性別:男
種族:転生人
身長:155㎝
誕生日:1月1日
【Story】
とある世界の茨城県行方市…、そこに生まれた一人の男の子は、生まれてすぐに人気のない場所に捨てられました。
夜遅くの暗い夜道を警官が自転車で通ると、男の子に気づいた警官はすぐさま男の子を保護しました。
母親は誰なのか、彼を捨てて今なにをしているのか、結局母親が見つからないまま、男の子は十年近く施設で過ごしてきました。
男の子には「アオト」という名前が与えられ、それからはその名前で呼ばれるようになり、後に成長した彼もまた自らをそう名乗るようになりました。
長いこと引き取られずに未だ施設で生活をしているアオトは、子供達からすれば子供の輪の中に大人が紛れ込んでいるのと同じでした。
なので、アオトのことは他の子供達からはあまりよく見られていません。
施設側はアオトを引き取ってくれる相手を見つけなければなりませんが、誰一人として現れません。
施設暮らしという理由で、学校生活でもクラスメートからの虐め、教師からの偏見、周りの環境の何もかもがアオトを傷つけていきました。
もう学校へは行きたくない、そんなことを言っていた日もありましたが、ここで彼が不登校になることがあれば施設側としてもよろしくありません。
施設の人間は無理やりにでもアオトを通学させ、さらにはアオトが虐めにあっていた事実も公にならないようにしていました。
下手に知られれば自分達の立場も危うくなるからであり、誰もアオトのことなど想ってもいませんでした。
小学校を卒業し、中学生になるアオトは別の施設へ送られました。
しかしその施設は公に認可された場所ではなく、そこでアオトは毎日のように虐待を受けました。
当然その事実はあらゆる手段によって公にならないようにされ、その事実が漏れることはありません。
脅迫をされ、誰にも助けを求めることの出来ないアオトはついに自殺を試みましたが、施設の人間たちもそれを許しません。
自殺を行おうとしたところを施設の人間が阻止し、後に彼には長期間の薬物投与による処置が施され、感情と痛覚を消されました。
傷つけられても何も感じなくなった彼は自らの手で死ぬことも、精神的なダメージで死ぬことも、そして涙を流すことも、笑うことも、怒ることも出来なくなりました。
中等部卒業後、高等部へ進学したアオトは大人達によって自我さえも消されてしまい、首に取り付けられた専用の首輪から受信した膨大な量の情報を元に、命じられた通りに動く肉人形と化していました。
既に表向きにはその首輪は医療器具であると話を通しており、校内でも首輪を着用し続けられるようにしていました。
命じられるがままに生かされるソレはもう、人と呼べるものではありません。
しかしそれがいつまでも続くことはありません…、膨大な量の情報の送受信はアオトの肉体には多大な負担がかかっていたからです。
そしてアオトが十八歳を迎えると同時に肉体が限界を迎え、彼の身体は突然と活動を停止し、ぴくりとも動かなくなりました。
こうして数々の不幸と共に生きた十八年で彼は幸福を知らぬまま、ただ眠りについたのです…。
何故、生まれながら彼にはただ不幸が存在するばかりだったのか。
すべては彼に、『他人の不幸を吸う』という異能を与えられたが為でした。
アオトは神によって、他人の不幸を吸い、自らの不幸に変える力を植え付けられていました。
その力によって十八年間、アオトは望んでもいない不幸の肩代わりをさせられていたのです。
数人規模の不幸だろうがその力によってアオト一人の不幸として変換され、それにより多くの不幸は彼に集中しました。
肉体から離れたその魂にも自由はありません…、魂にもその異能は残り続け、転生後もその異能を引き継ぐことができるからです。
アオトの魂はこれまでに何度も転生しており、不幸の器として利用されてきました。
