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サアヤ 「あ、あんじにてぃ? え? ええ? あの、あのアンジ……? まっさか~。いやいや~……」 |
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サアヤ 「……ええええ!?」 |
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ミハル 「サアヤ~。ちゃんと一から説明してあげるから、とりあえず落ち着こうねえ。 はーい、深呼吸~。吸ってー、吸ってー、吸ってー。吸って~」 |
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サアヤ 「スウウウウウウウウウ~~~~~~……。(間) オエッッ!!」 |
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転生者 「……」 |
こ
あの娘が嫌いだ。
≪sice 7:00≫

転生した私は、何度も、何度も死を迎えた。
理不尽に、自分勝手に、私は殺され続けた。

それでも死ぬことができなかった。それでも終わることはなかった。
何度も、何度も。
何度も何度も何度も何度も何度でも、私は同じ刻を繰り返すのだ。
──イヤだった。
だから私は転生を拒絶した。拒絶しようとした。
ヒロインなんて止めたかった。
そんなときだ。
私が使い物にならないとでも思ったのか、はたまた偶然か──新たな『転生者』が召喚された。
私と彼女は"ヒロイン"を共有した。
眠りにつく限られた時間だけ、私たちはお互いの存在を思い出し、認識した。
本当は、そんな必要なかったのかもしれない。
本当は、自由に共有できたのかもしれない。
けれど私は拒絶して、ずっと彼女ばかりに"ヒロイン"を委ねた。
いつしか私は、彼女の奥底でずっと、ずっと──
いつまでも眠る日々を過ごすようになっていた。
──彼女は私と違っていつもヘラヘラ、ニコニコしていた。
それにひどく能天気で、単細胞で、前向きで、ポジティブで、──みんなから愛された。
私とは違った。
人々は優しく、あたたかく、彼女を受け入れ愛した。
彼女の光は対人だけに留まらず、同じ存在を共有する私にさえも分け隔てなく向けられた。
きっと他意なんてなくて、きっと同情でもなくて、きっと憐れみでもなかったのだろう。
……非常に残念なことに、これが彼女の人柄なのだ。
春陽のようにあたたかくて、そこにいるだけで世界に彩りを与える娘なのだ。
(それじゃあ私、あなたのこと──)
……聞くと、私よりもお姉さんだという彼女は、交通事故で死んだらしい。
車に同乗していた父親と母親の安否を心配していて、
また、一緒にいなかった兄がどうしているか気にしていた。
"──兄弟がいるの?"
何気ない言葉に、彼女は嬉しそうに破顔して──
いや、彼女はいつだって嬉しそうで幸せそうだったけれど──家族のことを私に話した。

「ぼくの兄貴はね~。小柄で童顔で、髪の毛がふわふわってしててね~。
まつげも長いし、目も大きいしですっごく可愛くてさ~」
「……お人形さんみたいなのね」
「そう~! でもぼくと違ってすっごくしっかりしてるし、努力家なんだよ~!
頼りになるんだ~! 突然家出しちゃったときは驚いたけど……」
彼女はとても楽しそうに話す。
もう二度と会えない人たちのことを、幸せそうに話す。
既に彼女の性質は知っていたから、私は疑うことなく「彼女は本当に家族が好きなんだ」と思った。
(……私の家族は、どんなひとだっけ)

「元気にしてるといいな~……」
目を細めて、懐かしそうに、愛しそうに呟く。
その横顔は今まで見た誰に対する表情よりも、柔らかいものだった。
──きっと、彼女こそ"ヒロイン"なのだろう。
大人が、男性が、──人間が怖くて、嫌いで、
何もかもを拒絶して逃げている私とは違う。
「ねえ、ねえ。今度は、あなたのことも教えて?」
……嫌いだった。
「ぼく、あなたともお友だちになれたら嬉しいな~!」
大嫌いだった。
「だからね、────」
イバラシティの生活は、
あなたが私に語ったあなたの生活そのもののようで
──私はあなたのことが羨ましかったかのようで。
誰にでも愛されるあなたのことが、私は。
私にまで、優しくしてくれるあなたのことが。
どんなに虐げられても、戒められても、明るさを失わなかったあなたのことが。
そんなあなたを拒絶してしまえば、自分の愚かさを認めてしまいそうで
嫌うに嫌えなかったあなたのことが。
私にはないものを、いっぱい持っていたあなたのことが。
今でも私、大嫌い。
── 甘いなあ。
そうして男は、愉快そうに目を細める。
そんなに嫌いならば、いっそ殺してしまえばいいのにと。
何故ならば、ここではそれが許されている。
何故ならば、そのために彼女を呼んだから。
(……でも)
血生臭い光景よりも
殺して"おしまい"の惨劇よりも
殺すこともできず、
嫉妬と劣等感と、羨望と憧憬が入り混じった表情で
睨むことしかできないその様が
たの
──なによりも、愛しいのだ。
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サアヤ 「ところで兄貴~。なんで姫ちゃんのこと、"姫さま"って呼んでるの? ぼくには中々お名前教えてくれないんだけど……」 |
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ミハル 「え、だってなんか態度でかいから」 |
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転生者 「喧嘩売ってる?」 |
……こんな奴、彼女の語った兄とは似ても似つかない。
それは私にとって、少しだけ、 ほんの、ほんの少しだけ
── 救いだったの。

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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エディアン 「・・・おや。チェックポイントによる新たな影響があるようですねぇ。」 |
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エディアン 「今度のは・・・・・割と分かりやすい?そういうことよね、多分。」 |
映し出される言葉を見て、腕を組む。
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
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カオリ 「ちぃーっす!!」 |
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カグハ 「ちぃーっす。」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
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エディアン 「あら!梅楽園の、カオリちゃんとカグハちゃん?いらっしゃい!」 |
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カグハ 「おじゃまさまー。」 |
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カオリ 「へぇー、アンジニティの案内人さんやっぱり美人さん!」 |
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エディアン 「あ、ありがとー。褒めても何も出ませんよー?」 |
少し照れ臭そうにするエディアン。
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エディアン 「間接的だけど、お団子見ましたよ。美味しそうねぇあれ!」 |
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カオリ 「あー、チャットじゃなくて持ってくれば良かったー!」 |
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カグハ 「でも、危ないから・・・」 |
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エディアン 「えぇ、危ないからいいですよ。私が今度お邪魔しますから!」 |
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エディアン 「お団子、どうやって作ってるんです?」 |
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カオリ 「異能だよー!!私があれをこうすると具を作れてー。」 |
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カグハ 「お団子は私。」 |
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カオリ 「サイキョーコンビなのですっ!!」 |
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カグハ 「なのです。」 |
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エディアン 「すごーい・・・・・料理系の異能って便利そうねぇ。」 |
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カオリ 「お姉さんはどんな能力なの?」 |
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エディアン 「私は・・・アンジニティにいるだけあって、結構危ない能力・・・・・かなー。」 |
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カグハ 「危ない・・・・・」 |
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カオリ 「そっか、お姉さんアンジニティだもんね。なんか、そんな感じしないけど。」 |
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エディアン 「こう見えて凶悪なんですよぉー??ゲヘヘヘヘ・・・」 |
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カオリ 「それじゃ!梅楽園で待ってるねー!!」 |
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カグハ 「お姉さん用のスペシャルお団子、用意しとく。」 |
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エディアン 「わぁうれしい!!絶対行きますねーっ!!!!」 |
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エディアン 「ここじゃ甘いものなんて滅多に食べれなさそうだものねっ」 |
チャットが閉じられる――