生存 57 日目 天候:晴れ
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(何も食べずとも力が沸いてきます)
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叫び声が聞こえる フレア(1) のシャウト! フレア「さぁ、これで今期のAliveも終わりです、後悔は無いように………orz」 ウィス「チキンしてる時点で後悔ありまくりだよねぇ…」
舞華さん【闇の翼 白虎隊隊長】(117) のシャウト!
ニャゴ(269) のシャウト!
アフロなラディ(347) のシャウト!
ミリィ(494) のシャウト!
ミル(600) のシャウト!
パンダーZ☆(917) のシャウト!
はっち?(1058) のシャウト!
パピー(1109) のシャウト!
ミュウ(1114) のシャウト!
こか姉(1289) のシャウト!
棗(1550) のシャウト!
かごめん(1573) のシャウト!
アフロ卒業な助悪朗(1684) のシャウト!
野良兎らぴ(1820) のシャウト!
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創られた幻の島が、強い光を放ちつつ少しずつ消えていきます。 唯一残るのは島の本当の姿、小さな、ひとつの島。 そして貴方は想います、これからの自分の居場所・・・ はじまりの場所 アトレイア皇女記 最終章最終節 〜残された記憶〜 この世界の命運を分ける戦いに、数多くの戦士が全てを捧げ、そして散っていった。 しかし、戦いの後、全ての戦士に齎されたその光は、戦士たちの傷を癒し、安らかなる時 を与えてくれた。 ・・・彼女を除いて・・・ 今、世界は最期の時を刻もうとしている。 ただ破滅のみが待ち受けていると思われた最期の刻も、今は形を変えて優しい色を見せて いる。 その最期の刻がどのようなものなのかは誰にもわからない。 大地から聞こえた何者かの声。この島の息吹。 その声によれば、それはすべての人に望む姿の最期を齎してくれるのかもしれない。 「・・・ヒヒャッ・・グヒッ・・ジュル・・・キャハッ」 迸る血飛沫を体全体に浴びながら、少女は恍惚に酔いしれる笑顔を見せている。 生肉を貪り、血を啜り、内臓を握りつぶし、倒れた獣を食い散らかしていく。 まるで子供がおもちゃ箱を散らかすかのように・・・ 失われた「自分」はどこにいるのだろう? あまりにも大きな力によって喰われた少女の自我。 その強大な力が去った後でも、少女が「自分」を取り戻すことはなかった。 少女も島の声を聞いている。少女を喰ったあの力が去ったことも理解している。 しかし、頭の片隅でそれを理解はしていても、もう誰も少女を止めることは出来ない。 ・・・ここは・・・? えっと・・・私・・・何してたんだっけ・・・? たしか、爺とお話して・・・最後の力を振り絞って・・・ あぁ・・そっか・・・死んじゃったんだ・・・ きっとそうだよね。そっかぁ・・・死んじゃったんだぁ・・・ でも、痛いとか苦しいとか、そんな感じは覚えていないや。 ふふっ・・・意外とあっさりだったのかな・・・ それにしても・・・ここが死後の世界ってところなのかな? そんなもの、信じていなかったけれど・・・ まるで大海原に浮かんでるような感じ。 自分の存在がどこまでなのか、まるでわからない不思議な感じ。 ここに私が存在しているのか、していないのか、それすらも・・・ あぁ・・・気持ちいいなぁ・・・ もう疲れちゃった。なにもかも。 ここで静かに、何も考えずにゆっくりとしていたいな・・・ あの世界には、望むものはもう何もないもの。 故郷も消えちゃった。愛した人ももう戻らない。 結局私がしたことといえば・・・ううん、わからないよね。 爺が言っていた言葉の意味もわからないんだから。 白い光だけが存在する世界。 目の前には何もない。 何も聞こえない。 小さく声を出してみると、自分の声が大きく反響している。 肉体の感覚は、温かく柔らかい粘膜に包まれているような感じがする。 目を閉じ、何かを思い浮かべようとするのだけれど、不思議と何も思い出せない。 