平らになるまでリクライニングしたシートから、モークはゆっくりと起き上がる。 正面のモニターに、ゆっくりと流れていく丸く大きな深青の星を見ながら、脇のレバーでシートの背を起こす。 「おはようございます」 自分以外には誰もいないはずのコクピットで、モークは声を発した。 「おはようございます、船長。今は星系標準時で0558です。早起きですね?」 応えるものが、この部屋に……というより、この船に、宿っていた。 「歳を食ったせいですかな……して、それよりモーリス君、モニターを撮って頂けますかな? 今、サンロクイチが見えてるンですよ」 「かしこまりました」 モークの見えざる相棒、モーリスはその指示を実行した。 モニターから軽く電子音が鳴ると、『録画中』を意味する単語が表示された。 この世界において、たいていの宇宙船には乗員の手伝いをするシステムが積まれているが、その中にはある程度人間らしい受け答えをするように作られたものもある。 ブルー・バード号を動かすモーリスもその一つだった。 「朝食のご用意は?」 「僕がやりますんで、お構いなく」 ドッ、と床に降り立ち、モークは後方のスライド・ドアーを開けてコクピットを出た。 鳥の形をしたブルー・バード号の、腹にあたる部分にリビングはあった。 湾曲した天井の真ん中と端に仕込まれた照明は部屋を温かく照らしており、床には青いカーペットが敷かれている。 真ん中のテーブルは木製で、七人くらいで囲める大きさがあった―――今となっては、たまに客を招き入れた時くらいしか使わないのだが。 壁にはディスプレイが備えつけてある。窓代わりに外の景色を映してくれるほか、様々な星の放送局から番組を受信するテレビにもなる。 そんなくつろぎの空間の向こうには、特に仕切りもなく、いわゆるシステム・キッチンが設置されている。 そこに立ったモークが、大きな指で備え付けのタッチ・パネルをつついて少し待つと、小さな扉が開き、中から野菜やら肉やらが転がり出てきた―――この裏側は食糧貯蔵庫になっていて、そこからコンピュータ制御されたマニピュレーターが指定した食材を取ってきてくれる仕組みになっていた。 無論ここにもモーリスが関わってはいる。が、こんなところで頼る位なら全部自分に任せてくれればいいのに……などと言ったりすることはない。 炒り卵を作り、ソーセージを焼いて、野菜をてきぱきと洗っては切り、一つの皿に盛り付けたところで、脇の加熱器から狐色に焼き上がったパンが飛び出した。 それら全てと飲み物をお盆に乗せ、この部屋のテーブルではなく、コクピットまで運んでいく。 「お疲れ様です、船長。サンロクイチの撮影は完了しました」 「どうも」 モーリスの声に迎えられながら、モークはシート脇のテーブルを起こして、そこに朝食を置く。 ムートが独り立ちして以来、モークの朝はいつもこんな具合だった。 サンロクイチ、と呼ばれた星は、モニターの中から去ろうとしていた。 それを見送りながら、モークはドレッシングのかかったサラダをフォークで突き刺し、口に運ぶ。 「目的地へのラスト・ジャンプの準備は完了しています。船長の食休みが済み次第、実行しましょう」 飯を食っているモークに、モーリスは特に断りもなく今日の予定を伝える……咀嚼しているタイミングは、避けた上で。 「ほぉう、では順調に行けば、お昼前には向こうにつけるということで?」 モークはモニターに向かって、目を細めてみせる。そこにモーリスが顔を見せることはないのだが、彼と話す時は何となくいつでもこんな風にしていた。 「その見込みですね。ワクワクしていますか、船長?」 「ええ、もちろん!」 明るい声を飛ばす。 今向かおうとしているのは、自らそこに何かがあると、目星をつけた星である……こんなことも、もう久しぶりだ。心が躍らぬわけがなかった。 モークは早々に朝食を終え、食器を洗いに行き、すぐにまたコクピットまで戻ってくる。 「モーリス、ジャンプを開始しましょう!」 「かしこまりました」 その主の声を受け、ブルー・バード号のエンジンは輝く煙を漏らしはじめた。 続いて、船体の『尾』の方から、ゆらめく光に覆われ、全体を包み込んでいく。それはまるで、炎のようでもある。ブルー・バード号は、星の海を翔ける火の鳥になろうとしていた―――特別なことではない。モークと共に、この船は幾度となく、そんな旅をしてきたのだ。 「ジャンプ・スタート!!」 モークとモーリスの声が重なりあって、コクピットに響く。 ブルー・バード号は急に速度を上げたかと思うと、たちまち縮み、白い光の点に変じて、彼方へと消えた。 ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ 遠い距離をわずかな時間で飛び越える、ジャンプの技術。 ある惑星でそれが発明されたことで、世界は変わり始めた。人々は生まれた星を越えて交流しあうようになり、未知の宇宙を探索しようとする者たちも現れ出したのだ……これがなければ、モークの人生もずっと違うものになっていただろう。 