『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの祭り〜』



　とある世界、日付不明、とある場所にて――


　ぽちはまたまたアースの行事について語りだした。
「旧き惑星『アース』のジャプアーンという国では、
三月は女の子のイベントがあって、ワフゥの人形を並べて、
女の子の幸せを願うんだってさ。お酒や、豪華な料理も
作るそうだよ。惑星『アース』って、毎月お祭りなのかな」
　いくつかの画像を出して、ワフゥの人形というものの
写真を見せる。現代では見ることのない衣装を身につけた
人形や小さな家具等が、七段に並んでいる。
「人間的に言うなら……綺麗な人形のセットだな」
「そうでしょ。昔の資料を整理していて見つけたんだ」
「それで……この人形がどうかしたのか？」
　ぽちは翼を振った。
「丁度、二週間後がそのお祭りなんだよ。
ボク達もやってみない？　君は男だから、
お世話になってるクルゥさんとか……」
　ぽちはボディをほんのりと赤く染めた。
「……いや、君の場合はグローリア博士かな」
　声色を変えて、低い声で続ける。
「ツルギの旦那。このぽちが恋の天使として、
旦那の恋を手助けしますぜ」
　今度は何かの娯楽番組に影響されたらしい。
「この愛のエンジェル、ぽちが旦那の
恋を叶えてやりましょう！　彼女のハートは
旦那にめろめろ！　旦那のハートはブレイクですぜ！」
　ぽちの瞳に炎が宿り、力強く翼を振るも、
その言葉の内容はよく判らなかった。
　ぽちの『恋煩い』宣告のお陰で、多少は恋愛について
判ってきたつもりだ。ハートがブレイクされるのは
恋が冷めるということではないだろうか。
「俺は恋なんか……」
「うふふふふふ♪　隠さなくていいよ♪
君の博士への熱い想いを、このお祭りでぶつけちゃえ♪」
　それ以前の話だ。俺が恋したかどうか判っていない。
　疑似的感情は常に働いているが、これを『恋愛』と
呼んでいいのか判断出来ずにいる。ただの命令の
塊一つに答えが出ないのが、歯痒い。
「博士のことは、ぽちが余計なことを言うから、
意識してしまっただけだ。そんな感情はない」
「もしかして……君、判断に困ってるのかな？」
「……どうだろうな」
「悩むことはないさ。まぁ、ボク達のプログラムなんて
0と1の集合でしかないし、ボク達にとっては
無意味かもしれないけど、与えられた命令を淡々とこなす。
それでいいんじゃないかな。マスター達の望む結果が、
この無意味な行動で現れるのならね。ボク達には
理解出来なくともね」