断片的な印象と最後の感覚のみが繰り返し思い浮かんでくる。 少女はしばらく何かを思い浮かべようとしていたが、その「作業」の空しさを悟り、ただ、 時が過ぎるのを待つ。時が過ぎるのであれば・・・ ・・・ミュウ・・・ミュウ・・・ 「・・・誰?」 我が愛しの娘よ・・・ 「・・・お父様!?お父様なの?」 ・・・うむ。久しぶりだな。 「お父様・・・なんでこんなところに・・・もう私のことなんて」 何も言うな、ミュウよ。もうそんなことはどうでもよいのだ。 わしもお前も、もう消えてしまった存在なのだから。 過去など、些細なものだ。 存在しなくなった者にとってはな。 「ふふっ・・・お父様らしい言い方ですね。」 ・・・そうか?昔のように、お前を縛り付けるような言い方はしていないつもりだが。 「お父様・・・?」 ・・・お前が去ってわかったのだ。私が間違っていたと。 本当にひどいことをしたと思っている。許されない過ちであったよ。 私が望むとおりの皇女を創り上げるために、お前の全てを押さえつけ、生きる意味さえも 失わせようとしていたのだ。 「ううん・・・いいのよ、お父様。国を守るため、国の民を守るため、その道を選ぶしか なかったのでしょう?」 お前が産まれる前・・・まだ生誕の産声すらもあげていない時に、お前は偉大なる魔力 を持っていた。 お前が産まれたとき、私は何をしていたと思う? お前を抱き上げ、お前にキスをし、その温もりに涙を流すべき時に、私は新たなる儀式 の準備をしていたのだよ・・・父親失格だな。 お前が私を恨み、天界の全てを捨て地上へ降りたことも・・・今なら理解できる。 「だから、お父様を恨んでなんかいないってば。本当よ。ただ、お父様が嫌いだっただけ。」 おいおい・・・その言い種はないだろう。 もう少しセリフを優しいものにかえるべきだろう? 嫌いだったっていうセリフは、わかっていても結構辛いものがある。涙が出そうだよ。 「クスッ・・・・・ははっ・・あははっ・・・お父様らしくないよ! ふふっ・・・おかしくて涙が出ちゃう。 はぁ・・・んもう。別人みたい」 はっはっは・・・そうだろうな。もし民が今の私を見ていたら、世界の終わりが来たのだ と思うだろう。しかし、今の私が、本来なるべきだった私の姿なのだよ。 私も・・・子供の頃、かなり厳しい儀式を強いられたものだ。 発狂する寸前の、肉体的・精神的な痛みや苦しみ。 長く閉ざされた時間の後に、あの頃の私が生まれたのだよ。 ・・・苦しんでいる時間の中では、確かに思ったのだ。 我を継ぐものに、このような思いをさせてはならぬと。 しかし・・・結局は同じ道を歩むことになったのだな。 「ねぇ・・・お父様。もういいの。今は過去を振り返る時間ではないでしょう? お父様がさっき言ったじゃない。過去は些細なものだって。 ここは解き放たれた世界。確かなことは何もわからないけれど・・・ でも、ここは私にとって救いの場所だと思うの。」 ・・そうだな。過去は再び戻ることのない時間だ。些細なものだ。 しかし、ミュウよ。過去にこそ在るべき姿を見出すこともあるのだよ。 特に、今のお前にとってはな。 そして、想い描く過去も、私たちのことではない。 あの島で暮らした日々を想うのだ。 お前が自由を手に入れ、自由に生き、最期まで自由を貫き通した日々を。 それこそがこの、穏やかなこの世界の存在意義なのだよ。 「じ・・・ゆう・・・? ・・・ねぇ・・・お父様。教えて欲しいことがあるの。いい?」 あぁ、構わないよ。永遠ではないが、時間はある。お前が想い描くまではね。 残念なことに、私一人だけだがね。爺は・・・ここには来れないのだよ。 「ううん、いいの。爺とは・・・もういっぱいお話したのよ?」 ほぅ・・・やはりか。あやつめ、私の言いつけを無視しおって。 「ふふっ・・・爺を怒らないであげてね。私のためにやったことなんだから。 それに・・・今お父様がしていることも、本当はいけないことよ?」 う・・・いや・・・むぅ、それを言われるとなんとも・・・なぁ・・・ 「爺は全てを語ってはくれなかった。語ることができなかった。 時間がなかったの。天界で何が起き、何が全てを喰い尽くし、誰がそれを誘(いざな) ったのか。 でもね、私はそれを知りたいとは思わない。 