董琉に感じていた”違和感”……、それは彼女の本来の属性である、”闇”。

光の属性を持つ神乃を守護する者として、相応しくある為に。
本来の属性を抑えること、従者として必要な力、私と董琉の関係性。
…様々な葛藤があったのだろう。

私はただ、偽らず、壁を乗り越え、ありのままの董琉を、董琉自身に受け入れてほしかった。
それを私も受け入れ、董琉を安心させたかっただけ。
いくら本来の属性が違うとはいえ、私達は主従関係である以前に……”友達”なのだから。

荒療治だとは分かっていたが、それでも自分自身と向き合ってもらいたくて、
あえて闇精霊と董琉を対峙させた。主として命令した。
それが、まさかこんな結果になろうとは――…。


『本当に上手くいくと思ってたの？』

「…え？」

突然、あの声が頭の中に響いた。
今までも何度か経験した、自分の中の”ある意識”が勝手に語りかけてくる。

『貴女自身だって、本来の自分を受け入れてないのに』

「……な、何よそれ…」

一方的に言われるまま、困惑した。
私が、自分を受け入れてないですって…？

『他人に”自分と向き合え”だなんてよく言えたものだわ。
……まぁ、私の存在に気付いてるだけ進展してるかしら』

「う、うるさいわね！　今はそんなことより、董琉を…！」

『こうなってしまったからには、彼女を助けたい気持ちは私も貴女も同じ。
何の偽りもない。いつものように、貴女が私を否定する必要もない。
今この場において私達の意見は一致している――』

「何を言ってるの…！？　待ってよ、貴方は誰なの！」

『――私は…貴女自身』

「！！？」

『大丈夫、今は何も考えなくていいわ。
…そうね、今は”未琴”の思うままに、彼女を助けなくちゃね』

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ふっと視界が拓ける。
そこには、闇に、リリスに捕らわれる董琉がいた。
自分の頭の中に響く声と対話したばかり、出来事を整理したいところだが、
目の前の董琉を見るとそれどころではなくなってしまう。
こうなってしまったのも自分の責任、助けなくては。

「苦しめるだけならば、私に頂戴」

リリスは董琉を膝枕し、口元に笑みを浮かべながら言う。
余裕のある表情を見ると、もしかしたら自分の力では敵わないかもしれないと不安が過ぎる。
圧倒的に力不足かもしれないが、ここで引き下がるわけにはいかない。

「……嫌よ！私は――董琉と“一緒にいる”って、約束したんだからね！！」

後悔だけは、したくない。
今私に出来る限りのことをやらなきゃ――！！



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魔伏せの神楽を舞いながら願う。
そう、私は幼い頃に董琉と約束を交わした。

『私達は、ずっと一緒。ずっと友達なんだからね』
『……わかった。私、未琴ちゃんが巫女様になってもずっと一緒にいられる様に頑張る！』

光と闇は対極の存在であると同時に、お互いが存在し合ってこそ意味を成すもの。
大切な友達を見捨てたりはしないんだから。

……董琉、私には貴女が必要なの。







「……一緒に居て、良いのだろうか」
「馬鹿ね……約束したじゃない」


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そこで胸ポケットを探ろうと左腕を持ち上げ。先端がないことに気づいて下し。