女が訪れていたのはとある図書館だった。かつて住んでいた世界とは異なる、しかしどこか似た世界で、女は変わらず読むことができる本を求めた。 悪名、学績共に高名だという大学の附属図書館への入館を許された女を待っていたのは、有閑を楽しむ一時ではなく犬の遠吠えだった。 立ち入った時点で、女はその図書館に奇妙な違和感を覚えていた。 司書の姿はなく、課題に取り組む学生のペンを走らせる音も、本を捲る紙の音も一つとして聞こえない。そこはあまりにも静かすぎた。女が吠える音に気付いたのも、本へと齧りつく以前にその様子に困惑していたのが原因だった。 小さな人影が犬に追いかけられている。 図書館の庭園から聞こえた耳を劈くような咆哮に、慌てて窓へ駆け寄った女が見た光景は異様なものだった。番犬としても大きく、過ぎるほど屈強な犬――のようにみえたもの――は、一心不乱に何かを抱えた人影を、猛追といっても過言ではない速度で追い詰めていた。 「窃盗犯? でも、なんだか様子がおかしい。あっちは閉架図書の保管庫、だよね……? よくわからないけど、あのままじゃ怪我してしまいそうだし」 助けに入ろう、一つうなずいた女は窓を開き、そこから身を乗り出した。 「こっち!こっちです!ひとまず中に!」 人影は女の声が聞こえたのか、犬をかいくぐるように向きを変える。その時ようやく、女は人影もまた犬に劣らぬ速度で駆けていたことに気付いた。やはりなにかがおかしい。悪寒を感じながらも、女は決意のもとに人影へ声をかけ続ける。 「飛び込んでください!私が閉めます!」 人影は地面を蹴り込むように大きく跳躍する。床へと人が転がり込む音、窓を勢いよく閉める錆びたきしみ、怪物のような咆哮。同時に響いたそれに続いて、犬が窓ガラスへ身を叩きつけ、しかし砕き破るには足りなかった鈍い打音。 気がつけば女は大きく息を吐き、その場へとへたり込んでいた。犬は窓ガラスから離れ、低く唸るに留まっているようだ。 「もう、大丈夫、ですね。いったい、なにがあったんですか?」 激しい運動後のように跳ねる心臓を押さえ、倒れた人影にそう問いかける。 やはり、遠目に見た感想のままに、人影は子供のようだった。服装から少年だろうかと推測できる。 「お前は、誰だ」 抱えた物を背に隠した少年が女を睨みつける。ごうごうと起きるはずもない突風のような気配に、女はずるりと後ずさった。 蒼い宵闇を閉じ込めたような髪。それに覆い隠され、わずかに覗く褐色の肌。 圧倒的な魔力の奔流は、少年が人ではないことを女の肌と脳へ直接知らしめるようだった。 「わ、わたし、は」 「何が目的だ。私がウェイトリィと知ってのことか。その髪の色、〈黒〉の差金とでも? 舐められたものだな!」 「違います!まってください! あ、危ないと思ったんです。理由はどうあれ!」 「それを信じろと?」 「本当です! そ、れに、いま〈黒〉とおっしゃいましたか」 「やはり知っているのか、我らが怨敵を! ならばやつに伝えろ。『お前の嘲笑を引き裂きくことこそ、ウェイト家の総意である』と! 私はお前には屈しない。必ず、その貌すべて火に焚べてやる!!」 激昂する少年の魔力は、女がかつて遭遇した怪物にさえ匹敵するものだった。姿形など、その権能とはなにも関係がない。それを女はよく理解している。 しかし、少年は敵ではない。女にはその確信があった。 「もし私が知る〈黒〉と貴方が敵であるのなら、私は闘う理由を持ちません。だから……そんなに、怖がらないで」 「なにを!」 「私は人から本を取り上げたりしません。貴方にとって、それは大切なものなのでは?」 「っ!!」 一歩、少年が警戒するように女から遠ざかる。背に庇っていたもの――表紙に魔法陣の描かれた青紫の魔導書らしき本――を守るように再び腕の中に抱え込んだ少年に、女は己の推測が間違っていないのだと悟った。 「これがなにかも、知っているのか」 「いいえ、でも貴方を見ていれば分かります。金銭目的で高価な資料を盗むだけなら、数冊持っているはず。そしてそこまで守ろうとはしません。 貴方はその本を、この図書館から持ち出す必要があった。違いますか?」 「…………」 「閉架図書についてはまだ調べていませんが、ここは”そちら側”の噂もあります。あの番犬の様子からして、閉架にはよほどの本……魔導書やそれに準ずるものがあるのでは?」 「……だったらなんだ。お前程度の魔術師には関係ない」 「関係なかろうと構いません。私は、本を大切に扱う貴方の話が聞きたいんです」 「お前」 「家津です。家津和佳菜(いえづわかな)。今はただの魔術師崩れですが、以前は本に関わる仕事をしていました」 少年が息を呑む。女の真摯な眼差しの中には少年への怯えは無く、その言葉が本心からのものであると確証もなく信じさせる光が、薄暗い室内と顔を隠す髪の覆いすらまっすぐに貫くようだった。 「……魔術師が素直に名を名乗るものか。お前などただの愚か者だ」 「あ! いやー、ええっと、細かいことは置いておきましょう。そういうわけで、ここは頼っていただけませんか?」 「…………これが、私の母だと言って、お前は信じるのか」 「ええ」 「私が外に出れば、あの狗に食い殺されると言っても?」 「信じます。そういうことでしたら、ここから出ずに脱出する方法も知っています」 「お前に何の利がある 「その本の……ああ! お母様でしたら、『その』は失礼ですね。すみません。貴女とお母様のお話を聞きたいんです」 ふわり、と安心させるように微笑んだ女に、少年は胸に抱いた本を見やる。 ――似ているのだ。目的を果たすまではと、覚悟を肯定し見送った、かつての母の面影と。 「その手とはなんだ」 「このまま転移します。時空移動先を指定できないリスクはありますが、儀式の準備をする余裕はありません。簡易的な呪文でも貴方と二人なら逃げられます」 「……この”場”は私の力を封じる。お前一人でできるのか」 「ええ。やってみせましょう」 |
○ | Pno198 家津PT [前 / 新 / 集] Eno198 家津和佳菜 |
VS | Pno266 歩行爆弾PT [前 / 新 / 集] Eno266 歩行爆弾 |
