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Diary | ||
「―――。…と言うワケで、弟を…救い出せないかしら?」 青い髪の女性が僕に言う。ルルドの姉…アリスだ。 ルルドは魂が抜けたかのように、自室で倒れていたらしい。 アリスに呼ばれて僕も様子を見に来たんだが…僅かにだが、召喚の痕跡が残っていた。 「不可能では無いと思う。だが…身代わりを差し出さないと、ルルドは救えないかもしれない。」 そう…ルルドの魂を召喚した者は、恐らく相当の魔力を持つ人物。 召喚した者の管理下にあるルルドを救うには、何か対価を差し出さなければならない筈だ。 管理下に無いのであれば、こういう風に召喚する事も可能なんだが。 …悔しいね。僕これでも、高位召喚師の筈なんだけれど。 「ルルドの事だけを考えるなら…別世界から魂を呼んで、それを身代わりにするとか…ってのは、どうだろう?」 恐らく僕が思いつく限りこれが手っ取り早くて確実で、そして狡猾な手段。 下手をするとその魂を犠牲にしてしまうかもしれない。 「私は…召喚については全く存じません。…弟をお願いします、アスネイド。」 「分かった。…必ず救い出してみせるよ。」 --- 今日もまた、攻略戦とやらが終わったらしい。 …いつになったら戻れるのだろう。…俺にはもう、それしか考えられそうにない。 …ホームシックとは、案外面倒なモノだ。 思えば俺は生まれてから16年、故郷を離れた事など無かった。 離れる必要が無かったからだ。 …突然召喚されたこの世界に馴染もうと思おうとも馴染めない。 それまであったモノを急に奪われたのだ…馴染む事など出来はしない。 故にであろう、俺が…ホームシックにかかった理由は。 あいつらと学院に通い、誰かがサボる提案をし、屋上で昼寝をしたりゲームをして遊んだり、 教師に見つかって叱られたり、更にそれを知った保護者の1人に何故か俺が叱られ、 隣人の家に押し掛けては晩を馳走になったり、その後皆で賭け事をして俺が負けたり…。 そんな日々が今はとても懐かしい。 そんな事を考えつつ、俺は今日もこの世界の喧騒を遠目に見つめる。 ある者は水着姿、ある者は海の家、ある者は新たな体に乗り換え、ある者は消え逝く。 喧騒の中に1人でも友人がいればまた、違うのだろう。 「―い。おい、聞こえるか、クソガキー。」 …俺もとうとう幻聴が聞こえるまでになったらしい。 どれだけ帰りたいのだ、と思うと笑いが止まらんよ。いや…今は笑えんが。 「おーい、おい、クソガキー。聞こえてるなら返事をするんだ。僕だ、アスネイドだ。」 …ん?何かおかしいな。 「おいルルド。ルルド。…返事をしないと、アリスに学校サボって屋上で遊んでた事を言うよ」 「あ…アスネイドか!?」 こいつは召喚師だった。一流の腕前の癖に娘の為に定職にはつかず、夕方にはアルバイトも切り上げて家事に集中しているらしい。 俺の隣人の…いや、友人の父親でもあり、死んだ父上の友人でもあった。 確かバイトの1つに…俺の通う学院の教師というのもあった…ような気もする。 「いいかい、よく聞くんだよ。今から君をこっちの世界に戻す。戻りたければ絶対に抵抗はするな。変な所に飛ばされる。」 姉上の…差し金だろうか。それともセラが頼んだか。 …でなければ奴は、動かないだろうからな。それにしても、もう少し早く来なかったものか。 「分かった。…おい、さっさと運べ。しくじるなよ。」 「ったく…口の減らないクソガキだなぁ。…それじゃ、行くよ。」 こんな俺にも話す相手はいて、それなりに心配をしてくれる者もいた。 召喚魔法が発動する前に、俺はある人物に魔力を送った。 人の世話になったら礼ぐらいしろと、姉上にはきつく言われていたからな。 別世界といえど…それぐらいはせねばなるまい。 俺は何かに吸い込まれるのを感じながら、意識を失っていった。 --- 「――という事だ。」 「ハァ…。」 自分はどこかの国で執事をしている。どこの国かすらも覚えていない…覚える気は無い。 どうせこの仕事も、生きる為の作業でしか無い。 「…それで、一体何なんでしょう、皇帝。自分と皇妃サマに血の繋がりがあった所で、何なんでしょうね?」 目の前に居る人物…この国の皇帝だ。