それを知ることが怖いのかもしれない。許してね、お父様・・・」 あぁ、知る必要はない。お前は何も悪くないよ。そうなるようにできていただけだ。 この世界が生まれた瞬間からね。運命だったんだよ。 ・・・それで、何を聞きたいのだ? 「お父様は・・・私のことが好き?」 馬鹿なことを。今までに一度でも、お前を嫌いだといったことがあるか? ないはずだ。 「でも・・・」 お前を嫌ってなどはいない。決してな。 確かに、お前には随分辛い仕打ちを与えてきた。しかしな・・・ よく言うではないか、愛情の裏返しというやつだ。 「あら、それは」 うむ。言い訳だ。 「もう・・・本当に変なお父様だこと・・・」 お前が全てを捨てて天界を去ったと聞いた時・・・少し安心したのだよ。 もちろん最初は怒りで我を忘れたよ。地上全てを焼き尽くすことも考えた。 しかしな・・・思い出したのだ。お前が昔、この父に囁いた言葉を。 それを思い出したときにな・・・全てを振り返ることができた。 お前に味わわせた苦しみを思い、涙の味を知り、止め処のない後悔が押し寄せた。 そして、お前が天界を去ったことに安心したのだ。 これで、お前を傷つける必要はない。そして、私自身も救われたと。 だがな、父としてはそうでも、王としてはそうはいかぬ。 天界は隔たりを持つべき世界。外界との接触は許されぬのだ。 それ故に、お前の後に続く者が出ないようにしなければならなかった。 記録を消し、記憶を操り・・・ 「ねぇ、お父様。私はそのことを責めてるわけじゃないのよ。当然のことだもの。 王として、やるべきことをやっただけ。 ただね・・・父としてのお父様の本心を知りたかったの。」 本心・・・か。どれが本当の心だったのかな・・・ 塗り固められた思いは、次第に元の色を失うものだ。 だがな・・・お前を愛していたという事実は、色を失うことはない。 それだけは自信を持って言えることだ。 「・・・ありがとう。なんていっていいのかわからないけれど・・ 私が生きた意味はあったって気がする。もう、消えても何の悔いもないって。」 おいおい・・・それにはまだ早いよ。お前にはやるべきことがある。 あの世界においてきたお前はひどいものだぞ。 「おいて・・・きた?」 そうだ、お前の心の入れ物だよ。 今はただ、本能のなすがままに血肉を貪る野獣だがな。 「あ・・・・忘れてた。まだ残っているんだね。 リトルなんとかって奴に、焼き尽くされたと思っていたのに。」 お前はそう柔ではない。我が娘、アトレイア皇女だぞ? 「そっか、残ってるんだ・・・。戻らないと・・・いけないの?」 いいや、その必要はない。もちろん、お前が望めばそうなるがな。 あの島は・・・もはや過去のものではない。 あの肉体がお前の入れ物であるように、島もただの入れ物に過ぎないのだよ。 島に微かに残されたその意志は・・・お前を望む姿へと変えてくれる。 お前が望まなければ、あの入れ物は消え、お前のココロはここに残る。 「ここに残るのもいいけど・・・でも、ここは・・・・ううん。 それは後で考えるね。せっかくお父様とゆっくりお話が出来るんだもの。 こんな時間は、もう二度とこないかもしれないでしょ?」 そうだな、もう二度と・・・ ところでミュウ、地上は楽しかったのか?聞かせてくれないか? 「え・・・?う、うん。何から話せばいいんだろう・・・ 私はね、あの島に行きたかったわけじゃないの。天界の書物にあった場所、 なんていったかな・・・あれ・・・思い出せない・・・ ははっ・・・あんなに想い描いた場所なのに・・・なんでだろう・・・」 ・・・・時間はある。ゆっくりと思い出せばいい。 「うん、ありがとう、お父様・・・ 私が想い描いた場所はね、とても広大な草原と、やわらかい風と、温かい光に満ちた 場所だった。そこにはいろいろな動物が駆けていて、皆私たちの友達なの。 鳥が大空を飛びまわり、大地は優しく囁きかけてくる。 そんな、とても静かな場所だった・・・ なんていえばいいのかな、ありふれた言い方だけど、「聖域」とでも言うのかな。 確かにあの島にもそういうところはあったけれど・・・違うのよ。」 しかし、あの島も楽しかったのだろう?どうやら、仲間も・・・ 「あ!うん、そうなの!