× |
× | Pno142 過去の男 [前 / 新 / 集] Eno142 GonePast |
VS | Pno198 家津PT [前 / 新 / 集] Eno198 家津和佳菜 |
○ |
× | Pno198 家津PT [前 / 新 / 集] Eno198 家津和佳菜 |
VS | Pno324 てるてるぼうずPT [前 / 新 / 集] Eno324 てるてるぼうず |
○ |
メイカ 「さぁーて、いっちょやりますかー」 |
家津PT Chain | |||||||||||
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BUG Chain |
メイカ 「いったいなぁもー」 |
メイカ 「この魔術はちょっと面白くってね。」 |
家津PT Chain 傷火炎Lv1(1) | |||||||||||
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BUG Chain ?(1) |
メイカ 「いっちょやる?」 |
メイカ 「つづかせるかー」 |
メイカ 「さて、出力をあげようか。」 |
メイカ 「ざっとこれくらいじゃないの?」 |
家津PT Chain 傷火炎Lv1(1) 傷火炎Lv1(2) 傷天光Lv2(3) | |||||||||||
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BUG Chain ?(1) |
メイカ 「いったいなぁもー」 |
メイカ 「……私は帰る、これ以上深手は負えん。」 |
メイカ 「……これ以上の深手は負えんな。」 |
フィクスト 「おじゃましまーす」 |
ゲオルグ 「ふっ、マスター……我が美に劣らぬ祭器をいただこうか」 |
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読み始めると止まれない本の虫 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 |
Ino | 所持Max15 / 所持数11 | 種類 | 効果 | 効力 | 精度 |
1 | 【主力】魔導書『fabula puerilis』 | 固有火炎魔器 | - | 8 | 8 |
かつて歩いた星の御伽噺。家津の心象を具現化した魔導書 | |||||
2 | 6歩カード | 固有移動 | 確歩Lv6 | - | - |
ダイス1回目の出目を強制的に6に変更する | |||||
3 | 魔器屋のカード | 固有設置 | 魔器屋Lv3 | 2 | 10 |
現在地マスに魔器屋を設置する(区分:魔器屋) | |||||
4 | 幻創の泡沫のカード | 特有設置 | 魔器屋Lv13 | 13 | 5 |
極彩色の泡には魔の記録が宿っている(区分:魔器) | |||||
5 | アルデバランよりのカード | 特有設置 | 付与工房Lv6 | 6 | 5 |
星の加護があるかもしれない(区分:付与) | |||||
6 | うぇいとりー工房の記録のカード | 特有設置 | 魔器屋Lv7 | 7 | 5 |
星の図書館産。だいたい蒼くなる(区分:魔器) | |||||
7 | 延命のカード | 増設 | 延命Lv7 | - | - |
指定したマスに設置されたカード使用者の施設の期限をLv分延長 | |||||
8 | 祭器屋のカード | 設置 | 祭器屋Lv13 | 13 | 7 |
現在地マスに祭器屋を設置する(区分:祭器) | |||||
9 | 甘茶 | 薬物 | 甘味Lv1 | - | - |
10 | 装飾屋のカード | 固有設置 | 装飾屋Lv5 | 7 | 6 |
現在地マスに装飾屋を設置する(区分:装飾) | |||||
11 | テレポートカード | 転送 | 転送 | V | 9 |
指定の場所へ転送する。転送後、ダイスによる移動/休憩判定が適応される |
Sno | 所持Max61 / 特有Max4 / 設定Max14 / 所持数34 | 所有 | 種類 | 効果 | LP | FP |
1 | 無名のカード | 固有 | 先発 | 個別御替Lv1 | 0 | 2 |
2 | 無名のカード | 専有 | 自動 | 事象減弱Lv1 | 0 | 7 |
3 | 無名のカード | 専有 | 自動 | 抵抗減弱Lv1 | 0 | 7 |
4 | 無名のカード | 固有 | 解離 | 傷火炎Lv1 | 0 | 12 |
5 | 無名のカード | 固有 | 解離 | 傷天光Lv1 | 0 | 12 |
6 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 傷火炎Lv1 | 0 | 12 |
7 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 傷天光Lv1 | 0 | 12 |
8 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 応傷火炎Lv1 | 0 | 12 |
9 | 雑記『師曰く』 | 特有 | 解離 | 連傷疾風Lv1 | 0 | 24 |
10 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 傷天光Lv2 | 0 | 24 |
11 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 惨傷天光Lv2 | 0 | 64 |
12 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 列応傷火炎Lv1 | 0 | 24 |
13 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 惨応傷火炎Lv1 | 0 | 32 |
