太平洋に浮かぶ名もなき島。その地下に存在する古代遺跡へ立ち入った調査団は非常に困惑していた。
遺跡の年代は1万年以上前、しかしその中には光輝く金属のインゴットが山と積まれていたのだ。
調査団はその金属を日本へ持ち帰って調査することにした。
はるか昔‥‥幻のムー大陸で精製された特殊合金、ライズメタルを。
誕生!
鋼鉄の勇士
それから半年後、太平洋上空に異変が起こった。
南米大陸を上回るほどの面積を持つ大陸、それが突如として空に出現したのだ。
始めは皆その目を疑ったが、観測データがその実在を証明していた。
そして今、各国の責任者が集い対策会議を開いたのだった。
「このままでは太平洋への日光が完全に遮断されてしまう! 生態系、漁業、海路空路に甚大な影響が出るぞ!」
「即刻破壊するべきだ!!」
「無茶を言いなさるな、あんなものどうやって破壊する気で?」
「よしんば破壊できたとしても、あんなものが太平洋に落下すれば沿岸部は津波で壊滅でしょうな」
「しかしねぇ、いつまでもあれがぷかぷかと浮いてるとも限らないですよ。そのうち勝手に落下してきたら同じことでしょう」
「ちょっとお待ちを‥‥こちら我が国の偵察機が撮影した写真ですが、どうも建造物があるようです。もし人が居住している場合、破壊するのはまずいのでは?」
「高度を考えろ高度を! エベレストよりも高いんだぞ、人が住めるわけないだろう!」
しかしてその会議は激しくブレイクダンスするものの進む様子は見せず、平行線を辿っていた。
だがその時である。会場内が光に包まれ、気が付くと中心に異形の存在‥‥人型ではあるが明らかに人間ではない何者かが立っていた。
会議の参加者たちはどよめくが、そんなことはお構いなしに謎の人物は話を始める。
「地上の皆様ごきげんよう、ワタクシはスキカッテー。デスドラド王国‥‥そうですね、あなた方から見れば天空王国といったところでしょう。そこで大臣を務めております。
我々は長い間地上との関わりを断ち姿を消しておりましたが、この度お願いがありましてこうして皆様の下に参らせていただきました」
そう言うと会議室のドアが開き、ワラワラとこれまた異形の画一的な集団が押し寄せ資料を配っていった。
その内容に目を通す参加者たちは、困惑していたその顔をたちまち強張らせていく。
「なに、悪い話ではありませんよ。実は今デスドラドでは金属資源が枯渇しかけておりまして‥‥よろしければ地上の国々から分けていただきたいのです」
「ふ、ふざけるな!! なんだこの要求量は! 地上の金属を根こそぎ持って行くつもりか!!!」
そう、その資料通りに要望を飲んだ場合地上に金属はほとんど残らないのだ。
一人の怒声によって堰が切られ、次から次へとスキカッテーヘ罵声が浴びせられる。
それを交渉決裂と見たスキカッテーは肩をすくめ、残念そうにつぶやいた。
「やれやれ、悪い話ではなかったのですがねぇ‥‥素直に資源を渡していれば滅びずに済んだのですから。
それでは永遠に、さようなら」
再び会場が光に包まれ、スキカッテーと怪人たちは姿を消す。
こうして、天空王国デスドラドによる地上侵略が始まった。
ところ変わってここはまだ平和な日本。とある青年が公園でたこ焼きを食べていた。
青年、金岡金矢は大企業金岡グループの御曹司である。
大学を卒業してから世界を見る旅に出ていたのだが、今日生まれ育った町に帰ってきたのだ。
しかし家へ顔を出す前に、子どもの頃よく食べたたこ焼き屋台を見かけ少々寄り道をしていた。
「ん~~~、やっぱこの味が一番だぜ。帰ってきたって感じするなぁ。
変わらない故郷っていいよな、なんか空に変なもん浮かんでるけど」
海の方へ眼をやると、そこに浮かぶのは天空大陸。
しかし浮かんでいるだけで何をするわけでもなく、海へ出ない自分にとっては関係のない物と金矢は特に気にせずにいた。
だが、その時である。
「‥‥ん?」
天空大陸の方から何かが飛んでくる。遠いので何かはわからなかったが、近づいてくるにつれそれが人型をした何かだということが判別できた。
それは金矢の頭上を飛び越え、建物の影で見えなくなったが軌道的におそらく街中に落下したことだろう。
「な、なんだあ、ありゃあ? 鳥か? 飛行機か?」
鳥か、飛行機か、はたまたスーパーヒーローか。
気になって見に行こうと立ち上がると、何かが飛んで行った方向からけたたましい爆発音が響いた。
「っ!?」
よくわからんがヤバい、そう思った時には足が動き出していた。
爆発現場は凄惨な状況であった。
画一的な十体ほどの怪人と、ひと際巨大な一体の怪人が破壊活動を行っているのだ。
道路には穴が開き、建物は崩れ、人々は逃げ惑う。
応戦したであろう警察官も倒れており、もう誰もそれを止める者はいなかった。
「ガッハハハハハ! いいぞいいぞ、もっとやれい!