それでね、あの島で最初に出会ったのは・・・」 少女には見えていない男の姿。 その男と少女の間には、あまりにも大きな壁が聳え立っている。 しかし、その男の眼には、楽しそうに語る少女の姿がはっきりと映っている。 静かに、優しく、とても大切なものを愛でているような眼差しを向けて。 思えば、彼がそのような眼で少女を見つめることは何年ぶりだろう。 久しく忘れていた、とても大切な感情。 少女の心を解き放つために現れたはずの男が、今は逆に少女の笑顔によって解き放たれ ようとしている。 〜時は少し遡り、男が存在した最後の時間〜 「爺・・・おい!!アルフォート!目を覚まさぬか!」 「こ・・・国王・・・様・・・」 荒廃した大地と、大地を這う黒ずんだ雲がこの世界に存在する唯一の自然。 その他のものは・・・この世界に存在した美しき生き物たちは、もはやその存在を失って いる。 あまりに大きな力を持つ「彼」によって、全ては喰われてしまった。 この世界、この天界に残る生命は、もはや3つしかない。 「ふぅ・・・死んだのかと思ったぞ。驚かすな。」 「うぅっ・・痛っ・・申し訳ございませぬ。少し油断いたしました。」 「いや、よくぞ生き残った・・・あの光を耐えられたのは、我々のみのようだ。」 「・・・カザルスは?彼はどうしたのですか?」 「あぁ・・・カザルスは・・・喰われたよ。」 「そ・・・んな・・・カザルスまでもが・・・くぅっ・・・」 「仕方がない。あやつも宮廷魔術を統括はしていたが、あの物体の力に比べればあまり にも小さすぎる。」 「生き残りは・・・国王様と私の二人だけ・・・ですか・・?」 「そのようだ・・・いや、正しくは我々とあの物体と・・・あやつの4人・・・」 「あのお方は何処へ!?」 「さぁな・・・この光景を見て高々と笑い声を上げているか、それとも犯した過ちの大き さに悔やんでいるか・・・まぁ、どちらでも構わぬ。 あやつも、もうじき喰われるさ。」 ポッ・・ポツ・・・ポツッポツッ・・・ザァァ・・・ 「ふっ・・・雨・・・・か・・・あり得ぬなぁ・・・」 「この世界に・・・雨でございますか。」 「雨・・・おそらくは・・・奴が喰った生命だろうな。」 「生命・・・この一滴一滴が・・・」 「ただ流れ落ち、地に戻る。彼らには悪いが・・・受け止めてやることはできない。 地に落ちた彼らの生命が、再び芽出ることを祈るが・・・ ・・・見よ。黒く染まったあの雲を。いずれ、あの雲も喰われる。 雲こそが我らの世界の命の源。もはやここまでくれば・・・取り返しはつかぬ。」 「国王様・・・この国は、この世界は終わりませぬぞ!」 「いいや・・・もうよい。今はそのようなことは・・・動けるか?」 「ぐっ・・・申し訳ございませぬ。今しばらくは、無理のようです。」 「そうか。まぁ、焦ることはない。動けずとも問題はないのだ。結果は同じだ。」 「・・・国王様。お久しぶりですな、そのようなお顔をなされるのは。」 「ん・・・?何がだね?」 「そのような安らかなお顔を拝見いたしましたのは・・・いつぶりでございましょうか。」 「そう・・・だな・・・笑顔や安らぎなど、随分久しぶりであろうな・・・ 忘れておったよ。ミュウが見たら、驚くであろうな。鬼が笑ったと。」 「ミュウ・・・とは?」 「もうよい、爺よ。忘れたふりはこれまでだ。 お前もカザルスも、私の術にはかかっていなかったのであろう?」 「あ・・・いや・・・わかっておられましたか。」 「ふん、こざかしい真似をしおって。お前たちがすることなぞ」 「お嬢様を・・・忘れることは、このアルフォートの存在を失うこと。それだけはでき なかったのでございます。申し訳・・・」 「よいといっておるだろう。あの子は今頃、何をしているのであろうな・・・」 「元気にやっておられましょう。空を見上げ、この世界をお思いになっておられるかと」 「それはない。あの物体がその証拠だろう。」 「国王様・・・知っておられるのですか。」 「当たり前だ・・・我が娘のことだ。あの物体があの子の怨恨により、私への憎しみに より存在することも・・・な。 因果なものだ・・・これを引き起こしたのは、他でもない私自身だ。 あの子を・・・大切な一人娘を、自らの保身と栄光のために犠牲にし、辛い思いだけ を与え続けた、私への罰なのだよ。」 