一つの魂が背負うにはその不幸の数はあまりにも異常であり、前世、さらにその前世で背負った不幸も合わせればその数は目も当てられないほどでした。
全ては神が生み出した一種の生贄…、一人の存在を不幸を集める器とし、多くの災いをたった一人の存在の不幸に変えることで回避してきたのです。
神にとってはアオトはただの道具でしかなく、アオトはこれまでずっと神の手で弄ばれてきたのです。
繰り返される生命のサイクルに幸福はなく、道具として利用されている以上、アオトが幸福を得ることはありませんでした。
そしてまた神によって、アオトは再び道具として転生させられようとしていました。
しかしそこへ一人の悪魔が、神の手に渡る前にアオトの魂を奪いました。
その悪魔は蒼くて小さな悪魔、けれども決して絶対的な悪にはなれない、悪魔としては出来そこないの悪魔でした。
「おい…、見てんだろ?そんなにヒトを玩具にして何が楽しい…、こんなことの為に【カミサマ】の特権ってのは存在してんのか?くだらなすぎて反吐が出る…、クソッタレが」
アオトの魂をその手に掴みながら悪魔は自らの力を振り絞り、巨大な門を地上に出現させました。
その門は異世界へと通じ、一度通ればもう後には戻れない、一方通行の異界の門。
悪魔はアオトの魂を手にして門をくぐると、すぐに門は消失していきました。
元いた世界の神の手を逃れた悪魔は、元の世界とよく似た文明をもった異世界『イバラシティ』へ辿り着き、
人気のない場所で自らの存在と全ての力を糧に、アオトの魂をこの世界に転生させる為の儀式魔法を展開しました。
その代償となるものは使用者自身の肉体と魂…、悪魔は自らを対価としてアオトを転生させるつもりでした。
本来悪魔が人間を救うことなどそうありはしません…、けれども今ここにいる悪魔は出来そこないの悪魔。
悪人にのみ悪い出来事を与え、善人には決して手を下さない、そしてどうしようもないほどの…お節介でした。
「神にひと泡ふかせたんだ…、それくらいの大罪を残したんだから悔いはねぇ。どのみち俺も長くねぇ…、どうせ死ぬなら自分で最期は決めてやる。おい坊主、悪魔の魂一つで転生できるんだ…、嫌でも生きろよ。ただ…、どう生きていくはお前次第だ。ついでにそのふざけた呪いも消してやる…、それと俺の残りカスは好きに使え。その力は俺にはもう不要な力だ…」
その言葉を最後に、悪魔の全身が蒼い炎で燃え盛り、その身体は塵一つ残らず炎と化しました。
その炎とアオトの魂が一つになると、炎は小さな人型を形成していきます。
やがてその炎が消える頃には…、10歳の少年の姿がそこにはありました。
目を開けば再び色鮮やかに映し出される目の前の世界…、全身にはあらゆる感覚…、はっきりと感じる胸の鼓動。
この世界で転生を果たした少年アオトの目には、ふっと涙がこぼれ落ちました。
アオトの目覚めた場所に二人の老夫婦が乗った車がその近くを通ると、彼を見つけた二人が車を止めてすぐさま駆け寄りました。
転生したばかりのアオトは衣服を身につけてなかった為、何か酷い目にでもあったのだろうと心配した老夫婦は、車の中から出してきた毛布でその身体を包み、アオトは二人と共に車に乗ってその場を後にしました。
こうしてアオトは優しい老夫婦の家でイバラシティの住民となりました。
彼は後に老夫婦と同じ「空井」という姓を得て、これまで得られなかった家族の温もりの中で平和に過ごし続けました。
あれから八年…、この世界で育ててくれた老夫婦は病で亡くなり、今は二人が残した大きな家に彼一人が暮らしています。
この世界で初めて大きな悲しみを経験しましたが、アオトはこの世界で今を強く生きていました。
与えてくれた温もりがアオトを強くし、今の彼は己の意思で幸せを探すことが出来る、一人の少年となっていたのです。