
いつも通りの日常を過ごし、平穏に年越しを行い、平和に初詣を済ませる。
夢のように体感をする。
どうせならこちらが夢であればいいのにと思う。
だけど、現実はどちらも現実だ。
おかしな表現になってしまった。でも、それが現在の状況なのだろう。
さて、一気に体感する記憶の波に軽い頭痛を感じるが、それもそのうち慣れるだろう。
状況確認を優先しましょう。
この場で単独での行動は危険。
防衛側のみが集められたというこの場所で、共に行動してくれる人を探した。
初対面の相手といきなり行動を共にするなんて正直苦手だけれど、なんとか人は集まった。
同じように、共に行動する相手を探していた人は多くいたから。
これから行動を共にしていく仲間、そのメンバーは全員私より年若い女の子になる。
一番幼いれーこちゃんは8歳、保護したとも言える。
ただそれでも、安全を約束できないこの場所ではれーこちゃんにも支えて貰わなければならない。
改めて憤りを覚える。
メンバーに男性はおろか、私より年長者がいなかったことは心細くはある。
こんな場所でうかつに信頼の無い男性と共に行動ことは危険だと判断したのも一因ではある。
それでもやはり、心細いと感じてしまうのは仕方ないのだろうか。
わがままだ。
また、創藍校のコミュニティがあったので参加してみた。
そこでも、頼るべき大人はいなかった。
コミュニティに参加して、発言をしてくれた教師。
メーテリンデ先生は混乱する状況下で行うにはあやしいと思うほどの演説。
言葉のみを聞けば侵略者側から防衛側に参加してくれたらしい。
学校で見かけた容姿よりも幼く見えたため、偽りの隣人であったことは本当かもしれない。
そうであればありがたい存在ではあるのだが、今の状況下で素直に信じて受け入れることは怖い。
弱った心は大きな声に流されやすい。
それを意図した扇動者である可能性は拭いきれない。
そう気づき、思ってしまったら、どうしたって疑ってしまう。
頼っていいのか、迷ってしまう。
行動で確認していくしかない。
それに、今の容姿が本物なら年下の可能性だってあるのよね。
教師をしていたのは背伸びの行動であったなら、
あの言動が彼女の持つ危うさからのものであるなら、
むしろ助けてあげなければいけない存在なのかもしれない。
それからもう一人発言をしてくれたのがひまわり先生。
呼びかけの声はみんなを心配するいつもと変わらぬものだった。
だけど、声のみで姿が見えなかった。
姿を隠すということは、容姿を隠したいということ。
容姿を隠すということは、きっと侵略者側よね。
メーテリンデ先生の発言内容のように防衛側に参加してくれる人もいるかもしれない。
それでも、そうでは無い可能性の方が高いだろうと思う。
ひまわり先生も敵なのだろうか、あんなに可愛い先生だったのに。
教師に頼ることができない状況なのは心細い。
参加しつつ寝息を立てている子がいたりしたけど、その図太さが羨ましい。
生徒会の子はしっかりしていて頼りになりそうだけど、私が頼るわけにはいかない。
ここは安らぎの場ではあるけど、私が頼る場ではなかった。
行動パーティでも、コミュニティでも、私がしっかりしないといけない。
人付き合いは嫌いでは無いけれど、苦手ではある。
そしてそれで良いとも思っている。
私の異能は相手を傷つけるだけのものだから。
どうしたって、その本質は変わらない。
そんな力でも、今はその力に頼ってやっていくしかない。
弱音は吐けない。
私が感じている心細さは、私だけのものじゃない。
私が強くなって、周りの子を支えてあげるべきだと思った。
普段からそんな振る舞いはしていた。
だから、これはその延長だろう。
心細さが消えたわけじゃない。でも、それを隠して役割を演じきってみせる。
不安は見せない。
そう、決めた。
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ソラ 「しっかりしないとね。きっと、大丈夫。」 |