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おとうさんが死んだのは、月が赤い日だった。
お屋敷の中がいつもよりなんだか騒がしくて、気になって兄さん達と「先生」達が話している様子を覗きに行ったら
「父さんの乗った車が崖から落ちた」
カプリス兄さんが、そう言っていたのが聞こえた。
死体は、顔もわからない状態だったらしいけれど、歯型とかで父さんだと断定された。
カプリス兄さんが、父さんの『騎士よ武器を取れ《ナイト・オブ・グローリー》』を受け継いだ事からも、疑いようがなかった。
月が赤くて、空が怖くて、怖い日だった。
姉さんが死んだ日も、月が赤い日だった。
あの日は、姉さんが婚約者の人のお家に行った帰りで。姉さんに早く会いたくて、わがままを言って迎えの場所に行かせてもらった。
迎えの場所についた瞬間、ドォンッ、とすごい音がして。
気がついた時には、周りが火の海だった。
車を運転していた「騎士」と、護衛でついてくれていた「騎士」の姿はどこにも見えなくて。
人がたくさん倒れていて、その中に、姉さんが倒れているのが、見えた。
酷い怪我で、火傷はしていなかったけれど、血がたくさん出ていて。
『押し付けられた祝福《ギフト》』で治そうとしたけれど、うまくいかなかった。
治しても治しても追いつかなくて、助けられなかった。
兄さん達や「黒の騎士」の「先生」が来てくれたけれど、もう、どうしようもなくて。
姉さんが「もういいから」と笑ったのを、覚えている。
その直後に自分は気絶してしまったらしくて、目が覚めた時にはもう姉さんは冷たくなっていた。
赤い月が、赤い空が、赤い炎に囲まれたあの場所が、恐ろしかった。
空が赤い。
あの日のように、赤い。
赤い空が、怖い。
怖くても助けを求めちゃいけない、わがままだって本当は言っちゃいけない。頑張らなくちゃいけない、誰かを助けなくちゃいけない。それが、コンソラータの家に生まれた者の役割ならば。