ハザマの刻。 ベースキャンプを出て数時間。 ひっきりなしに戦いが始まり、心身を休めていない。体力は目に見えて減っていく。 1人に対し3体の敵。気の遠くなるような一瞬、幻覚を見る。疲弊が夢を見せる。 |
なにもかも、面倒だ。頭がおかしくなりそうだ。 中身ごと、湯呑茶碗を地に叩きつけて踏みにじる。 切り離すべき記憶が、一時間ごとに描き足される。上塗りを繰り返す。 まぼろしを見るたび、アガタを思い出すたび、『ハヤミ』で居続けることを強いられる。 「ハザマでも助けに来てくれ」と、イバラシティで共に過ごした友が言う。 「お前は変わってしまった」と、アンジニティで共に過ごした友が言う。 どちらでもない。どちらでもいられない。ここには、何も残らない。 |
唸り声。 |
マイケル 「私の魔法は痛いですよ?」 |
マイケル弐式 「私は二の腕が強いマイケルです。」 |
マイケル参式 「私は算数が得意なマイケルです。」 |
《攻撃》――色褪せた現実と紙上の暴力 |
《器用》――妄想を継ぎ接ぎ、ありもしないものをかたちどった |
《活力》――美は再び 立ち上がるちからを齎す |
《幸運》――知らしめよう 描き出せ 己は まだ |
まだ ここにいる |
《幸運》――色彩との出会いという至上の幸運 |
《体力》――生命の息継ぎ、肉体に残された力を見付け出した |
《活力》――美は再び 立ち上がるちからを齎す |
《回復》――知らしめよう 描き出せ 己はまだ生きている |
マイケル参式 「1回のパンチを2回行なうと、2回のパンチになります。」 |
マイケル弐式 「お食らいなさい。」 |
どこにもいない。 |
ゆめまぼろし だ。ハヤミには絵を描いて戦う力などない。 |
マイケル 「ビンタします。」 |
ゆめまぼろし だ。アガタには絵を描いて戦う力などない。 |
マイケル参式 「敵の人数を数えることができます。」 |
存在証明。 |
『アガタはな~~~んも怒っとらんよ』 |
マイケル弐式 「それー。」 |
幻だ。ハヤミは闘わない者のために闘うと言っていた。 |
マイケル 「ビンタします。」 |
まぼろしだ。 |
幻だ。アガタは侵略者と闘う意思がないと言っていた。 |
マイケル参式 「1回のパンチを2回行なうと、2回のパンチになります。」 |
『アガタはな~~~んも怒っとらんよ』 |
マイケル弐式 「それー。」 |
『今日は何する~?』 |
幻だ。そもそもハヤミは、 |
イバラシティのハヤミは、このハザマでアガタを助ける気など、かけらもない。 |
予想できたはずだ。 |
どうにもならない。 |
マイケル 「ビンタします。」 |
幻だ。そもそもアガタは自分をアンジニティの侵略者と言っていた。 |
マイケル参式 「1回のパンチを2回行なうと、2回のパンチになります。」 |
マイケル弐式 「それー。」 |
『今日は何する~?』 |
ハヤミの願い事。 『アガタの異能に願いを唱えようとする者すべての死』。 時を過ごせば過ごすほど、本音と建前は乖離していく。 アガタのことは、まったく死んでくれて構わない。そのまま誰の願いも叶えずに死んでくれと思っている。 ハヤミは、ただ、願い事というかたちで世界を書き換えようとする人間が許せないだけだ。 だから、アガタが本当にアンジニティの侵略者であるなら。いずれ、消え去ってしまうというなら。 明かすまでもなく、己の願いは時が勝手に叶えてくれるのだろうと内心ほくそ笑んだ。 |
ハヤミは何も言わない。黙っている。 己の醜い姿を隠したまま、“普通の人”を装い続ける。 |
マイケル 「2回ビンタします。」 |
『アガタはな~~~んも怒っとらんよ』 |
星のきらめき 陽のぬくもり。 花のかおり 実る果実。 やわらかな風 木々のざわめき。 川のせせらぎ めぐみの雨。 芽吹きの大地 すきとおる空。 うたかたの夢。否定の世界に存在しないもの。イバラシティにのみ存在するもの。 |
