まいったなあと漏らして、腰を抑えながら、モーク・トレックは目の前の巨大な青い鳥を見上げた。 約三十年―――彼の住む世界の基準から、読者の皆様の尺度に換算すると、概ねそのくらい―――もの間、多くの探検に付き合ってくれた宇宙船『ブルー・バード号』は、突然のトラブルによってその翼をへし折られ、どこともわからぬこの星に不時着をしたのだった。 電気系統は生きていた。ドアはこじ開けるまでもなくスライドし、タラップもきちんと降りた。 外へ出たモークを最初に出迎えたのは、眼下の巨大な滝であった。船があの中に落ちなかったのも、不幸中の幸いというものであろう。 ただ欲を言えば、せめて人がいるところであってほしいかなあ……と、モークが願う前に、スーツを着た紳士が現れた。 宇宙に飛びたてぬことを別にして、問題は解決した。 モークの長い休暇、あるいは新たなる冒険がここに始まったのであった。 ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ キャプテン・モークと言えば、惑星オーゲルでその名を知らぬ者はいない。 かつては無名の探検家であった彼はある時、その有様を想像することすら難しいほどの科学技術をもっていたという先史文明『プラエクサ』の遺跡―――それも当時、まだ例がなかったほど大規模なものだった―――を発見し、その名を星々に轟かせた。以後もモークは満足することなく宇宙を駆け巡り、プラエクサの痕跡を探し続けた。 けれどそんな彼もやがて結婚をし、妻が子を身ごもったのをきっかけに引退を表明した時には、そこら中の星の人々がそれを惜しんだものである。 そして、モークは初老に差し掛かったこの頃になって、突然探検家業への復帰を表明したのだった。 ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ 未開の惑星でありながら、拠点は十二分に整っていた。 ブルー・バード号もあの崖っぷちからけん引され、充電をし、まだ残っている機能を惜しみなく使えるようにしてもらえた。とはいえ、完全な修理には当分かかりそうだし、金も要るが。 病院で湿布を出してもらい、痛めた腰に負担をかけないよう、モークはゆっくりと夕暮れの丘を登っていく。 今朝、不時着した地点が見える。 白く、それでいて単純ではない激しさを持った、ミルキーウェイの流れ。 段差のある土地の、大きな滝。 翼をもつ者たちが、岩から飛び降り、水面に叩きつけられる直前にふっと浮かび上がる。 そんな光景を幻視して、モークは一つ思い出した。 ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ 惑星オーゲルは高低差の激しい地形を特徴とする。 モークたちオーゲリアンは、獣のたくましさと鳥の翼を併せ持つからこそ、そこで栄えることができた。 オーゲリアンたちは、若さと活力に満ちた時期に、一度はその翼を試す。 モークの息子、ムート・トレックもまた、ある日友人たちと共に巨大な滝を訪れ、自らに試練を課したのだった。 皆で、滝口の岩に立ち、下を見下ろす。 高さは、身長の百倍もありそうだった。凄まじい流量は、目だけではなく、耳までも圧倒する。 けど―――勇気は、生きていくための条件、である。偉大な父を持ち、人並みに夢を見て、人並み以上に思い悩んだムートは、そう信じていた。 オーゲリアンの翼は、重い身体を浮かせるには小さすぎる。 自ら飛び立つのではない。風に、乗せてもらうのだ。 ……精神を一点に集中し、その時を、待って、 ―――今! ムートは、飛沫と共に、宙へと飛び立った。 水面へと落ちるのではない。 そこに現れると予感した、風の、背中へ! だがそこに、甲高い悲鳴が飛び込む。 脇で一緒に飛び込んだ友人が、叫んでいる。恐怖に耐えられなくなったのだ。それは他の者も、ムートをもかき乱していく。 先ほどまでの勇ましさが、揺らぐ。このまま死んでしまうのではないか――― その時、ふと身体を傾け、ムートは揚力を得た。彼はその目と手で仲間たちに促した。この風に乗れ、と。 わめく声は消え、皆彼に従っていった。 オーゲリアンの若者たちは誰一人欠けることなく、川の上空を通過していく。 そこへ、空を飛ぶ乗り物に乗った茶色のオーゲリアンが、サイレンを鳴らしながら接近してきた。 現代のオーゲルでは、崖からの飛行は危険であるため、違法となっていたのだった。 命を懸けてでも自らの力を試すなんてことは、はるか昔の話である。 ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ 自分の下へ連れてこられたムートが、いつかはこのくらいのことをしなくちゃいけなかった、と吐露したのを、モークは今でもよく覚えている。 自分は勇敢なるキャプテン・モークの息子なのだ。たとえオーゲルで良くしてもらっていたって、一歩外に出て臆病なところを見せでもしたらたちどころに馬鹿にされる。そんなのは嫌だった、と。 モークは父として、彼の頬を張った上で言わなければならなかった。 そんな思いに駆られてしたことが勇気の証明になりはしない。世間から馬鹿にされるというなら、それをはねのけることこそが、本当の勇気なんじゃないか。僕が冒険家をしていた時だって周りから褒められてばかりいたわけじゃない、プラエクサの存在を認めたくない連中にねちねちと嫌がらせをされたこともあったし、それに…… けれど、ムートの恐れも、理解はできた。 キャプテン・モークとしての名誉は、自分の手で築き上げたものだ。だけど、ムートにはまだ何もないし、何をしたわけでもない。 自分の意志で手に入れたわけではないものを前にして、すくみあがってしまうのは、きっと自然なことなのだろう。 丁度いい。 遠からず、ムートは独り立ちをするだろう。その時に自分も探検家に復帰して、またあの日のように生きてみよう。 ムートが、自分のペースで、ありのままの姿をこの世界に誇れるようになっていくのを、親として見届けよう。残りの人生を、じっくりと楽しみながら。 ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ ○ ☆ 夕日は沈みつつあった。白く躍っていたミルキーウェイも、闇の中へと薄れていく。 家としての機能も兼ねるブルー・バード号に引き返したモークは、コクピットからムートに通信をしようと思ったが、かなわなかった。それどころか、他の連絡先にも一切繋がらない。 レーダーやコンピューターを起動してみるが、表示される情報はちぐはぐだ。それは、この星が既知の宇宙に属するものではないことを示唆していた。 コクピットに備え付けたベッド―――ここは実質的に彼の個室でもある―――に寝転がり、モークはここに来た時のことを思い出していた。 <続> |
