「はぁ……一体どんだけタフなんだほんと。」
目の前で消え去った……ナレハテだったか?スライム状の怪物を始末し一息つく。
拳銃の弾丸をこれでもかと撃ちこんだが、想像以上にタフで驚愕した。これでそこら辺にいる雑魚だというのだから恐ろしい。まぁ使った武器が弱かったからこうだっただけなのかもしれないわけで、次はもう少し強力な武器を造ろうと心に誓ったところで周りを見渡す。
「さっきまで見ていた景色とまるで違い過ぎて、ほんと現実感が湧かないな……」
今見える範囲で分かることは、ここに来てからずっと見ていた景色とは程遠いものだ。
アニメなどの創作物にあるような、荒廃した街並み。この光景がさっきまで見ていたイバラシティの変わり果てた光景だと信じることができたのは、自分の知っている場所……荒れ果てた相良伊橋高校を見たからだ。
中に入りだれか探そうと思ったが、先ほど襲ってきたナレハテに対処する内に大分離れてしまったらしい。どうやらツクナミ区から大分離れてしまったようだ。
「さて、ツクナミまで戻らないとな。」
こんな有様だ、さすがに法律も仕事はしないらしい。それはそれで都合がいい、バイクなども造れるとは言え、免許はともかくナンバープレートがない状態じゃ確実に警察のお世話になるに違いない。
使った武器だってそうだ、いくら異能で造ったとはいえ殺傷能力が高いものは造った時点でアウトだ.
しかし今はそうも言ってられない.生き残るために使えるものは何でも使わないといけない。
「あの胡散臭いおっさんどうにも怪しかったが……ほんとのこと言ってたんだな。」
バイクに乗り、ツクナミ区にまで行く最中に改めて思った。
【ハザマ】、この荒れ果てたイバラシティの名前らしい。
あのおっさん……榊と言ったか。榊の話を聞いたがどれもここに住むことが無ければ、ただの頭のおかしい奴のほら話だと思っただろう。
そして、実際に体験すれば悪夢のようだ。訳のわからない怪物たちとやりあうだけならまだマシだ、あいつらに人間のようだ感情も言語も今のところ確認できてないからゴキブリなどの害虫を駆除するのと同じ感覚になれる。
問題はナレハテなどのハザマにいる怪物以外にも、いや、こっちのほうが厄介でより恐ろしく……そして戦い辛いだろう存在、【アンジ二ティ】だ。
「あー……遭遇したくねぇなぁ」
心からそう思う、何せアンジ二ティは自分と同じイバラシティの住民だからだ。
記憶や姿を偽り,そしてハザマの中で真の姿を晒し、襲い掛かってくる。多分中には知り合いもいるのだろう。そう考えると武器を向けるのがどうしようもなく嫌になる。襲われてるのにもかかわらず、だ。
「あーくそっ!ここでなら安心して暮らせるはずだったのに…‥‥っ!」
こんな状況だ、悪態をつきたくなる。
ここでなら、自分の人生を良い方向に変えれると思った。そして実際に、今までと比べると天と地ほどの差がある生活をすることができた。異能という『特別』が、ここでは当たり前なことに、確かに救われたんだ。それなのにこんな事態に巻き込まれるとは……。
「……どっちがマシなんだろうな、前の生活と今の惨状は。」
そんな思いを無意識に呟きながら、バイクを走らせツクナミ区へ向かう。