慈愛の光。 |
マイケル参式 「敵の人数を数えることができます。」 |
『アガタはな~~~んも怒っとらんよ』 |
マイケル弐式 「お食らいなさい。」 |
何も残らない。 |
アガタが望んだようなハヤミは、イバラシティのどこにもいない。 存在するとすれば、今この時、この場所、このハザマだけだ。 |
「――――アガタ。もう赦して。もうやめて。僕は、ハヤミじゃない。」 |
マイケル 「ビンタします。」 |
明滅。 振り返ればすでにまぼろしは消えていた。 |
マイケル参式 「1回のパンチを2回行なうと、2回のパンチになります。」 |
マイケル弐式 「お食らいなさい。」 |
『忘れさせて!』 |
マイケル 「傷は笑って忘れましょう。」 |
――暗闇だ。 はじめからずっと。 |
マイケル参式 「1回のパンチを2回行なうと、2回のパンチになります。」 |
『今日は何する~?』 |
マイケル弐式 「お食らいなさい。」 |
アンジニティへと追放される前の記憶。 彼女はいつも、ノートにシャープペンシルで絵を描いていた。 それは彼女の創作物で、実によくある感じのキャラクターの絵だ。 |
一番最初は、本当にささいなことだった。 『ルナ・ルノ』は、創作者となった一人の少女の妄想から発生した。 その時は確かに必要とされた、彼女にとって初めてのオリジナルキャラクター。 たとえ、それがメアリー・スーと呼ばれるものであろうと、確かに、世界に愛されていた。 |
――――数年後には『黒歴史』のレッテルを貼られ、アンジニティへと追放された。 |
マイケル 「傷は笑って忘れましょう。」 |
《祝福》ハヤミはイバラシティの駅で見た アガタの展覧会の広告を思い出した。 |
思い出したくない。 |
マイケル参式 「敵の人数を数えることができます。」 |
胡蝶の夢。 |
『今日は何する~?』 |
マイケル参式 「敵の人数を数えることができます。」 |
何も残らない。 |
マイケル弐式 「それー。」 |
ハヤミのカード発動! |
大事な思い出が、蝕まれていく。 |
マイケル 「傷は笑って忘れましょう。」 |
『帰れいうたら帰るって』 |
マイケル参式 「1回のパンチを2回行なうと、2回のパンチになります。」 |
『アガタはな~~~んも怒っとらんよ』 |
マイケル弐式 「お食らいなさい。」 |
『アガタはな~~~んも怒っとらんよ』 |
マイケル弐式 「お食らいなさい。」 |
何も残らない。 |
『苦しい』 |
マイケル 「傷は笑って忘れましょう。」 |
《祝福》ハヤミはばらの湯で描かれていた アガタの絵を思い出した。 |
思い出したくない。 |
マイケル参式 「1回のパンチを2回行なうと、2回のパンチになります。」 |
『アガタはな~~~んも怒っとらんよ』 |
マイケル弐式 「お食らいなさい。」 |
カードを見たとき アガタのおでこに反射した光が目に刺さることが頭によぎった。 |
光のおえかきのカード発動! |
何が正しい記憶であったか、思い出せない。 |
唸り声。 |
『 』 |
マイケル 「傷は笑って忘れましょう。」 |
マイケル 「ビンタします。」 |
『昔もよう世話してくれたけえ』 |
マイケル 「ぎゃー。」 |
マイケル参式 「1回のパンチを2回行なうと、2回のパンチになります。」 |
マイケル弐式 「お食らいなさい。」 |
何が正しい記憶であったか、思い出せない。 |
《祝福》ハヤミはイバラシティの駅で見た アガタの展覧会の広告を思い出した。 |
思い出したくない。 |
マイケル参式 「敵の人数を数えることができます。」 |
『アガタはな~~~んも怒っとらんよ』 |
マイケル弐式 「お食らいなさい。」 |
『聞きたくない』 |
《祝福》ハヤミはコヌマキャンプ場での アガタの姿を思い出した。 |
