戦場アナ 「今回の攻略拠点は「召喚の御座-汚れ無き霊場」ですね」 |
召喚士 「時間になったら集まるのよ」 |
取引メイ 「……こんばんは。メッセンジャーサービスです」 |
取引メイ 「……10件のメールが届いております」 |
棺桶と少女 「呼ばれて飛び出てこんにちは。先週は途中でお別れしたアンシャーリーです。浮き世は牛の小車。浮き沈み七度は世の常で沈む淵あれば身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあり。清水の舞台には及びませんが飛び降り台を用意しましたので心機一転頑張ってください」 |
棺桶と少女 「油尽きて火消るのが世の理だそうです。やる気になるように栗も撒いておきますのでセコンドは私に任せてどうぞ突撃して真っ白く燃え尽きて火消しを務めてください。ヘロドさんはやれば出来る子だと信じています。きらきら」 |
棺桶と少女 「狼子野心を忘れず、狼に衣を着せても本性は隠し切れないそうですから堪忍なさって変身してください。男の人はみんな狼だと習いましたので正体がばれる心配をなさらなくとも結構です。それとも満月でないと駄目なのでしょうか? お手やお座りといった芸を仕込んでみたかったのですが……」 |
棺桶と少女 「よくじょう……? 湯の辞宜は水になりますので湯の山の道連れの格言通り一緒のお風呂でも構いません。石楠花さんのようなお姉さんとご一緒したいというお気持ちは分かりますがえっちなのはいけないと思います」 |
石楠花 「気遣い……と云えば気遣いなのかもしれないな。 英雄とはこの世界を救う為に遣わされた御遣い。 依代とは御遣いを宿す為に身を捧げた道具。 そう、多くの英雄と依代の関係は其れで良いのだろう 」 |
石楠花 「しかし、説話という形で存在を見出された私は、その成り立ちに縛られてしまっている。 異世界ゆえに多少の自由は赦されているが、本来の物語から逸脱する行動を起こすことの出来ない、英雄でありながら英雄になれなかった出来損ないだ。 英雄を宿し損ねた依代と、英雄になり損ねた英雄。相憐れみたくもなるものだよ」 |
石楠花 「いや、興味を持って貰えたようで嬉しいよ。 私もヘロドの君の故郷で生まれた物語や見識には興味を惹かれる。 そうだな……では、少し私を生み出した人々のことを話してみよう」 |
石楠花 「彼らは雪と氷に閉ざされた世界の住人だった。 一日の大部分が夜に支配され、一年の大半が冬に飲み込まれている、とても寒い世界。 其処に住む人々が何よりも恐れたのは、戦乱や病気などではなく闇そのもの。 闇と共に凍て付く風が命を奪い去る、寄る辺となる太陽が沈んだ後に訪れる時間こそが、彼らに取って最も身近に感じた死だったようだ。 あとはヘロドの君の云った通りだ。闇を拭おうとする心が世界に理屈を付け神話を創る。やがて、神話から死の総元締めたる夜の化身が生まれ、夜を母として様々な悪魔が生み出された 」 |
石楠花 「其の中でもとりわけ『寿命』……私に人格や意志が与えられたのは、偏に『夜』と性質が近かったゆえだろう。 人は夜に抗うがために火を太陽の代わりとして、瞳を閉じ寝床で夜が絶え果てる時間を待つことを選んだ。 だが、時に眠りに就いたまま夜に取り残されてしまう者も居て、彼らはこれを一括りに寿命、私の仕業としたのだ。 実際は凍死や餓死、衰弱死も数多く含まれていたのだがね。命を落とす側にしてみれば、目覚めを迎えない者は全て同じ下手人の手にかかったように映ったのだろうな」 |
石楠花 「……多分に推測混じりで恐縮なのだがね。帰るべきただ一つの依代、私自身の身体。 それは誰かが認めれば在るのだろうし、誰も認めなければ何処にも在りはしないのだろう。 寿命の悪魔の魂を生み出したのが人であるならば、寿命の悪魔の身体を生み出すのも人であるのが道理。 こう云っては変な話だがね、私は自分の身体のことを知らないし、また知ってはいけないのではないかと思うよ」 |
召喚士 「そろそろ時間よ。集まりなさい」 |
戦場アナ 「攻略ですよ攻略だよ攻略だぞ攻略に行くぞっヒョォォ!!」 |
召喚士 「……落ち着きなさい」 |