［基本］OK.　［戦闘］OK.　［取引］OK.　［スキル］OK.　

第９話　悪と正義と命の天秤



「えっと……あれ、痛く、無い？」

　気づけばベットの上だった。
　窓の外は真っ暗で今が夜だと知らせてくれる。
　虫の声もしない静かな夜だ。
　猛烈な痛みの記憶に体がこわばっているのを、ゆっくり動かし、確認する。

「やっぱり、痛くはないか……」

　ほっと一息。
　あの痛みはなんだったのだろうか。
　一番考えられるのは、回復の副作用とか、だろうか。
　襲ってくるのは恐怖だ。
　これからも傷つき、回復する度にあの痛みがやってくるとしたら、耐えられる自信はなかった。

「……死にたい。……冗談でも言うべき言葉じゃないか」

　そんな呟きが漏れた。
　全身を刺すような痛み。
　血管が破裂したような熱さ。
　ただでさえ片腕、片足が無いのに、痛みも襲ってくるのか。
　最悪だな。

「痛みに耐えれる強さが欲しい……痛みを起こさないほどに強靭な肉体も欲しい……健康が欲しい……」

　元の身体に戻りたい。
　死ぬのは怖い。
　せっかく助かったのに。死んだ人たちがいっぱい居たのに。
　弱音を吐いてしまう自分に無性に腹が立ち、苛立ちが募った。

「強さが欲しい……」

　何に対しての強さか定まらぬ漠然とした強さを望みながら、天井を仰ぎ見る。

　そんな時、ふと声が聞こえた。

　──強くなりたいか？──

「そりゃね。痛いのはやだし、自衛もしないといけないし……あれ？」

　布団をひっぺがえして飛び起きる。
　床に飛び降り、瞬時に視線を周囲に配り、気配を探る。
　悪魔と戦った時に感じたような、肌が泡立つような感覚は、無い。

「……誰もいない？」

──誰もいないゼ。お前だけダ──

「何処に居る、姿を現せ！」

──まぁそう騒ぐなヨ。落ち着ケ──

「悪魔の言葉なんかっ」

──信じる信じないは好きにするがイイ。が、俺は勝手に語るとしよウ。さっそくだが、姿なき俺の正体はな、ほラ、よくあるやつだヨ。俺ハ──

　ぞくりと悪寒が走る。言葉を待たずに理解する。どこから声が聞こえるのか。

──オマエだ──

「はは、殴られ過ぎて頭おかしくなったのか……」

　事故からこっち不思議な経験ばかりしたものである。
　幻聴が聞こえるくらい当たり前ではなかろうか。
　そう思うと少しだけ気持ちが軽くなったが、残念なことに幻聴は消えてくれるわけではなかった。

──俺はお前に食われた悪魔ダ。今じゃお前に取り込まれてこのザマだがナ。確かに序列最下位だったけどよぅ、こいつはひでぇゼ──

「……食われた？　怪物が何を言ってるんだか」

──ボコボコにして食っちまったくせニ、とぼけんなヨ。それに、俺は正義と略奪を司る悪魔だゼ。それをトカゲとか、えらい言いようだったよナ──

　ディーさんが言っていた悪魔を倒して強くなる、というのがこれだろうか。
　しかしそれよりもひっかかかる言葉があった。

「悪魔が正義を語るとか笑えるな」

──正義って言葉は主観的だからナ。天使にでも悪魔にでもなるのサ。だから俺が生まれタ──

「で、略奪か。そこは笑えないな。まぁ素人の病人にボコボコにされたんだが」

──仕方ねぇだロ、ちゃんとした手続き踏んで顕現したんじゃねぇからナ。本来の力の１％もだせちゃいねぇサ──

「ほんとかよ……」

──まぁ今となっちゃそんな話はどうでもいいサ。お前さ、俺と契約しないカ？──

「来たよ……定番の、契約しないかトーク」

──何が原因かわからねぇがお前との同化が進んでル。いや原因は予想がつく。が、それは重要じゃねぇ。重要なのハ、このままじゃそのうち俺がオマエに取り込まれて消えちまうカ、オマエを俺に取り込んで身体を奪っちまうかの、どっちかダ──

