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【このログは俺が世界を救った後の為に残しておく。】
他人の異能を支配する異能。名ばかりは強力だが、後手にしか回れない使い勝手の悪い異能。
どうして俺の異能はこんなにクソ面倒なのだろうか。高2で初めて異能に目覚めた時から、今日までずっと疑問に思っていた。
しかしあの日、榊と名乗る男から侵略の知らせを聞かされた時。全ての疑問が確信に変わった。
男の話によると侵略者(アンジニティ)は【ワールドスワップ】と呼ばれる能力を用いて俺達のイバラシティへの侵略を試みている。この異能による侵略は極めて巧妙で、侵略者の姿や記憶を容易に書き換えてしまう事が出来るらしい。
だが、奴らの計画には一つだけ致命的な見落としがあった。このイバラシティに【ワールドスワップ】に対抗しうる最強の異能使いが居るという事実を。
そう、それがまさに俺の最強の異能──【オーバーライド】だ。異能を支配する俺のオーバーライドは奴らのワールドスワップでさえも例外なく支配出来る。…つまり、俺は奴らの侵略を食い止める事が出来るって訳だ。
この事実に気付いた時、俺はようやく自分がこの世に生まれてきた意味を理解した。俺は来るべき日の為に選ばれた【救世主】なのだ──と。
クソみたいに怠惰な人生はもう終わった。俺は救世主としてこの街を救うべく最初の行動を起こした。一人目のアンジニティの目星はもう付いている。名は深淵見 銀子。アイツはソラコー三年と言う偽りの記憶を使って絶対に何かを仕出かそうとしている。能天気な他の連中は誰一人としてそれに気づいていない。どう足掻いてもアイツに立ち向かえるのは俺独りだ。
万が一に備えて異能石を取り出す準備はしてある。たとえ俺が失敗しても、第二第三の救世主が俺の異能でアンジニティを暴き出してくれるように。
…だが失敗はしない。必ずアンジニティの企みを阻止してみせる。
植井。あんたのようなヘマはしない。俺は異能でアンジニティの存在を世間に知らしめてやる事が出来ればそれでいい。…これがうまく行けば、ついでにあんたがやった事の正当性も証明できるかもな。
もちろん今より効率よくアンジニティを暴く為の算段も付けている。ラボAの何とかっていう博士に依頼して俺の異能を強化してもらう事にした。それから先の事はまだ考えてないが、今後アンジニティの退治はAAAの仕事になるかもしれない。当分受け付けのポンコツロボは大忙しだろうな。
チホとか言うアイツの後輩や、カガラとか言うクソヤンキーは気の毒だが、恨むならお前達を騙した深淵見を恨んでくれ。…俺にだってお前たちの気持ちは分かる。俺自身もあんな優しそうな女子高生がアンジニティだとは思いたくなかった。
だから、もしも彼女が本当の人間だった時。お前たちは俺を全力で殴っていい。
それが俺のせめてもの償いだ。
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【Chapter1 深淵見 銀子に断罪を。】【終了】
to be continued...