石楠花の一週間

先の戦で我々は敗れた。
多くの英雄が倒れ伏し数多の敵は健在。
一言に惨敗と形容せざるを得ない負け戦。

我々は健闘したのだろう。
最後まで戦場に残り続けた英雄は13。
うち実に9名が我々の隊であり、そして3戦を経てなお壮健。
他の隊との違いを求めるのであれば、それは恐らく我々は命の価値を軽んじていたお陰なのではないかと私は思う。
他者の生命も自らの生命にも等しく価値を見出さないからこそ、最後まで惜しみなく其れを注ぎ込めるのではないか。

我々は人でなしだ。
戦に赴き倒れようが魂のみの存在である我々に痛みはない。
依代の君達に苦を背負わせ、その命運をも拿捕している暴君……それが英雄だ。
エトランジェ……その言葉に籠められた響きを我々はどれだけ理解しているのだろうか。
英雄などと賛美されても、本質的には我々も常闇をもたらした彼女と何ら変わりはしない。
ならば、せめて我々は彼らに救いを示す義務があるのではないかと思う。
彼女を打ち倒し常闇の世界に光を灯してくれるのだと。
そう信じるに足る希望を指し示さねばただの外道に堕ち果てよう。


――と云ってみたまでは良いのだがね。
そも私は人ではないのだよ、依代の君。
結果として君達の希望にはなり得るかもしれないが、その過程には一切の期待をしないでくれまいか。
先日も云った通りに私には選択の余地など存在しないのだからね。