Gone Past 「……また変わった開拓者だな。俺も人の事ァ言えねえけどさ 」 Gone Past 「ゴーン・パストだ。アンタは?」 |
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交流歓迎 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地球から遠く離れた「プラゾア太陽系」に存在する、惑星「オーゲル」出身の宇宙探検家。 温厚で落ち着いた性格の持ち主だが、時には感情を強く出すこともある。趣味は風景の写真集を読むこと。 応急処置や料理、サバイバル技術、さらには写真撮影といった、探検家に必要なスキルをもれなく身につけている。老齢に近づいた身でありながら身体能力も高い。「ブルーバード号」という宇宙船を個人所有しており、これで宇宙を旅している。 幼いころから宇宙を旅することを夢見ており、カレッジ(大学)を卒業した後に本格的に探検家活動を始めた。数年後、先史文明に関する重大な発見をしたモークは一躍時の人となり、その後も多くの実績をあげていった。そんなある日、彼は宇宙海賊に襲われていたオーゲル星人の女性を救い、そのまま交際を始めて結婚に至った。程なくして息子ムートを授かったこともあり、モークはここで探検家を一旦引退した。 だが幸せな時間は長くは続かず、ある事故によって妻に先立たれてしまう。モークは遺されたムートを育て上げることに全力を注いだが、やがて彼も大人になり独り立ちをした。一人になったモークはもう一度昔のような生き方をしてみたいと思うようになり、探検家業への復帰を決意したのだった。現在は「白鈴公司(はくりんこうし)」という企業のバックアップのもとで活動を続けている。 ある日、新たな冒険に向けブルーバード号で宇宙を旅していたところ、原因不明の空間異常に巻き込まれてしまい、この物語の舞台となる惑星の近海にワープ。その際ブルーバード号は故障してしまい、修理の為に金を稼がなくてはならなくなった。 (Twitter: @BehindForestBoy) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 |
Ino | 所持Max12 / 所持数7 | 種類 | 効果 | 効力 | 精度 |
1 | 【主力】オーゲルの皮鎧 | 固有殴打武器 | - | 8 | 8 |
惑星オーゲルで作られた獣の皮の鎧 | |||||
2 | 3歩カード | 固有移動 | 確歩Lv3 | - | - |
ダイス1回目の出目を強制的に3に変更する | |||||
3 | 武器屋のカード | 固有設置 | 武器屋Lv3 | 2 | 10 |
現在地マスに武器屋を設置する(区分:武器屋) | |||||
4 | モークのメモ | 確認 | - | - | - |
落書きなどができる。出品、送品、廃棄などの挙動確認にどうぞ。 | |||||
5 | モークのメモ | 確認 | - | - | - |
落書きなどができる。出品、送品、廃棄などの挙動確認にどうぞ。 | |||||
6 | モークのメモ | 確認 | - | - | - |
落書きなどができる。出品、送品、廃棄などの挙動確認にどうぞ。 | |||||
7 | 全自動おきがえルームのカード | 特有設置 | 衣服屋Lv5 | 5 | 5 |
自動的におきがえさせてくれる便利なお部屋だ(区分:衣服) |
Sno | 所持Max21 / 特有Max3 / 設定Max5 / 所持数5 | 所有 | 種類 | 効果 | LP | FP |
1 | 無名のカード | 固有 | 解離 | 傷殴打Lv1 | 0 | 12 |
2 | 無名のカード | 固有 | 解離 | 傷疾風Lv1 | 0 | 12 |
3 | 無名のカード | 固有 | 解離 | 治癒Lv1 | 0 | 14 |
4 | モークの縄 | 特有 | 罠 | 罠列傷身突刺Lv1 | 0 | 24 |
5 | 無名のカード | 固有 | 先発 | 個別御替Lv1 | 0 | 2 |
Ano | 名称 | 休日 | 区分 | 詳細区分 | 価値 | 期限 |
区分 | 設立数 | 運営日数 | 利用計 | 本日の収入計 |
Mission List |
#追加注文基礎講座受講 指定の場所へ行き、講座を受講する。 目的地:?-Lv4 |
Mission#A List |
SelfOrder List |
A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V | ||
3 | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | 3 |
2 | 2 | ||||||||||||||||||||||
1 | ★ | 1 | |||||||||||||||||||||
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