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今田 「んー、こんなもんかな。」 |
今日も今日とて日記を綴っていく。
そろそろ半年が過ぎようとしてる頃か。
自身の人の周りの関係性が増え、嘗てあった関係者達は徐々に変化していく。
若ければ青春、大人であれば人生の岐路とも言うべきか。
心の動きの細かさを数多見てきて日々過ごしながら、自分に変化をも確かめる。
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今日の店の乗客はこのような感じであった。
ある日、男の子、と言っても見た目自体は18歳前後ぐらいの青少年だった。
今まで来た客さんの中でも随分な量の本を持って行く。おっとりした淡い翡翠色の子は
機敏な赤毛の子の選ぶ本をポンポン積まれても動じない力持ち。前やってきた樒君の様だ。
話を聞いてみるとどうやら、子供たちに読ませるための本だった様だが、どうやら
ツクナミ区から来たようで、其方の方が近くていい書店もいくつかあるはずと思い
内の本屋へ赴いた理由を尋ねると、来てくれたのには思いがけない縁があり。
この話はまだ綴ってはいないが、とある学校騒動で手を貸した際、
その件の恩賞にと或る白髪の男性がやってきたことがありその人物に勧められた様だ。
どんな形であれ、こういった縁で新しい人と出会うきっかけが来るのは嬉しい。
話を聞く限り少年二人や話していた子供たちは何か訳ありの様子ではあったが。
まるで兄弟の様な持ちつ持たれつな様子を感じさせる青年二人。
子供の世話ともなるとなかなか大変だが、元気に暮らしていることを思う。
然し今思うと、赤毛の子が選んでいたあの一冊の本は……。
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またある時の一日、天気も丁度いい休日の頃。
御来店してきたお客さんの印象は中々強く、化粧と意匠をスレンダーにこなす
超慎重な女性と思いきや、体格はよくよく見ると男同然な人であった。
個人的にその手の人物に悪い人間は早々知っていたので
接客さえ気を付ければ大丈夫だろうと軽めに挨拶をしてみた。
瞬間、私はビビり散らかした。何故ならめっちゃ喋ってくるからだ。
オネエ系ながらおばさん色の旋風の如きマシンガントークを此方に
此処まで飛ばしてくるお客さん自体がここでは初めて過ぎた。
めっちゃ喋る。多分こっちから話題振らんでも2,3時間喋ってくれるぐらいあった。
どうやら自分と同じくこの辺には最近来たようで
休日がてら周辺を歩き回ってきたところ、何とも辺鄙なこの店に
辿り着いてきてくれたようだ、完全に冷やかしに来たらしい。おもしれー客だ。
そんなで周辺のスポットもまだ詳しくないとのことなので
自分お勧めのスポットや情報誌のイバライブやイバラシティのシティマップ。
観光案内のガイドを紹介していった、BARで働いてると直感していたが、
ではなく学校関係、相良伊橋高校で仕事をしているそうだ。恐らく教諭だろうかと。
後初期の頃にきてくれた高校生に見えない高校生は時期的にそろそろ卒業とのこと。
彼の成長率は随分早い方だったが、闘乱祭でそれが間違いだったと気づくのはまたいずれかに。
そんなこんなでマシンガントークを乗り切り快活にちょっとおちょくってくるこの人。
面白い先生さんではあった、多分また来てくれそうな気が自分にはした。
後に自身の記憶の脆弱さを思い知る。
服装は違ったとはいえ、更に気付いたのは次に会い、名を聞いてからだった。
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此れもまたとある日、再びあの藝術展によって成り立ったお客との縁。
その気配に気づいた時には既に店の中を回っていた後で。
姿は褐色ので青白い色をした、然し幽体をしていた綺麗な少年だった。
カウンターへ此方に伺いに来た少年は、どうやら友人達に本を贈りたいそうで、
然しどのような本が良いか悩んでいたようで、お勧めの本を見繕ってほしいとのこと。
少年が今日が本を贈る日だと言って思い出した。
それは4月23日、サンジョルディの本の日。
日本ではあまり知られていない、友人らと本を贈り合う「世界本の日」という日だ。
その記念日を重んじる彼はつまる所街の外の人物だろうか、とそこはかとなく感じた。
そんな彼は中々多くの交友関係をお持ちで、友人たちの為の本選びは
骨が折れる大変さだったと同時に久々に自分も本業の仕事で火が付いた。
本選びをしながら、少年との話も幾分か講じた。
どうやら彼はここに来る前から旅をしていて、以前は移動遊園地に勤めていたらしい。
自分が移動遊園地というのが存在したのを知るのはこれが初めてだった。
何やら今は夢を見つけて此処、荊街に住んでいて、それまではたくさんの旅をしてたそうな。
話をしている間にどうやら感覚的に自分は彼の事を気に入っていったようで、
思わず高めで稀少な本をお勧めしてしまった、高い買い物をさせてしまったと
若干悪い気が今ではしているが、友人に贈る本としては十分と思っている。
彼の友人たちの本選びがまとまり、お会計をしている最中に彼がこう話した。
私たちは初対面だよね? 何か関わりがあったっけ。 と。
少なくともこの街で過ごしてきた中で、彼を見るのは今回が初めてだった。
然し彼には自分との縁があるらしいとのことで、次にこう聞いてきた。
茨街藝術展に来た? と。
その思わぬ言葉を聞いて自分は唖然とした。
確かに自分はそのイベントに参加したことがあり、作品も展示したと話した。
漸く自分と彼との縁が解った瞬間で、彼も同じく参加者ったのだ。
彼は『鐘つき時計』というからくり時計の作者。
作品の説明に書かれていた、『自らの立つ基盤を二度と忘れないための碑。』
その言葉は参加された作品自分の中でも印象に残った言葉だけあって。
トレバー君の時と言い、またも縁は続くのかと、
嬉しく思いながら彼の名前を呼ぼうとした。
その時には彼の姿は窓の向こうへと消えていった。
もっと正しく言えば、窓の中へと溶け込む様にその場を消え去っていった。
彼の姿だけでなく存在そのものが、本当に幽霊だったのだろう。
あの藝術展の記憶から奇妙な縁は不思議な程続いていく。
ふと気になった。ステファン・E・ミュンヒハウゼン。『鐘つき時計』の作者。
旅をしていたという彼の、本当の夢とは何なのだろうか。
からくり屋敷と廃墟の事も聞いていた。少し訪ねてみるとしよう。
今回の日記はここまでとする。〆