黒い世界のどこかから、大地を震わす咆哮が響く。 彼の言葉への反応なのか、それとも最期の時を告げる鐘なのか・・・ 静かな悪寒が彼らの背筋を凍らせ、死の香りを漂わせる。 「さて・・・そろそろ行かねばなるまい。」 「国王様・・・何を・・・」 「やつは我々が生きていることを知っている。もうじきここにも来るだろう。 我々に残された未来は、もう喰われることのみだ・・・だが・・ だがな、もしも希望があるとすれば・・・アルフォート、お前なのだ。」 「私に・・・なにができますでしょうか?このちっぽけな年寄りに・・・」 「ミュウは・・・アルフォート、お前を愛していた。 この惨劇の対象にお前が含まれることを、あの子は望まないはずだ。 そうであるなら・・・お前が最後に残るべきなのだよ。 それだけが、この世界を存続させる唯一の・・・方法なのだ。」 「それは・・・違いますぞ!国王様。最後に残るべきは国王様でございます。」 「根拠がないな、アルフォート。私を王などと思わなくてよい。 ただ、今残っている事実だけを考えてみろ・・・・なぁ?行くべきは私だ。」 「国王様・・・」 「それにな・・・娘の憎しみを受けるのは、父親の役目だよ。 私が果たすことができる、最後の・・・親としての役目だ。」 静かに立ち上がる男を、アルフォートは涙目で見上げている。 この世界の終わりの中で、今まで自分が仕えたこの男を思い、その日々を思い、 後悔が波のように押し寄せる。 あの時・・・自分が全てを投げ出してでも止めていれば・・・ いや、もっと以前・・・儀式が行われる前に少女を救っていれば・・・ しかし、全ては過去の物語。取り戻すことのできない日々。 「今までご苦労だった、アルフォート=シェイクスピア。 偉大なる故アルフォート王国の賢者よ。 アトレイアはお前の支えによって繁栄を得ることができた。 この感謝、言葉で尽くしきれるものではない。 このちっぽけな男を、よくぞ今まで助けてくれた。 生き残れ。それが、この私がお前に残せる最後の言霊だ。」 この荒れ果てた世界に漂う気を両手に集める。 それは魔力というにはあまりにも弱い。 自らの体に宿る魔力は、もう体を支える分しか残っていない。 彼としては不本意だが、大気に残る魔力を頼るしかない。 集められた魔力は微かな光を放ち、男は静かに宙に浮き始める。 「国王様・・・アトレイア王。全ては御霊の、安らかなるために」 「あぁ・・・安らかなる想いのために。 ・・・さらばだ」 黒き雲は、彼の意思を無視している。 かつては国の全てを統率した彼の力も、今はその面影を残さない。 雲ひとつ、彼は動かすことができない。 雲の国アトレイア 偉大なる魔術と知識を持って天界に君臨した王国 その最後は儚く、栄光の欠片すらも失った形 アルフォートは去り行く王の後姿を見つめている。 既に男の姿は、雨と霧によって隠されているが、アルフォートは彼の弱弱しい魔力を 感じ取っている。 頭の中に、あの怪物に向かう王の姿がありありと思い浮かび、涙が止め処なくあふれ てくる。散り逝く定めに身を任せた男の姿は、不思議と輝いて見える。 「私も・・・すぐに後を追いますぞ。アトレイア王。 私が残っても・・・結局は同じ結末でありましょう。 国王様は先ほどあのようにおっしゃられましたが・・・ わかっておられるでしょう。誰に止めることはできませぬ。 全てを食い尽くすまでは・・・ もし・・・この世界に生命の輪廻が存在するのであれば・・私はまた貴方様に仕え たく存じます。 貴方様に仕え、お嬢様の教育係として・・・高々と笑いとうございます・・・」 あの洞窟から、どれくらい離れたであろう。 微かに大地が揺れ、雨が共鳴し、周りに存在する全ての物質が恐怖の色を見せる。 彼の前に、大きく、静かに蠢く影がぬっと姿を現す。 「さて・・・偉大なる怪物よ。お前は私を喰えば満足か? ただでは喰われぬぞ。これでもアトレイア王国の君主であり、アトレイア魔術団 のトップに立つ男だ。我が生命の全てを受けてみよ!! さぁ!最後の親子喧嘩を始めようか!」 何物にも邪魔されない時間が流れ、少女は過去を振り返る。 次第に想い描かれる有限の時間。 少女は無邪気に、何も知らずに語り続ける。 