自分も結構良くして貰ってはいたが、それすらもどうでも良い。 で、自分はいきなり皇帝に、死んだ皇妃が自分の姉だったと言う事を聞かされた。 意味が分からない。 あるとしたらユリエル姉様だろうが、あの人も自分も子どもの頃に捨てられているんだ。 今更関わり合う事も無いだろうに。 「そもそも姉上は、うんと小さい頃に……ッ!?」 誰かに…呼ばれた…? 何だ…誰が自分を…。 「同じ灰の名前を冠する…君には悪いけれど、犠牲になって貰うよ。」 気付いたら自分は、どこか知らない世界に居た。 --- ゆっくりと目を開ける1人の少年。 心配そうに少年を見る女性と、少年をぼうっと見ながら煙草を吸う男性。 少年は周りに目を配ると、静かに口を開いた。 「俺は…戻って来たのだな?」 「――ッルド……貴方はいつも私を心配させて……よく、よく無事で…本当に良かった!」 「姉上……済まない、心配をかけた。もうあまり、無茶はせんよ。だから…泣かないでくれ。それと……」 少年は煙草を吸う男性――アスネイドの方を見た。 アスネイドはルルドたちから目を背け、相変わらず煙草を楽しんでいる。 「…手間をかけたな、アスネイド」 アスネイドはふぅ…と息を吐き、声の主の方に体を向けた。 「良かったのかい?…お前にとっては久々の対面だろう。」 「世話になった者に礼も言えない程、俺は無礼ではないぞ。…感謝する。この借りは…必ず返す。」 アスネイドは目を丸くした。…が、次の瞬間には煙草の火を消しながらおかしそうに笑っていた。 「借り?…子どもに貸しを作る主義は無いよ。取っとけばいいさ。」 「しかし……」 「いいから大人の言う事は聞いておけ。そんな簡単に何か借りると、首が回らなくなるぞ。…それより。」 男はかつて無い程の真剣な眼差しでルルドを見た。 この男がここまで真剣な表情をする事は滅多に無い。…ただ1人、1人娘の事でも無い限りは。 何かあったのか…とルルドは思考を巡らす。 「……セラの事か?」 「そう、書置きだけが残ってて…何か…知っているのかい?」 セラ――セラフィードはアスネイドの娘であり、ルルドの通う学院のクラスメートでもある少女だ。 神殿に住まうルゥファス一族と神殿の隣に家を構えるリリィ―アスネイドの一族は、当然の事ながら交流が多い。 そのセラがどうやら行方不明らしい。書置き曰く「ちょっとパパの部下の人と修行の旅に出ます。少ししたら戻るからね。」との事である。 「…奴なら俺がカレイディア――俺のさっきまで居た世界、に行く前に、俺の制服を借りに来たぞ。」 「…は?」 「俺の制服を着て髪を切って…まぁ、どう見ても男装だな、あれは。…兎も角、その格好でどこかに行ったが…お前は…そういえば、研修だかで留守にしていたのか……。」 「せ、セラぁぁぁ!?僕を置いて一体何処に行ってしまったんだよう!」 先程までの冷静さを失い、アスネイドは神殿から飛び出して行く。 その姿を見ながら呆然とする女性と、ため息をつく少年。 「ふぅ、あいつは相変わらず娘の事になると見境が無い。」 呆れ気味に少年が笑うと、女性は恥ずかしそうに少年から背を向けた。 「でもね、ルルド…ああなる気持ちは、分からないでも無いのよ。貴方が急に倒れてしまって、ルークも私もとても心配したもの。 エリスもね、毎日様子を見に来ていたのよ。セラは…相変わらず行方不明みたいだけれど、聞いたらきっと心配していた。 と…兎も角、改めておかえりなさい、ルルド。」 「…ふふ、ああ…ただいま。」 必死に言い訳をする自分の姉をおかしそうに見つめながら、少年ははっきりと笑った。 少年の国は今日も、星が綺麗だった。 |
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今回の滞在 | ||||||
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Message(Linkage) | ||
リンケージはありません | ||
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攻略の時間になりました!! | ||||||||
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