「迷惑だ。除霊してやる。幸い知り合いにはプロっぽい人が居る」

──物騒なこと言うなヨ。対価を用意すル。力と命の保証ダ──

「力と、命の保証？」

──そうサ、お前肉体を上手く使いこなせてないだロ。俺が手伝ってやるヨ──

「具体的な資料を見せて営業するって習わなかったか？」

──悪魔の世界じゃ、それらしい言葉で相手の気持ちを誘い込んで具体的な話を避ける、ってのが主流なんだゼ？──

「やはり除霊せねば」

──焦るなよ、女に嫌われるゾ？──

「あん？　戦争か？　戦争なんだな？」

──クックック。与えるものは色々あるが、まずは命ダ。俺がオマエの防波堤になってやル──

「命？　防波堤？」

──このままじゃオマエ確実に死ぬゾ？──

「来たな、これまた定番のオマエ死ぬぞ発言。……理由を言ってみろ」

──自分の身体、不思議に思ってないか？　何でこんなに傷の直りが速いのか。あぁ、言わなくてもいい、お前の感情は大体分かる。繋がってるからな。結論から言うと、こいつは寄生虫のせいだ──

「き、寄生虫とか気持ち悪いこと言うなよ」

──善玉菌とか悪玉菌とか居るだロ。あれの少し大きいだけのやつダ。目には見えんサ。別にそれ自体は大したコトじゃねぇ──

「大した事あるだろ？」

──こいつは生贄を少しでも長生きさせるために生み出されたもんでナ、なかなか死ななくなる代わりにやがて心臓や主要な臓器に巣を作るのサ。まぁそれだけならいいんだガ、活動を終えた虫が体内で弁になっちまってナ、血管詰まって死ぬんだワ──

「くっそ悪魔のくせに、なんか妙に説得力のある説明だ」

──お前の感じた強烈な痛みは巣作りが進んだら起こる初期症状ダ──

「あの痛みが初期症状……」

──俺と契約しロ。そしたらオマエが寝てる間に弁になりそうなゴミをきれいに掃除してやル。つまり、巣作りの進行を遅らせてやル。痛みも襲ってこないシ、寿命が１０年は伸びるゾ──

「１０年……短かい……」

──このままだと、ほっときゃ一週間程度だろうヨ。医者に聞いてみナ──

「…………俺、死ぬのか」

──人間は死ヌ。あたりまえだロ。早いか遅いかってだけダ。何を今更。感じただろ、ばかーがーショップが炎に包まれる中で。死は平等だ。老いも若いもなイ──

　確かに、あそこでは逃げ遅れた者は皆死んだ。
　年齢に関係なく、死を迎えた。

──お前は生贄に選ばれタ。既に死んでるも同然なんだヨ──

「くそっ……」

──もう一つ提供できル。これからオマエは悪魔に襲われル。お前は最高の食材だからナ。誰も放っておかないサ。匂いで分かル。そいつらを撃退しロ。撃退したら俺がそいつらの命と力を食らってやル──

「何も良いことはなさそうだが？」

──食らった分だけオマエに力を分けてやル。俺の権能は略奪。殺して奪う。まぁ行動不能にした相手からも奪えるガ、ともかくこの力を使ウ──

「相手の、力を奪う……」

──この状態で俺が存在し続けるには定期的な力の補充が必要ダ。オマエがそれをするんダ。そうすりゃ余った力でオマエに悪魔の力を使いやすくしてくれてやル──

「……具体的に言え」

──パイロキネシス、サイコキネシス、プレコグニクション、クレヤボヤンス、アポート……まぁ色々だ。食らった悪魔の能力を劣化コピーしてくれてやるってとこダ。必要だロ？　そういうノ。日本じゃ銃器も聖水も手に入りにくいからナ──

「この悪魔妙に世情に詳しいんですけど……」

──悪魔は知識を与えるって知らねぇのカ？──

「西洋主流の悪魔なんて詳しいわけないだろ」

──俺は中東の出身だゼ──

「日本じゃない時点で一緒だから」

──こっちにキリスト教が広まったくらいの時期にナ、いつか呼ばれるかもって、知り合いに頼んで勉強したんだワ。言語に詳しい悪魔とかいるからサ。ほら、召喚されて言葉通じないとか酷いだロ？──