その少女が語る言葉の意味を知るその男は、二度と戻らない過去を想い、そして 別れの時が迫ることを感じ取っている。 「でね、それでね・・・おかしいのよ、彼女ったら・・・・・・」 ミュウ・・・その頃に戻りたいのかい? 「どうして?なんでそんなことを言うの?」 ・・・涙が・・・出てるぞ・・・ 「え・・・あれ・・・おかしいな・・・なんでだろ・・・ははっ・・・ 悲しくなんてないのに・・・」 その時間が、お前が最も輝いていた時間なんだろうな。 なにものにも囚われず、仲間と心から笑いあった時間。 お前が欲していた、天界では得ることのできなかった時間。 もう一度その時間を得ることができたら・・・お前はどうする? 「わからない・・・わからないよ!私はただ・・・ただ・・・」 ・・・時間・・・だな 「時間・・・?時間って何?何を言ってるの!?」 ・・・私の役目は終わったのだよ、ミュウ。 お前が、自分自身と存在する刻を想い描くことができたのだから。 お前はそこに戻ればいい。それでよいのだ。 「意味がわからないよ!お父様・・・お願い・・・いや・・・」 今ここでお前と語ることができたのも・・・島の息吹によるものだ。 与えられるはずのなかった、私にとって残された思いを遂げる場所。 今まで何一つ与えることのできなかった私が、父親としてできる最後の役目。 「いや・・・やだよ・・・消えないで、お父様・・・」 よい・・・・よいのだ。私の存在する意味は、まさにこのためなのだから・・・ また・・・・いつか会える。お前が想い描くのならね。 再び与えられた時間に、私も存在することができる。 そして、お前が私を想い、私がお前を想えば、島の息吹はそれを理解ってくれる。 「違うの!私は戻りたくなんてない!」 もう・・・想い描いたのであろう?その刻を。 お前が望む、その刻を・・・私たちのことは、気にしなくてよい。 それにな・・・私は嬉しいのだ。お前が想い描く世界に、私も存在していることが。 もし、お前が私の存在しない世界を描けば・・・それは得ることができる。 しかし、お前は私をそこに含んでくれた。 ・・・世界とは、お前にしか意味のないものだ。 まさに、夢と同じ価値しか持ち得ないものなのだ。 お前が見ることのできる世界は、お前にしか見ることのできない世界だ。 お前の周りには確かに多くの人が存在する。 しかし、その存在をどう確かめる? 触れることができるからか?視覚の中に存在するからか? そんなものは何の役にも立たない。ただの主観だよ。 お前にしか確かめることができない感覚だ。 それがこの世界に存在しうる、たった一つの摂理なのだ。 だから・・・それ故・・・世界はお前が想い描くままに存在することができる。 お前の想うままに創ることができる。 他の人々もまた然りだ。もし、他人という存在が本当に存在するのであればね。 それぞれの人にとって、生きる世界、感じる世界は全くの別物なのだ。 この島の息吹はそれを明確に齎してくれる。 この島のために戦った、戦士たちのためにね・・・ いわゆるご褒美だよ。それぞれの人にもっとも幸せな時間を与えてくれるのだ。 私にとっては・・・この世界こそが望んだ世界なのかも知れぬ。 我ら親子の心を交わすことができたことが何よりもの収穫だよ。 もし、新しき世界へと行き、今、ここで語り合った記憶がなくとも・・・ 確かにここは存在したのだ。 ミュウ・・・愛しているよ。この世界の、何よりも・・・ 「いやぁ・・・やだぁ・・・・グスッ・・・ヒック・・」 さぁ、強く想え。その刻を。その場所を。その世界を。 同じ世界に存在すれば、また出会うこともできる。 長き時間がかかっても・・・な。 お前は間違いなく、我が娘なのだから。 「ちが・・・違う。違うの・・お父様。 私が思い描く世界は・・・私が・・・」 ミュウ・・・+小+ミュウ+小+・・・ 「お・・・と・・う・さまぁ・・・いやぁぁぁぁ!!!」 再び、自分の声だけがこだまする。 甲高い叫び声が、少女の頭の中を駆け巡っている。 先ほどまで感じられた存在は、もうどこかへと姿を消している。 ・・・・さぁ、麗しき少女よ。貴女が望む場所は? 貴女が望む時間は?貴女が望む存在とはどのようなものでしょう? 