「ああ、やっぱり地上はいい……」
大きく伸びをしたあと、ハティはそう吐き出した。
イバラシティ、空港。3時間のフライトののち、ハティはこの街に降り立った。
「貨物扱いでない空の旅は初めてではない? わたしも、あなたも」
「そりゃあな。押し詰めの小型艇やビッグ・ホエールの貨物室よりはかなりましな空路だった」
響いてくる声はハティの持つ魔具・スタークラウンの制御AI リア。疲労を感じない身のためか、幾分かハティよりも声に元気がある。
現在の手持ちは背負いカバンひとつ。まずは預けた荷物を取りに行かねばならない。
受け取り所に向けてハティは歩きだし――
世界が、切り替わる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「グッ……イィィブニンッ! イバラシティにお住まいの皆さまッ!!」
声が、響く。
いや、響いているように、聞こえる。
それは脳の中だけに流れる音と映像。
ここは――
暗く、紅い。
「榊がお伝えいたします!突然ですが何者かの『侵略能力』により、この世界はアンジニティという荒廃した別世界からの侵略対象となりましたッ!!」
侵略……? は……?
混乱するハティの脳裏に、映像は流れ続ける。
流れ続ける。
「それでは皆さま―― ……ご武運を」
そして。
また、世界が、切り替わる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
歩き出したものの、どこに行けばいいのかがわからない。案内板はないかとあたりを見回す。
「あなた、今の……?」
「ん? どうした?」
リアのおかしな様子に、ハティは歩を止める。相当に珍しく、動揺を含んだ声だ。
「気づいていない……?」
「なんだ、一体どうした、リア?」
「いえ……それなら別にいいわ。気にしないで頂戴」
「変なやつだなあ。まあ、お互い様だが」
よくわからないが、気にしないでというのだから気にしないでいいのだろう。
ハティは案内板を求め再び歩き出した。