軽く頭を振って、辺りを見回す。――また、随分なところに来たものだ。案外、どうにでもなるもんだな。なんて思考しながら、うんと伸びをした。頭に乗せたドールも、ヴェスの真似をしながら辺りをきょろきょろと見回す。そんな様子を見て、僅かに笑みつつも、思案する。
手近な石に腰を掛けて、ヴェスは空を仰いだ。情報屋、なんて商売は人から怨みを買うことの方が多かったように思う。――否、それは自分の取り扱っていた情報の所為でもあるのだろうが。誰の味方にもなれず、誰の敵ともならず。それが、ヴェスペールトの信条である。信用はするかもしれないが、信頼はそうできない。何かに自分を預ける気になれぬのかもしれない。
気付いたら、独りだった。例えようもなく、孤独の中にいた。物心ついた時には、世の中が平等に出来ていないことを知っていた。いや、理解った気でいただけかもしれぬ。生きていくにはお金が必要だった。――それ以上に、知識や情報が必要だった。
今、それ以上のことを語る必要もあるまいか。
軽く頭を振って、先のことを考える。エンブリオとの契約にはネクターが必要不可欠だ。一番初めにこの子と契約が出来たのは、よかったと言えるのかもしれない。旅は道連れ、という。信頼のおける友人でもいれば、また違ったのかもしれないのだが。
今の世では、ヴェスの持っている情報なんて然して足しにならないだろう。こんな可愛い子と契約できるものを、新王が独占してしまった。それだけでも噴飯ものである。全くもって困る。どうするんだこの子と同じくらいかわいい子が契約してほしそうに私を見ていたら。ネクターがないと困るだろうが。
思わず大きな声を上げてしまう。頭上でまだ辺りを見回していたドールが、ぴゃあ! と声をあげた。驚かせてしまったらしい、小さくごめんね、なんて謝ると、機嫌がよさそうな声が返ってきた。うむ、癒しである。
全くもってひ弱な自分ではあるが、ヴェス以外にも反旗を翻した者は多くいるという。それならば、と頭上のドールに気を付けながら立ち上がり、ヴェスはうんうんと数度頷いた。
情報戦なら得意とするところなんだけどなぁ、なんて小さくぼやきながら。
ヴェスは歩みを進める。――もしかしたら、気のおける友人とやらもできるかもしれない、なんて淡い希望なんかも抱きながら。