「……悪魔が努力家、だと？」

──正義にゃ努力がつきもんなんだヨ。まぁそんな話はいいサ。久々の現界ダ、このまま人の営みを見て遊ぶのもいいと思ってんダ。協力してやるから契約しろヨ──

「都合のいい話だけしやがって。デメリットの説明が無いんだが」

──当たり前だろ、悪魔だからナ？　ハハッ、だがまぁ良く聞いたナ。デメリットっていえば、お前のプライベートが無くなるこト、あとは正義執行してもらうくらいカ？　まぁ断ればオマエは死ニ、契約してない俺はオマエの身体を乗っ取ったとしてモ、直ぐに消えてなくなル。それだけダ──

「……正義執行ってなんだよ」

──悪いやつら見つけたら退治してもらウ──

「おまっ……悪魔だろ？」

──正義の悪魔ナ──

「うぅ、訳がわかんねぇ……」

──あんまり考える時間は残ってないゼ──

「そんなこと言っても……悪魔の言葉なんて……」

──悪魔はな、嘘は言わなイ。言葉巧みに相手を陥れるだけダ。だから俺が言った言葉は全部真実ダ。正義と略奪に誓っテ、嘘は言わなイ。不安なら質問しロ。真摯に答えてやル──

「……契約によって俺の肉体や精神に変化はあるのか？」

──無イ。マァ、俺の意思が残るからナ、そういう意味での影響は受けるだろうサ。勝手に人間捨てるような姿には変貌したりはしなイ。そもそも俺に他者を変身させる力は無イ。どっちかっていうとお前に寄生してる虫の方が影響あるだろウ。俺はそれを抑える特効薬ダ──

「……契約することで俺の知り合いや家族が不幸になったりはしないのか？」

──俺はお前にしか影響を与えなイ。与えられないと言うべきカ。周りの心配はせんでもいいサ。俺の現界との接触なんざ、能力を奪う時くらいだろうサ──

「契約した場合、悪魔を提供しろと言ったな。提供できる悪魔が襲ってこない場合、どれくらいの頻度で悪魔を狩ればいい？」

──さて、いい質問ダ。……同時に難しい質問でもあル。悪魔好みの虫を飼ってるからナ、向かってくる相手はわんさか居るだろウ。恐らく餌には困らないとは思ウ。だが、そうだナ、格の低い悪魔なら週一で取り込む必要があるだろうナ。この国で言う妖怪や怪異で構わんヨ。これ、契約だからナ。ちゃんと守れヨ──

「守らない場合は？」

──俺が自分を維持できなくなル。恐らく俺が居なくなって３日程度でオマエは激痛に苦しみながら虫に殺されル──

「……答え決まってないか、それ」

──言っただロ、言葉巧みに誘導するっテ。嘘は一切言ってないゾ。分かるだロ？　俺にはオマエの心の動きや感情ガ、オマエには俺の感情や心の動きが分かル。俺たちは今そういう状態なんだヨ。毎回こうだと契約しやすくて便利なんだがナ──

　困ったことに、悪魔の言っていることは正しかった。
　自分が思っていることを自分は否定できない。
　そういう原理だ。否応なく相手の心が分かってしまう。
　この悪魔は、俺なのだ。

「ふぅ……」

　大きく息を吐く。次の言葉を口にするには、勇気が要った。
　意を決して、ゆっくりと口を開く。

「契約の方法を、教えろ」

──いい返事ダ……ならば、俺の真名と共に宣誓シロ、いいか俺の名ハ……──








　その日俺は悪魔と契約した。
　己の命を長らえる為、正義執行をすることを条件に。

ItemNo.6 ミントグリーンティー を食べました！
　体調が 1 回復！（20⇒21）
　今回の全戦闘において 治癒10 充填10 増幅10 が発揮されます。
　今回の結果でのスキル熟練度が伸びやすくなった！

遊具の暴走を止め周囲を見渡すと、

怯えて縮こまる少女を見つける。

　



