
イバラシティ!
日常ってのを表すのにふさわしい言葉だよな~
クラスメイトと話して。
部活で新入部員に説明して。
七不思議求めて区をまたいで駆けまわって。
女子校に潜入までしてしまった……。
すっげぇ辛いチゲ鍋も食べたし、クリスマスパーティーもやったな!
こんな風に毎日が過ぎてってさ。
高校も卒業して。
いつか仕事もして。
結婚したり……はわかんねーけど!
なんだかんだ生きてくんだと思ってた。
―――このハザマ<<にせもの>>の光景を見るまでは。
* * *
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透司 「何なんだよここ……イバラシティ、に似てるけど全然違う」 |
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透司 「山、森、沼…?意味わかんねー」 |
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透司 「一体どうなって、ッ!」 |
突然、脳内に電気が走ったような感覚がした。
蘇る記憶。ワールドスワップ、アンジニティ、ハザマ。
戦争。そうだ。これは侵略戦争だった。
日常は、何もしなくても手に入るものじゃない。
紡ぐんだ、自らの手で。
ひとつ、新たな決意を固めて拳をぎゅっと握りしめる。
気が付けば周囲にもちらほらと気配が増え始めたようだ。仲間も居る。この戦いは一人では無い。
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透司 「アンジニティだか何だか知らないが、そう簡単に俺たちのイバラシティは渡さないからな!」 |
まだ彼は何も知らない。
* * *
――みーつけた。
きらきら。
どろどろ。
記憶の欠片。
覗き込んでみると、あぁやっぱり。この色、この匂い。あの子だ。
割れ物を扱うように大事に触れる。
表面を撫でると、き、ぎ、と金属をこすり合わせたような不快な音を奏でる。
ソレをまるで万華鏡のように、目に近づけて覗き込んだ。
*『ひとつめ』*
じー! どん じじ どく じー! どくん じーー! どっ
煩い。
鼓膜をばかみたいに叩く空気。
それに対抗するかのように内側から沸いてくる鼓動。
破裂しそうな耳を、頭を押さえるしかない。
眩しい。
まぶたを閉じずにはいられないほどの夕陽。
焼ききれそうな目を瞑るしかない。
生暖かい。
肌をじっとりとした空気が這いずりまわる。
身体のところどころには、もう熱を失ったはずの液体……だったもの。
熱のこびりついた手を、夏の抜けない地面に擦るしかない。
その行為に何の意味があるのか。
意味が必要なのか。
わからない。
もういい。
立ち上がる。
目の前の動かないヒトガタを抱いて、理解したのは己の役割だけだ。
「このために俺の力は***************************
――ノイズで遮られた。