Diary
4週間目にして、ようやく白紙の日記帳を見つけました。
日記帳自体は手元にあったのだけど、他人が使った形跡のある日記帳をかってに使うというのは、その他人……つまり、以前の持ち主。そのひとに対して、ひどく失礼だと思ったから、しないことにして。白紙の、使われていない、まっさらの日記帳を見つけたら、それを使おうと、そう自然に考えてました。
なので、これから日記をつけようと思います。ぼく、こと、杠 水月の日記を。
はじめてこの世界で目が覚めたとき、とても困惑したのをよく覚えてます。
起きたら異性の身体になってました。なんていう、まるでマンガみたいな状況だったら、困惑しない方が珍しいと思います。
……ごめんなさい。本当は困惑どころじゃなくて、半分パニックになってました。
頭に響いてくる召喚士のひとの説明と、同じように召喚されたほかの人たちのおかげとで、なんとか落ち着いたけど。
この世界を取り戻すための戦いという役目を、この身体で。この、小さな(元のぼくの身体もそんなに背が高い方じゃないけど。その身体よりも、もっと小さい)女の子の身体で。借り物の身体で、こなさなければならないという事実は。正直なことを言うと、大きなプレッシャーでした。
この身体とぼくの魂の相性がいいからか、元の身体で学んだ体術をほぼ再現することができたのは、不幸中の幸いだったけれど。やっぱり、非力はどうにもできないくらい。
これまでに3回あった魔物との戦いは、なんとかこなしてこれたけれど。途中で倒れてしまいました。
■■■さん、ごめんね。借り物の身体を、傷つけてしまって。
せめて大きな傷跡が残ってしまわないよう、がんばります。