この街は侵略されているらしい。
現実感のない話だ。今このときもそうなのだとしても、日常に変化は生じていない。
学校へ行き、バイトへ行く。
小説を買ったり、たまに書いたり、外へ出かけてみたり。
何も変わらない。ただ気づいていないだけかもしれないけれど。
定期テストの結果は悪くなかったと思う。
前もって対策を取っていればもっと良くなったかもしれないけれど、今更嘆いても仕方がないことだろう。
次回は日付を忘れないようにしないと。
うちのクラスが騒がしいのはいつものことだ。
私もとっくに慣れてしまった。この中でも集中を乱されずに、予習だったり、読書だったりできてしまう。例え騒音でも、慣れてしまえば気にならなくなるのだから、適応能力とはすごいものだ。
百物語さん。
あれは不思議な異能だったのかもしれない。
巻き込まれるのは想定していなかったけれど、断れる雰囲気でもなかったから。
でもクラスで急に即興劇をするだなんて。それも白雪姫、主役中の主役。
今思ってもすごく恥ずかしい。全員忘れていることを願う。
近場のカフェへたまに向かうようになった。
初めて訪れたところではあるが、暖かい紅茶の香りがとても良くて印象に残っている。
季節の果物のタルトもとても良かった。バイトでも参考にできるかもしれない。
雰囲気も良くて読書に集中できた。また来ることにしよう。
少し足を伸ばしてマシカ区まで行くことにした。
適当にうろうろしているだけでも、目新しい景色があって楽しいものだが。
少し奇妙な教会を見つけた。
なぜだか、教会というのは落ち着く場所だ。
宗教を持つわけでもない。神様は居るかも知れないけれど、縁はない。
そんな私でも、なぜだか心が安らぐ気がしてくるのだ。
奇妙、と記したのはその教会には宗教の気配がなかったことだ。
神の像もなければ、おそらく聖書もなさそうで。
居たのは私とそう年の変わらない男の子の神父様だけ。
きっと受験も間近な中学生くらいの。
そう、あのときは気づかなかったけれど、あまりにも例外中の例外。彼自身が。
お菓子が好きだったみたいだから、今度また持っていってあげよう。
高坂さん。
多分軽く目についただけだろう。私の容姿は良くも悪くも目立つらしいから。
会話をすればするほど、昔叔父さんが買ってたコーギーを思い出す雰囲気。
勉強を一緒にする約束は少しまずかったかもしれないけれど。
私自身の容姿は、それなりに整っているのかもしれない。
制服以外の私服やパジャマだって、特別な感じはしないと思うのだけど。
ああ、そうだ。カフェの制服撮っとかないと行けない。