大きさの火の塊が出来上がった。

　これが火の玉の権能なのだろう。感触を確かめてみると、どうやら握れるようだ。
　浮いたりはしないらしい。
　燃える火の石を握っているような絵ずらに顔をしかめる。


──自分の力で自分を傷つけるバカが居るかよ。お前の手を離れるまでは熱かねぇよ──


──離れたら多少は熱い。呪い返しや鏡面系の能力が相手なら倍返しで熱い。火傷じゃ済まねぇな。相手見て使えよ。まぁ、そんなこと出来る悪魔や妖怪は滅多に居ないがな──


──同系統の火の妖怪や悪魔から力を奪えば、もう少し出来ることが増えるが、今はまぁその程度よ──

　十分な成果だと思うのだ。

　この悪魔は俺をどうしたいのだろうか。

──それよかあっちのどうするよ──


　言われて振り向き、思い出す。気絶して倒れる悪漢共と、真ん中でキラキラした目で見て来る女性を。

　やってしまった。



　目を輝かせてお礼を言うのは、ピンチに表れた白馬の騎士とでも思ってくれているのだろうか。

──巻き込むなよ──

　分かってるよ、と心の中で返しつつ、断腸の思いで視線を外す。悪魔と手を組んだ隻腕片足の未就労者。男女関係とか無縁だな。


　すいません悪魔の力ですとはなかなか言えない。

──エネルギー操作系の万能異能ですって答えとけ──

　何だよそれと思いつつ言われたとおりに口にする。



　逃走経路を考える。



　飛び退り、一足飛びに走り去る。
　何かしら叫んでいる女性を置いてひたすら走った。
　住宅街を抜け、大通りへと出てる。
　しかし、なんでこんなに苦労をしているのだろうか。

──知ってたか？　正義の味方ってのは、見返りを求めちゃいけないんだぜ──


──ほぅ？──


──クククッ、ハッハッハッ！　オマエ、素質あるぜ？──


──正義の味方の、さ──

















＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

　去り行く背中を見送りながら少女は呟く。
　その瞳は、薄っすらと黄金色の光を帯びていた。










＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊


　ロングコートに反りの入った狩猟帽子、オペラ座の怪人のマスクをつけた奇妙な男が車から降りてくる。
　建設現場に横たわる男たちの前で足を止めた。
　そこは奇妙な現場だった。


　見れば不良少年だと一目でわかる若人が何人も地に倒れていた。

　
　近づいて見る。手をかざして呼吸、脈拍を計る。
　呼吸はあるし、脈は正常。大きな出血もない。
　強い衝撃による気絶が推察される。
　放っておいても問題は無さそうだったが、異能事件の目撃者に事情聴取もせねばならない。

　意思を研ぎ澄まし、力を込める。
　現実を歪め、欺き、世界に誤認させる。
　異能とはそういう力だ。
　
　突如眼前に湧き出るように水球が現れた。


　腕を振るえば、水はまき散らされ、大地に倒れた男達へと降り注いた。

　水に触れた男たちの傷が治っていく。
　生命力を高めて急速に傷を回復される御業。奇跡の水、聖水、様々に呼ばれる稀有な能力だった。
　本来であれば直ぐに意識を取り戻した男たちは立ち上がってくるはずだった。
　その後は事情聴取という名の尋問だ。
　吐くまで殴って回復させればだいたいは言うことを聞くようになる。
　しかし、男たちは倒れたまま動かない。


　異能を使われたのだろう。睡眠系の異能ではなさそうだ。
　強制睡眠に特徴的な瞳孔の収縮やイビキ、体液が漏れ出る等の症状は見られない。
　次に、命に別状がないのは見て分かる。
　目を覚まさないのは、推測だが体内の生命力が低くなっているのだろう。
　体力、生命力の簒奪。ドレインスキルと呼ばれる物だと仮定する。


