今回の戦いはギリギリだった。
今までのわたしは、戦いに赴く兵士達を見送る立場だったから、戦場に行くなんてことはまずなかったし……
はぁ……軍隊って、こんなにつらい仕事してたんだ……

宿で休めたばかりの身体は悲鳴を上げている。
それでも、わたしは前に出ると決めた。わたしはこれでも魔族だもの。人間より体力があるという自負はあるつもり。
カヴちゃんとゼイギンさんを守るのは、わたし。

なのに、それなのに……
灼けるような熱さで思考がまとまらない。

さっき見た、兵士を取り囲む魔王軍の様子を見ていた。あんなの、ひどいって思ってた。
だけど、こんなひどいことをしなきゃ生き残れないんだとしたら……
わたし、本当に何も知らなかったんだ。夢ばっか語って、バカみたい。
イーケプラが学んで来いって言った理由、なんとなくわかったような気がするなぁ……

ああ、熱さで魔力が抜けてく感じがする……
ふと、振り返っても二人はそこにはいなかった。
二人とも大丈夫かな……

今は、近くで戦ってることを、信じるしかない。