イクサの一週間

「今回の攻略拠点は「常闇の祭祀殿-懺悔者の道」ですね」

「時間になったら集まるのよ」

「……こんばんは。メッセンジャーサービスです」

「メッセージは届いておりません」

「何か用かしら」

「魔石が欲しいの？」

「簡単よ。アナタを構成しているものから幻素を分離すれば、魔石が手に入るわ。じっとしていなさ……」

「……」

「……」

「お嬢様。魔石の配りすぎはいけません」

「いいじゃないそれぐらい」

「だめです」

「……しょうがないわね。また来なさい」

「オヌシ、まだ素手で戦っておるようじゃな。工房を貸さなんだら音を上げると思ったが」

「いいかげん忘れて武器を握り、工匠に戻った方が良いぞ。今なら一時の気の迷いとして、見逃してやらんでも無い」

「……」

「……」

「どうやら夢を見たいようじゃな」

「だがオヌシの拳。あやつの『コンファイン』とやらだけでは、凡百のケンカ上手止まり。極めることはできん。他はどうかしらんが、格闘に於いては無理じゃよ。此は少々特殊でな、身を以て修得しなければならぬのじゃ。よって誰かに師事し、技を受け継がなければならぬ」

「ちなみに妾はちょっとした流派を持っておる」

「つまり、妾であれば、真の格闘の技を仕込むことが出来る。オヌシの身体の構築のために、コンファイン自体は併用させて貰うがの」

「じゃが修行は厳しいぞ。工匠とは完全に決別してもらうし、いくつかの行為を禁止させてもらう」

「考え直す方が良いぞ。真の格闘は外道ゆえ、極めたとしても表舞台で使うことは許されん。掟を破った場合は拳を封じさせてもらうのじゃ。早い話、死んでもらう。まあオヌシらは死なないから、技の全てを忘却するだけじゃな」

「その修練の果てに熟練し、技を極めようとしても、最後まで到達できるのは限られている。それまでの苦労が水の泡かもしれぬぞ？」

「わかりにくいなら言い換えようか。『最上級クラスにコンファイン出来るのは一人のみ、コンファインに成功した瞬間依代が消滅し、以後誰もコンファイン出来ないかも……』……となる可能性が高い道じゃ。険しく、得るモノがないかもしれぬ。妾の気が変わっただけで、誰も会得できないということもあり得る。それでいいのか？　戦士や破壊者ならば、そのようなことは決してないのじゃぞ」

「その覚悟があるなら妾がオヌシに稽古を付けてやってもよい。叛神の流派『七法天拳』のな」

「ま、語るより実演した方が早いか。構えるのじゃ」

「こんなもんじゃな。しかし……一撃で倒れてもらうと伝承どころではないのう」

「オヌシに必要なのは身体作りからじゃな。この程度でくたばるようでは話にならん。手始めに『格闘修練』の熟練度を100.0％にすることから始めるのじゃ」

「ちゃんと稽古はしておるかのー？」

「ま、拳で語って貰おうか。構えるのじゃ」

「……だめだめじゃな」

「ああそうそう。未熟な者に依代を奪われるのは嫌じゃろうと思うて。召喚士の奴に頼んで、中級クラスのコンファイン条件に『格闘修練の熟練度100.0％が必要』を追加しておいてもらったぞ。よかったな、これで脇目をふらず修行に打ち込めるじゃろう」

「全てを投げ打つ覚悟で稽古するのじゃ」

「マセキマセキ！」

「もうがまんできないむー！！」

「ウマーウマー」

「ああ、遅かった……ムウはついに自重できなくなったようですわね……」

「そうそう、ついに駄天使封印の研究が完成しましたわ」

「結論・むりっぽい」

「どうやうムウは魔石を持てば持つほど食欲を増していくようです。よって懐かれてしまった現在、『魔石を貯め込む』と『食べられないようにする』ことは両立不可能ですわ」

「むーむー」

「これなったら、ムウの食欲は無限大ですわ。跡形もなく魔石を食い尽くしてしまいますわ」

「ですが、魔石を保護するというなら良い手がございます」

「ムウが食べれないように、一時的に封印すればいいのですわ」

「むー？」

「封印すると、簡単には動かせなくなるので、私が預からせて頂きます。その通帳には、その魔石の数を記録させていただきますわ。利子は付きませんが、預けた魔石はムウに食べられることはありません」

「その場では使用できませんが、申し付けてくれればお返しします」

「通帳はアイテム欄にも表示されるようにいたしますわ。預金高はアイテム欄の『…』にマウスカーソルを合わせていただければ確認できます。ランキングの方にも高額預金者として名前を張り出しておきますので、それで競争するのも面白いかもしれませんわね」

「ただ……封印自体にも魔石が必要なので、引き出す際には5％ほど費用を請求いたしますわ。ムウに食べられるよりはマシだと思いますが、完全に自分で使いたい場合はなんとか消費を心がけて下さいませ。でないと、先ほどのようになります……」

「また、通帳を持っている方のサービスとして探索系・輸送系の一部のアビリティとして、わたくし達から力をお貸しすることもあります。通帳は大切に保管して下さいませ」

「それでは、また！」

「そろそろ時間よ。集まりなさい」

「攻略ですよ攻略だよ攻略だぞ攻略に行くぞっヒョォォ！！」

「……落ち着きなさい」

「やる気は十分のようね。頑張りなさい」