
インテグラセンターでの仕事はそれなりに忙しいものの、ジェイド王国にいた頃の鬼のようなタスクに比べたらまだまだ余裕。
ユカラやアズちゃん、そしてマグノリアちゃんに大使館の仕事を手伝ってくれるお陰で大使館の仕事は暇を持て余すぐらいに楽になった。
前の大使館は今より人数が居たのに忙しかった事実は、前の職員さんの仕事効率を比べるのがかわいそうなので私の心の中に仕舞っておく事にする。
まぁ、そんな訳でアズちゃんやユカラはまだ学生のお年頃だし、高校に通って青春を謳歌したらどうかという話になった。
イバラシティの高校の制服はどこもデザインが凝っていて、大人の私でも着てみたくなるような素敵なものが多かった。
流石にこの年で制服は見た目が怪しくなるので着ないけど。
アズちゃんの方も学校選びには乗り気で、各学校の資料を眺めながらユカラと色々相談して楽しんでいる様だった。
ユカラも学校に行くことはやぶさかでは無いのか、それなりに資料を眺めて希望の学校を考えている様だった。
マグノリアちゃんもユカラと年は変わらないのだから、一緒に高校通っても良い気がするのだけど、今回は大使館のお手伝いで来たからって遠慮しそう。
でもマグノリアちゃんの学生服姿を個人的にはすごく見たいぞ。
これは事ある度に学校の話題を出して「学校はいいぞ」ってマグノリアちゃんに囁く計画を立てるべきか真剣に考え始めた。
とはいえ、イバラシティの学校事情はそんなに知らないので、アズちゃんの持ってきた資料を休憩の時間を活用して見せてもらう事にした。
各学校の敷地や校風などが載っているページは『異能』の取扱についても書かれていて、校舎内では力の一部を制限する様な所や、完全に自由という高校もあり学校に個性が出るなあと感心して眺める。
制服を眺めながら、これなんかマグノリアちゃんが着たら天使とか、ユカラが着たらカッコイイかもとか、アズちゃんなら着こなせそうなどと妄想が捗ってついつい頬が緩んだ。
そういえば意識して無かったけど、イバラシティに住む人は何故か『異能』に目覚めるんだっけ。
私は元から悪魔と契約して魔法が使えるようになった者だから、『異能』に目覚めたというよりもこの土地で魔法を使う事に支障が無い程度の認識しかない。
寧ろジェイド王国とマナの質が違うので、あちらでは自由に使えた魔法も制約を受けてしまう位。
一般の人が『異能』に目覚めて強くなるとすれば、私は寧ろ弱くなった方に分類されちゃうだろう。
アズちゃんって確か、普通の人の目には見えない精霊と心を通わす能力を元々持っていたから、彼女の『異能』はきっと精霊への干渉とか顕現とかなのだろう。
マグノリアちゃんは大きなうさぎさんになれる能力があったので『異能』もやはり変わらず愛らしい姿に変化してくれるに違いない。
ユカラは……ん、ユカラって身体能力は高いけど『異能』は何だっけ?
錬金術は私も教えたことはあるけど、それってジェイド王国での話だから、私が制約受けるレベルなのにユカラが錬金術に目覚めるなんて事はあんまり考えられない。
異能なくても十分一人で生きていけるサバイバル能力はあるのは知ってるけど、異能に目覚めてないなんて事は無いよなあ。
イバラシティに来てユカラが何かに目覚めた兆候なんかあったのだろうかと、色々思い返して見る事にする。
私への当たりが強くなったぐらいで、特に何にも変わってねぇな。
いや待てよ、成長して更に可愛くなったアズちゃんと再会しても、あんまり反応が無かったな。
いつものユカラの事だと思ってスルーしてたけど、思春期の高校生の年頃の男の子がその反応は明らかにおかしい。
もしかしてユカラの目覚めた『異能』とは、ハーレム漫画の主人公みたいな現象になりやすい力なのでは無いだろうか。
それならなんかこう、自分のポジションも納得できる。
この前何かしらんけど私のベッドに潜り込んでたのも『異能』力に違いない。
……って、そんなん納得できるか!
誰も居ない所でセルフツッコミをしてしまった。
まぁ、今度ユカラに直接聞いたほうが早いな。
なんかこう、少年漫画の主人公みたいなチート能力に目覚めてたりすると、色々頼もしくていいと思う。
そんでもって『異能』に目覚めた生徒達や先生とのバトルがあって、ヒロインのアズちゃんが狙われたりちょっとエッチな目に遭ったりするんだろう。
良いところでユカラがそれを助けるんだな、いいな羨ましいぞ。
羨ましいぞちくせう。
あー、私も高校生活やり直せないかなー!
錬金アカデミーでは同級生のサクラと楽しく過ごした思い出はあれど、恋沙汰からはまったく無縁の地味根暗眼鏡女子生徒だったからね。
これから華やかな学校生活が待っている二人を羨ましがらずにはいられなかった。