「それじゃあね、もう遭うことも無いでしょう」
「みじけぇ間だったが爺も世話になったな」
「感謝の言葉かしら？」
「そう思うか？」
「ふふ　まぁ精々長生きする事ね」




「南に行こう」
「そう南に」
「この世界の？」
「面白い事を言う」
「寝ぼけているのかい？」
「南の世界にさ」
「そう、ずっとずっと南にね」
「そこから門をくぐるの」
「楽しみでしょう？」
「ふふ」
「大丈夫」
「だって世界はどこまでも続いていて」
「掃いて捨てるほど沢山あるのだから」
「そもそも世界って何？」
「世界だなんて陳腐な表現よ！」
「言葉とか概念とか意味とか理由とか存在とか力とか名誉とか幸福とか不幸とか」
「そんな下らないモノにすがらなくちゃいけないモノの作った狭い狭い箱よ」
「私から世界なんてモノを端的に表させてもらえるならば」
「世界なんてそいつが認識できる範囲の存在」
「それだけよ」
「人には見えない物が見えるとか」
「常識だとか」
「社会だとか」
「国だとか」
「世界だとか」
「所詮個々の存在が認識出来る範囲が違うだけ」
「つまらないわ」
「全知全能と言いながらも己の定めてしまった範囲の事しか知らないし干渉出来ない」
「とってもかわいそう」
「とってもおろかしい」
「とってもつまらない」
「そんなもののなにがたのしいのかしら」
「わからないわ」
「おとうさまならわかるのかしら」
「わたしにはなにもわからない」
「だってわたくしは――だから」
「――はわかるのかしら」
「そう」
「あなたは――だものね」
「――は――で――」
「これから――するのか――」
「――――」
「――」
「――――　――　――――　――――」
「―――――――」

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