「…は?侵略?……は??」
恐らく、”あの”通達を受けた皆が思ったであろうこと。厄介ごとのいくつか、事件や事故は確かにあるけれど、それでもこの街はいつも通りに回っているはずなのだ。
侵略なんて嘘だろう?
誰もが半信半疑、あるいはタチの悪いいたずらか噂話だと思った。変わらない日常、いや人によっては非日常が常という人もいるだろうが、やはり見ている光景は変わっていない。
彼女もまた、変わらない日常と非日常の中に居たはずだった。
x月xx日 ティールマイト開業
x月xx日 相良伊橋高校入学
12月20日 ティールマイト改装
2月14日 モモカと友だちになった(^^♪
以前、彼女は島の外に居た。一年くらい前にこの島へ半ば逃げるようにやってきて、あることについて調べを進める傍ら店を手伝う形で過ごしてきた。
追われる身、束の間の休息。箱入り娘にとって過酷な非日常だったが、今はまだゆっくりとしていられる。自分たちがどこから来たのか、まだ誰にも言っていなければバレたわけでもない。いや、言わない方がいいだろう。ただでさえ今は混乱期なのだから。
そうした安寧の中で、嬉しいこともあった。愛されて育った彼女だが、しかし対等な友人というのは長らくいなかった。姉のように慕う人、父、その二人が居るだけで孤独ではなかったが、友だちは無く。友だちというには少し距離を感じることが多かった。
けれど。少しだけ、変わったことがある。
店のバイトの子に、仲良くなりたいからお出かけしよう……そう提案したのが始まりだった。彼女はどこか居づらさを感じているように思ったが、嫌々来てくれたわけではないらしく。……ふと、こう聞いた。
『貴方が好き…です…。』
戸惑いはしたが。悪い気はしなかった。だから貴女を知りたいと。そうして仲良くなって、ゆっくりと考えていった末に答えが出ればいいと考えて。……友だちになろう。
だが大切な日常、それは今、壊れようとしているのだ。