『必ず、迎えに来るから――』
『あなたは選ばれた力を持つ者です』
『そう』
『私と一緒に、来て頂けませんか?』
『――行くわ』
------------------------------------------------------------------------
【=夢幻の扉が開く=】
【==】
人々の集まる王城前の広場から少し離れた場所、癖のついた金色の髪を被ったフードで隠した女が、オーバーオールのポケットに手を突っ込んだまま目を細める。
その隣では、150に満たない身長に緑色の髪を持った、10代前半くらいに見える少年がきょろきょろと周囲を見渡していた。
少年が肩をすくめた女を諌めるように言うと、周囲に集まる者たちの姿を示す。
そこには性別・年齢・人種を問わず、さらに言えば精霊・妖精・モンスター、果てはどう見ても生物ではなさそうなものまで、ざっと見積もっても1000人?を越えた者たちがひしめいていた。街側に溢れている者たちも合わせれば、2000人を越えているのかもしれない。
アレックスと呼ばれる女が首を傾げる緑色の髪を片手でわしわしと撫でると、それを嫌がるように少年は頭をかばうようにして彼女から距離を取る。
雑多な者たちが集まるこの状況は、アレックスにとっては興味を引くものであるのか、どことなく楽しそうな様子も伺える。
かき混ぜられた髪をぺたぺたと整えながら、幾分むくれた調子で少年レーヴェが娘を見上げた。
視線を受ける側はそしらぬ顔で皆の集まる輪の中心、麦藁帽子を被った赤毛の娘とひときわ目立つ巨体の男を眺める。
今までポケットに突っ込んでいた片手を取り出すと、銀色の鍵を一度くるり、とその指先で弄ぶ。すると鍵は短杖ほどの大きさとなり、その先端で触れた背後の空間からうっすらとした輪郭の扉が姿を現した。
【=夢幻の扉が開く=】
【==】
扉からするりと姿を見せたのは、褐色の肌の少年。その姿は半透明で、実体感には欠けている。
宙に浮かんだそのままに、閉じた瞼をゆっくりと開く彼は、アレックスのエンブリオ、ファズ。
あくまで表情を動かさずに淡々と述べる様子は本当に喜んでいるのかどうかは他のものにはよく分からないが、少なくともそれが日常のことであるらしく、彼を呼び出したアレックスはもちろん、傍にいるレーヴェも何も疑問を挟むことはないようだ。
と、そのレーヴェが周囲をうかがうようにしながら、声を潜めて彼女へと話しかける。
少し、今までとは声と表情を硬くして娘が答えた。鍵型の短杖、『夢幻の鍵』を握る左手にやや力が入る。
話を続けるレーヴェを遮ったのはファズの声。見ればいつの間にかラルフがこちらへと近づいてきている。
テストの順番が回ってきたようだ。