思い出したくない。 |
マイケル参式 「1回のパンチを2回行なうと、2回のパンチになります。」 |
マイケル弐式 「お食らいなさい。」 |
まぼろしは散り散りになって虚空に沈む。 |
何が正しい記憶であったか、思い出せない。 |
『帰れいうたら帰るって』 |
マイケル参式 「1回のパンチを2回行なうと、2回のパンチになります。」 |
『今日は何する~?』 |
マイケル弐式 「それー。」 |
『思い出させないで』 |
以前、アガタが話していた『胡蝶の夢』を思い出した。 |
ハヤミのカード発動! |
――邪気が満ちる。 ――時間が『停滞(と)』まる。 ――――怠惰の悪魔が、目を覚ます。 |
《祝福》ハヤミはアガタの画集を思い出した。 |
『もうわがまま言わんけえ、安心して』 |
《祝福》ハヤミはコヌマキャンプ場での アガタの姿を思い出した。 |
思い出したくない。 |
光のおえかきのカード発動! |
マイケル参式 「敵の人数を数えることができます。」 |
そこにあった仮初めが、はらりと溶けるように消えた。 |
マイケル弐式 「それー。」 |
何が正しい記憶であったか、思い出せない。 |
『ハヤミちゃん、つめたいね』 |
マイケル参式 「敵の人数を数えることができます。」 |
何も残らない。 |
『今日は何する~?』 |
『思い出させないで』 |
唸り声。 |
《祝福》ハヤミはコヌマキャンプ場での アガタの姿を思い出した。 |
『ええご縁あるかもわからんよ~』 |
マイケル弐式 「ぎゃー。」 |
マイケル参式 「敵の人数を数えることができます。」 |
何も残らない。 |
何が正しい記憶であったか、思い出せない。 |
何も残らない。 |
《祝福》ハヤミは中学の美術部で 絵を描いているアガタの姿を思い出した。 |
思い出したくない。 |
マイケル参式 「敵の人数を数えることができます。」 |
『やめて』 |
何が正しい記憶であったか、思い出せない。 |
『昔もよう世話してくれたけえ』 |
マイケル参式 「敵の人数を数えることができます。」 |
『 』 |
《祝福》ハヤミはゲームセンター『〆切』での アガタの姿を思い出した。 |
思い出したくない。 |
何が正しい記憶であったか、思い出せない。 |
学習しない。 |
《祝福》ハヤミはイバラシティの駅で見た アガタの展覧会の広告を思い出した。 |
思い出したくない。 |
『なかったことにしたい』 |
『ハヤミちゃん、つめたいね』 |
何が正しい記憶であったか、思い出せない。 |
《祝福》ハヤミは中学の美術部で 絵を描いているアガタの姿を思い出した。 |
思い出したくない。 |
『助けて』 |
《祝福》ハヤミは中学の美術部で 絵を描いているアガタの姿を思い出した。 |
思い出したくない。 |
何が正しい記憶であったか、思い出せない。 |
『仕事区切りまでできたら、来てね』 |
『助けて』 |
《祝福》ハヤミはコヌマキャンプ場での アガタの姿を思い出した。 |
思い出したくない。 |
何が正しい記憶であったか、思い出せない。 |
唸り声。 |
学習しない。 |
《祝福》ハヤミはイバラシティの駅で見た アガタの展覧会の広告を思い出した。 |
思い出したくない。 |
《祝福》ハヤミは喫茶店・沙羅で描かれていた アガタの絵を思い出した。 |
思い出したくない。 |
マイケル参式 「ぎゃー。」 |
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火 水 風 地 光 闇 |
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足取りが確かなうちに、一度戻って休んだ方が良い。 |
どこにもいない。 アガタを助けてくれるはずのハヤミも、ハヤミを助けてくれるはずのアガタも。 |