ロストの少女、ロジエッタのようだ。

恐る恐る振り向き、遊具の様子を確認する。




人形を抱きしめ、周りを警戒する。

　

危険がないと判断したのか、安堵の息をつく。

こちらを見て、わざとらしく咳払い。




若干のしかめっ面で斜め下を向く。

　

　

　





人形を頷かせる。

　

ベンチに座り、そして疲れ果てたのか横たわり眠ってしまった･･･

あかり(869) から 毒牙 を受け取りました。

幻術LV を 5 DOWN。（LV5⇒0、+5CP、-5FP）

魔術LV を 10 UP！（LV15⇒25、-10CP）
合成LV を 5 UP！（LV5⇒10、-5CP）

チヨミ(1238) により ItemNo.3 不思議な装飾 に ItemNo.11 花びら を合成してもらい、駄物 に変化させました！
　⇒ 駄物／素材：強さ10／［武器］攻撃10(LV50)［防具］活力10(LV50)［装飾］体力10(LV50)／特殊アイテム

ミーシャ(1059) により ItemNo.17 何かの骨 から防具『鋼鉄の義足：電磁装甲』を作製してもらいました！
　⇒ 鋼鉄の義足：電磁装甲／防具：強さ140／［効果1］活力15 ［効果2］－ ［効果3］－

ItemNo.14 鋼鉄の義手：大型鉄針装備 に ItemNo.15 翌檜 を付加しました！
　⇒ 鋼鉄の義手：大型鉄針装備／武器：強さ195／［効果1］攻撃20 ［効果2］器用25 ［効果3］－【射程1】

サクモ(1057) の持つ ItemNo.20 アベ一休のTシャツ に ItemNo.19 駄石 を付加しました！
ミーシャ(1059) の持つ ItemNo.12 Bランス に ItemNo.19 翌檜 を付加しました！

乃愛(345) とカードを交換しました！

ラッシュ （ラッシュ）


オイルファイア を研究しました！（深度1⇒2）
ファイアグレネード を研究しました！（深度0⇒1）
ファイアグレネード を研究しました！（深度1⇒2）

グリモワール を習得！

◇通常獲得：各CP･FPが5増加した！

ユウ(1049) は ポプラ を入手！
サクモ(1057) は ポプラ を入手！
ミーシャ(1059) は 翌檜 を入手！
チヨミ(1238) は ポプラ を入手！
サクモ(1057) は 鉄くず を入手！
ユウ(1049) は 剛毛 を入手！
サクモ(1057) は 剛毛 を入手！
ユウ(1049) は 皮 を入手！
ユウ(1049) は タイヤ片 を入手！
ミーシャ(1059) は 鉄くず を入手！
サクモ(1057) は ネジ を入手！

カミセイ区 P-7（道路）に移動！（体調21⇒20）
カミセイ区 Q-7（沼地）に移動！（体調20⇒19）
カミセイ区 R-7（沼地）に移動！（体調19⇒18）
カミセイ区 S-7（森林）に移動！（体調18⇒17）
カミセイ区 T-7（森林）に移動！（体調17⇒16）

採集はできませんでした。
　　 - ユウ(1049) の選択は カミセイ区 H-4：チェックポイント《森の学舎》（ベースキャンプ外のため無効）

MISSION - 未発生：
　　 - ユウ(1049) の選択は カミセイ区 N-6：カミセイ大公園（ベースキャンプ外のため無効）

［816 / 1000］ ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
［370 / 1000］ ―― 《廃ビル》研がれる牙
［367 / 500］ ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
［104 / 500］ ―― 《白い岬》より精確な戦型
［147 / 500］ ―― 《大通り》より堅固な戦型



―― Cross+Roseに映し出される。

　

　

　

　

　





　




チャット画面にふたりの姿が映る。

　





　





　








ドライバーさんから伝えられた内容に動揺している様子のふたり。

　





　

　

　

ザザッ――

　

チャットに雑音が混じる･･･

　

　

　




　

ザザッ――

　




　

ザザッ――

　




　




　

　

　

ザザッ――

　

　

　





　

　

　





　

　

　

チャットが閉じられる――