　小一時間も放っておけば元に戻るだろうが、こうなった原因は突き止めねばならない。

　周囲に視線を巡らせる。何かの燃えたような跡があった。


　霊的な何かが燃え尽きる時の現象に似ている。人魂や鬼火等と類似する消滅の仕方だ。

　懐から懐中時計のようなものを取り出し、確認する。
　思った通り、針が振り切れていた。


　焼け跡の近くの足跡を見る。
　戦闘があったのだろう、激しく動いた形跡がる。

　痕跡から動きを予測する。


　洗脳された男どもをなぎ倒し、霊災の中心となる妖怪を撃破、後に逃走したと言った所だろうと推測する。

　これだけのことが出来る異能使いが放置されている。


　狩猟帽子を被ったオペラ座の怪人は、そう言うと踵を返して車に向かう。
　仮面の間から見える瞳は、鋭く、決意と覚悟を湛えていた。

サクモ(1057) に ItemNo.2 防弾ベスト を手渡ししました。

サクモ(1057) に ItemNo.3 ペットボトル を送付しました。

自然LV を 5 UP！（LV20⇒25、-5CP）
合成LV を 5 UP！（LV20⇒25、-5CP）

ItemNo.4 鋼鉄の義手 に ItemNo.16 駄石 を合成し、駄物 に変化させました！
　⇒ 駄物／素材：強さ10／［武器］攻撃10(LV50)［防具］活力10(LV50)［装飾］体力10(LV50)／特殊アイテム

ミーシャ(1059) の持つ ItemNo.3 不思議な装飾 に ItemNo.17 花びら を合成し、駄物 に変化させました！

ItemNo.17 鋼鉄の義足：電磁装甲 に ItemNo.11 不思議な牙 を付加しました！
　⇒ 鋼鉄の義足：電磁装甲／防具：強さ140／［効果1］活力15 ［効果2］活力10 ［効果3］－


ノラ(1606) とカードを交換しました！

サモン：シャドウ （サモン：シャドウ）


ビッグウェイブ を研究しました！（深度1⇒2）
ブレイクダウン を研究しました！（深度0⇒1）
バーニングチューン を研究しました！（深度0⇒1）

ディープフォレスト を習得！
バルバロス を習得！
烽火連天 を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

ユウ(1049) は ビニール袋 を入手！
サクモ(1057) は ビニール袋 を入手！
ミーシャ(1059) は ビニール袋 を入手！
チヨミ(1238) は 浮草 を入手！
チヨミ(1238) は 毛 を入手！
ミーシャ(1059) は 橙小石 を入手！
チヨミ(1238) は 鉄くず を入手！
ユウ(1049) は 何かの骨 を入手！

ウシ区 K-7（沼地）に移動！（体調6⇒5）
ウシ区 K-8（沼地）に移動！（体調5⇒4）
ウシ区 K-9（道路）に移動！（体調4⇒3）
ウシ区 K-10（道路）に移動！（体調3⇒2）
ウシ区 L-10（チェックポイント）に移動！（体調2⇒1）

MISSION!!
ウシ区 L-10：チェックポイント《堤防》 が発生！
　　 - ユウ(1049) が経由した ウシ区 L-10：チェックポイント《堤防》
　　 - サクモ(1057) が経由した ウシ区 L-10：チェックポイント《堤防》
　　 - ミーシャ(1059) が経由した ウシ区 L-10：チェックポイント《堤防》
　　 - チヨミ(1238) が経由した ウシ区 L-10：チェックポイント《堤防》

［843 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［396 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［440 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［138 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［272 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型
［125 / 500］ ―― 《商店街》より安定な戦型
［125 / 500］ ―― 《鰻屋》より俊敏な戦型
［24 / 500］ ―― 《古寺》戦型不利の緩和



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　






　





　





ロストのふたりがチャットに入り込んできた。

　

　

　





　





　







軽蔑の眼差しを向けるエディアン。

　








ミヨチンを制止する。





　







フレディオの胸倉をつかみ強く睨みつける！

　

　

　




　

　

　　　――ザザッ

　

　

　

　

チャットが閉じられる――

チェックポイント。

仄かな光に包まれた六角形の柱が立っている。

　

･･･柱から滲み出るように、何かが生み出される。



　




それは言葉を発すると共に襲いかかる！




（初発生のイベント戦：異能FP+5！生産FP+5！）