モニターに映るのは、百の色をぶちまけて混ぜ合わせたものを塗ったくった不定形のトンネルと、その奥に輝く白い光点だ。 たまに、ゆがんだ星のような何かが流れてくるのも見える―――高い次元からいつもいる世界を見ると、そんな風に映るのだと、幼い頃に本で読んだ。 けれど今となっては、全て見慣れたものである。 到着までのんびりと景色を楽しんでいれば、それで、よかった。 が、ゴゴーン! 突然の振動が、モークを襲った。シート・ベルトが彼の身体を引き止めなければ、どこかに身体を打ち付けてしまっていただろう。 モニターからの景色が急激に揺らめきだす―――何かが、おかしい! 「も、モーリス! 何が起こってンですか!」 ブウーッ、ブウーッ! 辺りにはもうアラート音が鳴り響いている。 その中でも聞こえるように―――モーリスには、雑音環境から生き物の声だけを抽出するプログラムも備わっているのだが―――モークは声を張り上げた。 「時空間異常のようですが、原因は不明です。有効な対処は行えませんが、船長の生命を守るために最大限の努力をいたします」 「た、頼みましたよっ……!」 「かしこまりました」 モーリスを信じ、モークはシートにその身を押さえつける。 だが、そこへまた、ガガガーン! 揺れがひときわ大きくなったかと思うと、コクピットの灯りが消えた。 「船長……私、が……守……」 モーリスの声も、もはやノイズだらけになり、程なくして聞こえなくなった。 数秒の間をおいて、モニターが全体から凄まじい閃光を放った。 あまりの輝きにモークは右手で顔を覆おうとするが、激しい揺れのせいでろくにできない。 仕方なく、なんとか下に目を向ける。今度は計器類が視界に入るが、その中の数字は目まぐるしく、かつ無秩序に変動している。 ジャンプの失敗は、致命的である。元いた世界に戻れなくなる心配をする前に、船ごと消えてなくなってしまう! 「くううッ…… なん、とか……せねば……!」 なんとかできるあてなどない。モークは操縦桿を握ろうと手を伸ばすが、それすらももはや叶わない。 コクピット内に奇妙な音が聞こえだした。 初めは、何か低く、広い宇宙に響くような音だった。しかし、たちまち、より高い音が加わって、できそこないのハーモニーを奏でだす。 音量はすぐに耐え難いほどになる。頭が痛みだす。 すると今度は、白い影のようなものが室内で、モークの周り、揺らめきながら現れていった。 「現、実、なの、か……これはァ……!?」 歯を食いしばる中で絞り出した声は、もう誰にも届かない。 影たちが、モークにその手を伸べる。 「ムー、トッ……!」 その声が、ひとまず、最後になった。 そして、次に目を覚ました時には、未知の惑星にいたのだった。 ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ 「―――船長」 声が、した。確かに。 モークはたちまち、回想から引っ張り出された。 「も、モーリス! 無事なんですか!?」 「はい。衝撃によりシステムの一部がダメージを受け、対話不能に陥っておりましたが、先ほど自己修復に成功しました」 「ああぁ、喋らなくなってしまったンで、駄目だったかと……! はぁ、よかった、よかったっ……!」 軽く涙を流しながら、モークは安堵した。 「しかし、今の状況は不明です。船長も恐らくお気づきかと思われますが、ここは我々が元いた宇宙ではない可能性があります。帰還できるかどうかの見通しは……」 「……大丈夫、ですよ」 モークは諭すように言った。 「これまでだって色んなことがありましたが、何とかしてきたではありませんか。幸い、この辺りには人もいます。何か手立てを見つけられるかもしれませんし、明日から探検に出てみます。君はいつも通り、この船を守っていてくれればいい」 それからまっすぐに、モニターを見て、 「信じてください、今度も」 「かしこまりました」 いつもと同じ調子で、モーリスは応えた。 最初の一日は、こうして終わった。 |
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交流歓迎 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地球から遠く離れた「プラゾア太陽系」に存在する、惑星「オーゲル」出身の宇宙探検家。 温厚で落ち着いた性格の持ち主だが、時には感情を強く出すこともある。趣味は風景の写真集を読むこと。 応急処置や料理、サバイバル技術、さらには写真撮影といった、探検家に必要なスキルをもれなく身につけている。老齢に近づいた身でありながら身体能力も高い。「ブルーバード号」という宇宙船を個人所有しており、これで宇宙を旅している。 幼いころから宇宙を旅することを夢見ており、カレッジ(大学)を卒業した後に本格的に探検家活動を始めた。