14 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 惨応傷天光Lv1 | 0 | 32 |
15 | 無名のカード | 専有 | 自動 | 事象減弱Lv2 | 0 | 14 |
16 | 無名のカード | 専有 | 自動 | 復帰減弱Lv2 | 0 | 14 |
17 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 列傷心火炎Lv1 | 0 | 24 |
18 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 列傷心天光Lv1 | 0 | 24 |
19 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 惨傷心火炎Lv1 | 0 | 32 |
20 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 惨傷心天光Lv1 | 0 | 32 |
21 | 無名のカード | 専有 | 自動 | 復帰減弱Lv1 | 0 | 7 |
22 | 断篇『兄弟』 | 特有 | 解離 | 遠傷殴打Lv2 | 0 | 48 |
23 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 列傷天光Lv1 | 0 | 24 |
24 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 惨傷天光Lv1 | 0 | 32 |
25 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 応傷天光Lv1 | 0 | 12 |
26 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 列応傷天光Lv1 | 0 | 24 |
27 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 活気Lv1 | 14 | 0 |
28 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 傷火炎Lv2 | 0 | 24 |
29 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 列傷火炎Lv1 | 0 | 24 |
30 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 惨傷火炎Lv1 | 0 | 32 |
31 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 列活気Lv1 | 28 | 0 |
32 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 応傷火炎Lv2 | 0 | 24 |
33 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 列応傷火炎Lv2 | 0 | 48 |
34 | 無名のカード | 専有 | 解離 | 活気Lv2 | 28 | 0 |
Ano | 名称 | 休日 | 区分 | 詳細区分 | 価値 | 期限 |
J-8 | 祭器屋 | 豊穣 | 祭器 | 祭器屋Lv8 | 40 | 3 |
奇妙な音を奏でるかもしれない | ||||||
T-4 | 武器屋のカード | 月輝 | 武器 | 武器屋Lv5 | 72 | 2 |
M-6 | 温泉 | 農耕 | 回復 | 温泉Lv10 | 117 | 6 |
区分 | 設立数 | 運営日数 | 利用計 | 本日の収入計 | 区分 | 設立数 | 運営日数 | 利用計 | 本日の収入計 |
武器 | 1 | 6 | 0 | 0 | 衣服 | 1 | 5 | 0 | 0 |
祭器 | 1 | 2 | 2 | 16 | 転送 | 1 | 5 | 1 | 5 |
回復 | 2 | 11 | 0 | 0 |
Mission List |
#追加注文基礎講座受講 ☆ Clear ☆ |
#遥かなる地へ かつての開拓よりも、さらなる先を見てみないか? 目的地:F-Lv30 |
#保持するモノ ハチミツを入れる壺は回復・休息・遊戯・鑑賞・散策・産業・信仰施設いづれかを利用して借りる。 ※ミッションを受給した地点"以外"の該当施設(受給地点:K-Lv9) 目的地:T-Lv12 |
#勇敢なるモノ 出現したクマを退治する。 目的地:?-Lv12 |
Mission#A List |
AdditionalOrder List |
A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V | ||
12 | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × | 12 |
11 | × | × | × | × | × | 11 | |||||||||||||||||
10 | 10 | ||||||||||||||||||||||
9 | ★ | 9 | |||||||||||||||||||||
8 | ☆ | 8 | |||||||||||||||||||||
7 | 7 | ||||||||||||||||||||||
6 | ☆ | 6 | |||||||||||||||||||||
5 | 5 | ||||||||||||||||||||||
4 | ☆ | 4 | |||||||||||||||||||||
3 | 3 | ||||||||||||||||||||||
2 | 2 | ||||||||||||||||||||||
1 | 1 | ||||||||||||||||||||||
A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V |