‥‥いや待て、シタッパーにもやらせてたら俺様が壊し足りんな。しかし俺様だけが壊してもシタッパーが可哀想だよなぁ。
そうだいいこと考ーえた! シタッパーども、お前たちは向こうだ! 俺様はあっちを破壊しに行く!
これなら存分に壊せるぞ! ガッハハハハハ!」
画一的な怪人――シタッパーと別れたリーダーと思しき怪人はさらに激しく破壊活動を続けた。
そして怪人は親とはぐれ逃げ遅れた一人の幼女を見つけた。
「ガッハハハハハ! 可哀想になぁ嬢ちゃん。ママはどうした?
なぁに怖がるなって、ママに会いたいんだろ? 安心しろよ、ママもすぐに送ってやるからな!」
泣き叫ぶ幼女に容赦なく振り下ろされる怪人の凶刃。
だが、そこへ間に合うのが主人公の主人公たる所以。
ギリギリで駆け付けた金矢が飛び込み、幼女を抱きしめ転がることで振り下ろされた剣は道路を砕くだけに終わった。
「あぁ? なんだてめぇ」
「俺は通りすがりの旅人、金岡金矢! お前こそ何モンだ! こんな子供相手に何してやがる!」
「ガッハハハハハ! 俺様はスサノオシンカー様よ!
地上はすべて俺様たちデスドラドの物になるんだ、どうしようと俺様達の勝手よ!
冥土の土産はこれで十分だろ、消えなッ!」
「ぐわっ!?」
幼女を抱いたまま、人間をはるかに超えた力で蹴り飛ばされる金矢。
吹き飛ばされがれきで頭を打ち付けると、そのまま気を失ってしまった。
「金矢! おい、生きてるか! 金矢!」
自分を呼ぶ声で目を覚ます金矢。
その瞳に移ったのは久しぶりに見る父親の姿だった。
「お、親父か‥‥? あの子は‥‥どうなった?」
「あの女の子か? 命に別状はない、お前のおかげだ」
少し目をそらせば、救急車に乗せられようとしている幼女の姿が見える。
助けることができたのだ。
「そうか‥‥よかっ‥‥」
「金矢!? しっかりしろ、金矢!」
そう安心すると気が緩み、また気絶してしまった。
そしてこのままでは二度と目覚めることはないだろう。それを察した父親が縋った手段は通常の医療行為ではなく‥‥。
「私だ、例の用意を‥‥研究段階なのはわかっている! だが金矢が‥‥息子が助かる道はこれしかないんだ!!」
金岡グループの、ある研究であった。
「ん‥‥? 俺‥‥生きてる?」
「おお、目覚めたか金矢! よかった、成功だ!」
再び金矢が目を覚ますと、そこはカプセルの中だった。
カプセルの外は無機質な白い部屋。そしてそばにはまたしても父親が立っていた。
「親父、ここは‥‥病院か?」
「いや、ラボだ。今金岡グループで研究していたことがあってな、お前の命を救うにはこれしかなかった」
「研究って‥‥なんだよ、新薬とか? それとも新しい手術方法?」
「‥‥これについては百聞は一見に如かずだろう。鏡だ、見てみろ」
カプセル越しに見せられた鏡。そこに映ったのは。
「な、な、な」
見慣れた自分の顔ではなく。
「なんだこりゃ~~~~~~~~~!?」
ここに新しく生まれた、ヒーローの顔であった。
荒れ果てた街中。シタッパーたちは破壊活動を続けていた。
成すすべなく逃げ惑う人々。だがそこへ、ついにヒーローが到着した。
「好き放題してくれやがって‥‥」
「シタ?」
「シタッパ?」
「シタッパー!!」
ヒーローに気付いたシタッパー、そのうちの一体が民間人にしていたように襲い掛かってくる。
だが‥‥
「何言ってるかわかんねぇよ!!」
拳一振り、吹き飛ばされたシタッパーはダメージが大きく倒れたままもがくことしかできない。
「シ、シタ!?」
「シタッパ、シタッパー!!!!」
仲間をやられ、脅威に気付いたシタッパーはヒーローへと一斉に跳びかかった。
束になっても敵わないほどの脅威だとは気付かずに‥‥。
「シタッパーども、応答がねぇな‥‥何してやがんだ一体」
瓦礫に腰かけて通信機に呼びかけるスサノオシンカー。
しかしその相手はすでに通信に出ることはできなかった。
そして、背後から近付いてきた人影に気付く。
そこに立っていたのは、通信を不通にした張本人。
「あぁ? なんだおめぇ」
「俺は通りすがりの鋼鉄勇士、メタライザー! スサノオシンカー、お前の根性叩き潰してやるぜ!!」
ここに、新たなヒーローの伝説が始まった。
メタライザー「みんな! 今日の『鋼鉄勇士メタライザー』、どうだった?
え、かっこいい俺の活躍が少なくて不満だって?
大丈夫! 来週はいよいよ俺が悪の怪人をバッタバッタとなぎ倒すぞ!
くぅ~、一週間が待ちきれないぜ!
次回、鋼鉄勇士メタライザー第2話! 『初陣! 勇士の雄姿』。
え、なぎ倒さない? あとは一体だけ? そんな~~~」