数年後、先史文明に関する重大な発見をしたモークは一躍時の人となり、その後も多くの実績をあげていった。そんなある日、彼は宇宙海賊に襲われていたオーゲル星人の女性を救い、そのまま交際を始めて結婚に至った。程なくして息子ムートを授かったこともあり、モークはここで探検家を一旦引退した。 だが幸せな時間は長くは続かず、ある事故によって妻に先立たれてしまう。モークは遺されたムートを育て上げることに全力を注いだが、やがて彼も大人になり独り立ちをした。一人になったモークはもう一度昔のような生き方をしてみたいと思うようになり、探検家業への復帰を決意したのだった。現在は「白鈴公司(はくりんこうし)」という企業のバックアップのもとで活動を続けている。 ある日、新たな冒険に向けブルーバード号で宇宙を旅していたところ、原因不明の空間異常に巻き込まれてしまい、この物語の舞台となる惑星の近海にワープ。その際ブルーバード号は故障してしまい、修理の為に金を稼がなくてはならなくなった。 (Twitter: @BehindForestBoy) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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Ino | 所持Max12 / 所持数9 | 種類 | 効果 | 効力 | 精度 |
1 | 【主力】オーゲルの皮鎧 | 固有殴打武器 | - | 8 | 8 |
惑星オーゲルで作られた獣の皮の鎧 | |||||
2 | 瓶詰のお菓子 | 固有食物 | 体調回復Lv2 | - | 4 |
色とりどりなお菓子が詰まった瓶 | |||||
3 | 武器屋のカード | 固有設置 | 武器屋Lv3 | 2 | 10 |
現在地マスに武器屋を設置する(区分:武器屋) | |||||
4 | モークのメモ | 確認 | - | - | - |
落書きなどができる。出品、送品、廃棄などの挙動確認にどうぞ。 | |||||
5 | モークのメモ | 確認 | - | - | - |
落書きなどができる。出品、送品、廃棄などの挙動確認にどうぞ。 | |||||
6 | モークのメモ | 確認 | - | - | - |
落書きなどができる。出品、送品、廃棄などの挙動確認にどうぞ。 | |||||
8 | 見つけた丘のカード | 特有設置 | 散策施設Lv5 | 5 | 5 |
とても静かな丘。人は少ないはずだが……(区分:散策) | |||||
9 | 熊胆 | 固有薬物 | 利胆Lv1 | - | - |
10 | 祭器屋のカード | 固有設置 | 祭器屋Lv5 | 6 | 9 |
現在地マスに祭器屋を設置する(区分:祭器) |
Sno | 所持Max23 / 特有Max3 / 設定Max5 / 所持数7 | 所有 | 種類 | 効果 | LP | FP |
1 | 無名のカード | 固有 | 解離 | 傷殴打Lv1 | 0 | 12 |
2 | 無名のカード | 固有 | 解離 | 傷疾風Lv1 | 0 | 12 |
3 | 無名のカード | 固有 | 解離 | 治癒Lv1 | 0 | 14 |
4 | モークの縄 | 特有 | 罠 | 罠列傷身突刺Lv1 | 0 | 24 |
5 | 無名のカード | 固有 | 先発 | 個別御替Lv1 | 0 | 2 |
6 | モークの靴 | 特有 | 解離 | 列傷殴打猛毒Lv1 | 0 | 30 |
7 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 活気Lv1 | 14 | 0 |
Ano | 名称 | 休日 | 区分 | 詳細区分 | 価値 | 期限 |
S-1 | 全自動おきがえルームのカード | 豊穣 | 衣服 | 衣服屋Lv5 | 25 | 4 |
区分 | 設立数 | 運営日数 | 利用計 | 本日の収入計 |
Mission List |
#追加注文基礎講座受講 指定の場所へ行き、講座を受講する。 目的地:D-Lv4 |
Mission#A List |
AdditionalOrder List |
A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V | ||
4 | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | 4 |
3 | 3 | ||||||||||||||||||||||
2 | ★ | 2 | |||||||||||||||||||||
1 | ☆ | 1 | |||||||||||||||||||||
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