■とある日の出来事■
ウィーバー
人と人とを繋げ、紹介料を得るのを生業とする職業の事である。
ウィーバー達は一揆に助太刀する精鋭達を各世界から集めてくるという大仕事で誰もが大忙し。
そんなウィーバー達の1人であるソルトも勿論例外ではなく、多忙な日々を送っていた。
そんなある日のこと、ソルトは何度か依頼を受けた事のある芸能事務所の社長に呼び出され、事務所のドアを叩いた。
■ ■ ■
虎の子のアイドルが一揆に参加?
金の卵を産むガチョウがそんな危険な場所へ行く事を、この社長がよく了承したものだ。
そんな疑問を抱きながら、ソルトはコートから手帳と万年筆を取り出してメモの用意をする。
「それで、予算はいかほど…」
社長は少し口ごもった後、静かに口を開く。
この人はいつもこうだ…と、心中で苦笑しながらも、ソルトはそれをおくびにも出さずに手帳に【報酬】0と、書き入れる。
「わかりました。そこのところは、またひとつ『貸し』という事で。それで、用心棒の方にはいかほど……」
社長はソルトから目を逸らすように窓の外へと目をやる。
「……は? 」
わかるだろう?
社長は腕組みをしてうんうんと頷く。
滅茶苦茶な話だ…ついさっき、一揆に参加するというアイドルの事を先程『虎の子』だの『わが子も同然』と、言っていなかっただろうか? あれは一体なんだったのだ。
「そういった事情でしたら、ファンクラブの中から募集された方が…」
アイドルとお近付きになれるのならば、報酬はいらない…そんな連中も世の中にはいる筈だ。
社長は『そんな事もわからないのか』とでも言いたげに、ソルトの提案に深くため息をつく。
その、とことんまでに身勝手な物言いに、怒りよりもある種の諦めを感じながら、ソルトは席を立つ。
「今回はいささか条件が厳しく、私の手には余ると思われますが、ご紹介可能な人物が見つかればお連れしたいと思います」
「ご期待に添えるように頑張ります」
お互いに実に白々しい挨拶を交わし、ソルトは事務所を後にした。
■ ■ ■
さて…
一揆の為の人集めという大仕事もあらかた終わっているし、あの社長は金に渋いとは言っても、その抱えている人脈的には魅力のあるクライアントである。
自腹を切るのは避けたいが、なんとか合致する人間を紹介出来ないだろうか?
ソルトは手帳をパラパラとめくって思考し始める。
「いるわけないよな」
が、すぐにパタンと音を立てて手帳を閉じた。
To be continued