目が覚めたらそこは宿屋だった。

あ、そういえばそうだった。わたしはこの前のゴブリンとの戦いで、倒れちゃったんだ。
倒れちゃった後のことはあんまり覚えてないけど、カヴちゃんもゼイギンさんも、町の人々もみんな優しかった。
それだけははっきりとわかった。

わたしはいずれ魔王になるのだから。
ここでわたしを見殺しにしてしまえば、人間にとっては好都合だったはずなのに。

それとも、魔族を差別しない理由が、あるのかしら？
バカなわたしにはさっぱりわからない。戦闘でのケガのせいで頭もよく回んないし。

人間と仲良くなりたい。人間と和平を結ぶ政治がしたい。口先だけそんなこと言って、肝心のわたしは差別に怯えているの。
笑っちゃうでしょ？イーケプラだったら今頃コーヒーをわたしの頭の上からぶっかけてるところだわ、きっと。
でもね、人間が好きなのは、本当だよ。そうじゃなきゃ、倒れてまで二人のこと守ってないもん。

だから、ね。
わたし、ちゃんと二人に話してみようと思うの。魔族のこと。魔王のこと。
わたしが目指す、政治のことも。