親愛なるワトソンへ
すっかりいい陽気になっちまった。夏はあんまり好きじゃない。
夏というより今は雨期か。
うだるような蒸し暑さだし、誕生日あるし。まだ二か月も先だけど。
自分の誕生日ってなんか嫌なんだよな。友達を祝うのは好きだ。でも。
自分の誕生日ってのはどうにもしっくりこない。
自分が生まれてきたことを祝うっていうのがなんとも……魚の骨みたいに飲み込めない。
喉奥に引っ掛かるっていうか……形容するのが難しいな、言葉が出てこないや。
ハローワトソン。調子はどうだ。お前は一体何歳なんだろう。
テストが近づいているので今日の手紙は手短に済ませようと思う。
いつも手短だって? 余計なお世話だ。
日記に長いも短いもないだろ、日々の出来事を綴るのが日記なんだから。
何も無かったなら当然短くなる。
きょうはなんにもないすばらしい一日だった、って書いてシメときゃいいんだよ。
おれのなつやすみ。ネタが古すぎるって? それも余計なお世話だ。
話が脱線した。そういうわけでテストが近い。
クラスの皆はテスト勉強に精力的に取り組んでるみたいだ。偉い。俺も頑張ろう。
思えば受験生なわけだが、俺はそもそも受験するのだろうか。
大学生になるにしたってそろそろオープンキャンパスに行かないといけない。
就職なら尚更の事、早めに行動しないといけない。
早い奴は2年の頃から大学見学へ既に行ってるみたいだ。
八奈見もちゃんと行先決めてる……クラスでもそういう話題が多くなってきた。
こうしてみると俺だけ未来をちゃんと考えられていないのかもしれない。
ただ漠然と勉強して学校に行って、いつかそんな生活にも必ず終わりが来る。
先生は学生の頃何を思って探偵の道に進んだんだろう。聞いてみるか。
まあ最悪受験も就職もできなくたって、このナンチャッテ探偵業がまわる限り
お前の餌代くらいは工面できるから大丈夫だ。心配するな。
それじゃあまた、気が向いたらお前に手紙を書こう。
2020/06/15 菱形世論より
PS.久々の脱皮だったな。べろんべろんになってたけど大丈夫か?
先生。先生。もう直接会わなくなってどれくらい経ったんだ。半年かそこらか。
イバラシティに来る前は毎日のように顔をつきあわせていたから
ほんの少しだけ寂しくなってきたのかもしれない。夏休みに会いに行こうか。
先生の予定を思い浮かべながら目を閉じて。
それから。
瞬きのあとに見た世界は異質だった。
目を開ける。
ハザマに転移していた。ナレハテ化するというワードが気になってはいたが
現状解決する方法もなければそもそも体組織に変異も見つからないので放置している。
気を付けてはいるが。他の三人とは「まあ大丈夫だろ」ってことでいったん落ち着いた。
楽天家なのは強みの一つ。なるようになれ。なるようになるさ。多分な。
いやでも冗談抜きにマジで化け物になったらどうしよう。
這ってでもワールドスワップを起こした張本人にワンパン入れておくか。
ナレハテってパンチできるのか? という命題はこの際捨て置くとして。
2020年06月某日――探索継続中。

[822 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[375 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[396 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[117 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
[185 / 500] ―― 《大通り》より堅固な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
アンドリュウ
紫の瞳、金髪ドレッドヘア。
体格の良い気さくなお兄さん。
料理好き、エプロン姿が何か似合っている。
ロジエッタ
水色の瞳、菫色の長髪。
大人しそうな小さな女の子。
黒いドレスを身につけ、男の子の人形を大事そうに抱えている。
エディアン
プラチナブロンドヘアに紫の瞳。
緑のタートルネックにジーンズ。眼鏡をかけている。
長い髪は適当なところで雑に結んである。
白南海
黒い短髪に切れ長の目、青い瞳。
白スーツに黒Yシャツを襟を立てて着ている。
青色レンズの色付き眼鏡をしている。
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アンドリュウ 「ヘーイ!皆さんオゲンキですかー!!」 |
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ロジエッタ 「チャット・・・・・できた。・・・ん、あれ・・・?」 |
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エディアン 「あらあら賑やかですねぇ!!」 |
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白南海 「・・・ンだこりゃ。既に退室してぇんだが、おい。」 |
チャット画面に映る、4人の姿。
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ロジエッタ 「ぁ・・・ぅ・・・・・初めまして。」 |
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アンドリュウ 「はーじめまして!!アンドウリュウいいまーすっ!!」 |
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エディアン 「はーじめまして!エディアンカーグいいまーすっ!!」 |
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白南海 「ロストのおふたりですか。いきなり何用です?」 |
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アンドリュウ 「用・・・用・・・・・そうですねー・・・」 |
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アンドリュウ 「・・・特にないでーす!!」 |
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ロジエッタ 「私も別に・・・・・ ・・・ ・・・暇だったから。」 |
少しの間、無音となる。
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エディアン 「えぇえぇ!暇ですよねー!!いいんですよーそれでー。」 |
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ロジエッタ 「・・・・・なんか、いい匂いする。」 |
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エディアン 「ん・・・?そういえばほんのりと甘い香りがしますねぇ。」 |
くんくんと匂いを嗅ぐふたり。
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アンドリュウ 「それはわたくしでございますなぁ! さっきまで少しCookingしていたのです!」 |
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エディアン 「・・・!!もしかして甘いものですかーっ!!?」 |
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アンドリュウ 「Yes!ほおぼねとろけるスイーツ!!」 |
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ロジエッタ 「貴方が・・・?美味しく作れるのかしら。」 |
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アンドリュウ 「自信はございまーす!お店、出したいくらいですよー?」 |
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ロジエッタ 「プロじゃないのね・・・素人の作るものなんて自己満足レベルでしょう?」 |
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アンドリュウ 「ムムム・・・・・厳しいおじょーさん。」 |
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アンドリュウ 「でしたら勝負でーすっ!! わたくしのスイーツ、食べ残せるものなら食べ残してごらんなさーい!」 |
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エディアン 「・・・・・!!」 |
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エディアン 「た、確かに疑わしい!素人ですものね!!!! それは私も審査しますよぉー!!・・・審査しないとですよッ!!」 |
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アンドリュウ 「かかってこいでーす! ・・・ともあれ材料集まんないとでーすねー!!」 |
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ロジエッタ 「大した自信ですね。私の舌を満足させるのは難しいですわよ。 何せ私の家で出されるデザートといえば――」 |
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エディアン 「皆さん急務ですよこれは!急務ですッ!! ハザマはスイーツ提供がやたらと期待できちゃいますねぇ!!」 |
3人の様子を遠目に眺める白南海。
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白南海 「まぁ甘いもんの話ばっか、飽きないっすねぇ。 ・・・そもそも毎時強制のわりに、案内することなんてそんな無ぇっつぅ・・・な。」 |
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白南海 「・・・・・物騒な情報はノーセンキューですがね。ほんと。」 |
チャットが閉じられる――