私が貴女に、その全てを授けましょう・・・想うのです。 この音色に抱かれながら、静かに想うのです。さぁ・・・ 「ねぇ・・・あなたは誰なの?あの島の中に存在する・・・あの島を入れ物とする 誰かなのでしょう?お願い・・・教えて・・・」 私は人では在りません。それゆえに、誰であるかという問いは意味をなさないのです。 まぁ・・・よいでしょう。私はこの世界が生まれたときに、この島に与えられた想い ともいうべき存在です。 貴女は今、私とこのように対峙して、貴女はそれを感じ取ることができるはずです。 ただ・・・いえ、このくらいにしておきましょう。 時間がありません。 一度想い描いた瞬間から、時は再び鼓動を始めます。 「あなたには・・・私が想い描いた世界がどのようなものかわかる? 私が愛してやまない時間が。私が本当に求めている時間がわかるの!?」 ・・・わたしには何も申しあげることができません。 ただ、あなたが想い描いた世界を与えるのみなのです。 あなたが想い描いた世界が、あなたが本当に欲している世界なのかどうか・・ もしかしたらそれは、大きく違っているのかもしれません。 「そんなのって・・・そんなの・・・ はぁ・・・お父様ったら・・結局、私のこと全然わかってないじゃない。 これで最期だったかもしれないのに・・・嫌になっちゃうなぁ・・・」 言葉とは裏腹に、少女は満足げな笑顔を浮かべている。 その目には、一筋の涙。 さぁ、目を閉じて・・・貴女に世界を与えましょう。 願わくば、貴女が幸せに時を刻める世界で在らんことを・・・ 一瞬にして、少女を取り巻く世界が暗い闇へと変化を遂げる。 取り残された少女に、恐怖や不安はない。これから、世界が創り上げられるのだ。 私は悪い子だった。自分勝手で・・・家族も爺も、国のお友達もみんな捨てて・・・ 自分が求めるもののために生きてきた。 しかも、その私が求めたものは・・・世界を滅ぼす、伝説の・・・ 王国のみんなは、きっと私のせいで消えちゃったの・・・ でも・・・ ねぇ・・・神様・・・もし・・・もしあなたがこの世界に居るのなら・・・ 私が想い描く世界を・・・私が本当に想い描く世界を・・・どうか・・・ 温かく和んだ風が少女の体を包みこみ、白い光が目の前に広がる。 ・・・お父様・・・お母様・・・私が望む世界は・・・ あぁ・・・温かい・・・またいつか・・・ね?パパ、ママ・・・ 大理石で作られた荘厳な廊下を、一人の男が慌しく駆けている。 自分が空を飛べることすらも忘れているのだ。 男が目指すその部屋は、この廊下を右折したところにある。 ドンッ!! 勢いよくドアを開き、男は煌びやかな寝具に横たわる女性へと駆け寄っていく。 「はぁ・・・はぁ・・・おぉ・・・!カミーユ!よくがんばったな・・・」 「あなた・・・ほら、可愛い女の子よ」 「な・・なんと可愛らしい・・・おっ!?見たか?今私に笑いかけたぞ!」 「ふふっ・・・ねぇ、抱いてあげて。優しくよ? とても大切に抱いてあげないと、壊れちゃうから」 「う・・・うむ。優しくな・・・おぉ、なんと温かい」 「えぇ・・・生まれたばかりの命の温もりよ。私たちの大切な・・・・ あなた、名前は考えてくれたの?」 「あ・・・あぁ、それがな・・・ミュウ、というのはどうだろうか・・・」 「ミュウ・・・ミュウ=アトレイア。可愛い名前ね。」 「ほ、本当にそう思うか?」 「えぇ、素敵な名前。ピッタリだわ」 「そ・・・そうか・・・実はな・・・ここ2週間ほど、国のことよりも・・・ その・・・名前のことばかり考えておってなぁ・・・」 「あら、いけない国王様だこと。でも、そんなに愛してもらえたなら、素敵な子に育つ はずよ。」 「あぁ・・・二人で大切に育てよう。この子に、幸せな思い出を残してあげられるように・・・」
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最後に、島内トーナメントおよびキャラクターランキングを実施します。 それらの詳細は 島内トーナメントは こちら キャラクターランキングは こちら を参照してください。
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