
目の前で大きなせみがお腹を見せてひっくり返って。
力が抜けてへたり込んでしまったわたしに、
「おやまあ」
と、声の重さに見合わぬ不思議な調子の声。
振り返れば、当然のように、彼。
いつから見ていたかは分からないけれど。
彼は座り込んでいる私の隣まで来て、通り過ぎて、倒れているせみまで行くと、そのせみを蹴り飛ばしてしまった。
そのせみは大きいけど、軽い。ころころと虚しく転がっていく。
「まあ、これが特別に弱い、というのもあるだろうが」
転がるせみを眺めてから、彼はわたしを振り返る。
「勝ち星だ」
かちぼし。
意味が分からずに目を瞬いたわたしに、肩を竦めてみせる。
「勝手に破裂するようにできているあの成れ果てとは違う。お前は初めて勝ったわけだ」
「……勝ったって、言っても」
彼の言う通り。
勝手に破裂してしまった成れ果てを見届けたのと、正直体感としては、全く差がない。
「わたし、なにもしてない……」
「まあそうだな。お前の身体能力が強化されている、というのも、お前自身の努力の結果ではない」
身体能力が強化されている。覚えのない話に目を瞬く。
語る彼は、あまり面白くはなさそうな顔をしていた。
「そういう風に底上げされるのだそうだ。この戦いへの参加者が、みな。……つまらないことをする」
「…………」
わたしは、戦いに、参加している。
そういうものと、未だみなされているらしい。
釈然としない気持ちに陥る。
今だって勝ったとも思えない。今までも一度も、何も、倒したりしていない。
ほんとうの意味で、わたしが誰かと戦ったことなんて、一度もありはしない。
わたしがどうしてここにいるのか。
何もかもがわからない。
何もかもがわからないのに、この世界は、わたしを戦うものとみなしている。
わたしは何と戦っている?
それだっていつまでも、わかるとは思えないのに。
わたしはどうして生きている?
それだってわからないまま、死だけを拒んで、ここにいる。

[770 / 1000] ―― 《瓦礫の山》溢れる生命
[336 / 1000] ―― 《廃ビル》研がれる牙
[145 / 500] ―― 《森の学舎》より獰猛な戦型
[31 / 500] ―― 《白い岬》より精確な戦型
―― Cross+Roseに映し出される。
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エディアン 「・・・おや。チェックポイントによる新たな影響があるようですねぇ。」 |
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エディアン 「今度のは・・・・・割と分かりやすい?そういうことよね、多分。」 |
映し出される言葉を見て、腕を組む。
カオリ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、橙色の着物の少女。
カグハと瓜二つの顔をしている。
カグハ
黒髪のサイドテールに赤い瞳、桃色の着物の少女。
カオリと瓜二つの顔をしている。
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カオリ 「ちぃーっす!!」 |
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カグハ 「ちぃーっす。」 |
チャット画面に映し出されるふたり。
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エディアン 「あら!梅楽園の、カオリちゃんとカグハちゃん?いらっしゃい!」 |
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カグハ 「おじゃまさまー。」 |
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カオリ 「へぇー、アンジニティの案内人さんやっぱり美人さん!」 |
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エディアン 「あ、ありがとー。褒めても何も出ませんよー?」 |
少し照れ臭そうにするエディアン。
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エディアン 「間接的だけど、お団子見ましたよ。美味しそうねぇあれ!」 |
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カオリ 「あー、チャットじゃなくて持ってくれば良かったー!」 |
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カグハ 「でも、危ないから・・・」 |
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エディアン 「えぇ、危ないからいいですよ。私が今度お邪魔しますから!」 |
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エディアン 「お団子、どうやって作ってるんです?」 |
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カオリ 「異能だよー!!私があれをこうすると具を作れてー。」 |
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カグハ 「お団子は私。」 |
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カオリ 「サイキョーコンビなのですっ!!」 |
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カグハ 「なのです。」 |
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エディアン 「すごーい・・・・・料理系の異能って便利そうねぇ。」 |
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カオリ 「お姉さんはどんな能力なの?」 |
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エディアン 「私は・・・アンジニティにいるだけあって、結構危ない能力・・・・・かなー。」 |
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カグハ 「危ない・・・・・」 |
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カオリ 「そっか、お姉さんアンジニティだもんね。なんか、そんな感じしないけど。」 |
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エディアン 「こう見えて凶悪なんですよぉー??ゲヘヘヘヘ・・・」 |
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カオリ 「それじゃ!梅楽園で待ってるねー!!」 |
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カグハ 「お姉さん用のスペシャルお団子、用意しとく。」 |
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エディアン 「わぁうれしい!!絶対行きますねーっ!!!!」 |
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エディアン 「ここじゃ甘いものなんて滅多に食べれなさそうだものねっ」 |
チャットが閉じられる――