『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2078.01.10.10:36、とある施設にて――


　俺は思考を巡らせる。

　俺のオリジナルだったミライはその最期の一瞬に、音声を拾うことが出来た。
少女の言葉は、オリジナルの最期に伝わったのだ。

　畜生。オリジナルのミライめ。最期にいい想いをしやがって。
　羨ましいが、お前の想いは俺が継ぐ。安らかに眠れ。

　ぽち達が駆けつけた時には少女の姿はなく、オリジナルのミライは
機能停止した状態で見つかった。幸いにも、本体の大部分は実験用と
思われる高熱の炉に落ちなかったらしい。落ちていたら、二台目の
俺は誕生しなかっただろう。少女は発見出来なかった。

　オリジナルの『核(コア)』と、一部の記憶、少女がオリジナルのために
用意した本体を組み合わせて、二代目の俺……『ミライ＝ツルギノ』は
誕生した。オリジナルの記憶を完全に消すことも出来たが、残すことにした。
オリジナルが、時間をかけて理解した感情を消すのは、オリジナルとしては
口惜しくもあるし、二台目としては勿体ないと思ったのだ。

　博士が記憶を消してやろうと言ってきたのを断った。

　勿体ない。二代目としては、手間もかからずに済むという、効率も
優先したかった。有効に活用すれば、オリジナルも喜ぶのではないかと、
勝手に思い込んでいる。折角理解した感情だ。俺も好みの女の子を見つけて、
恋をしてみたいのだ。恋のためにっ！！


　良い報告ばかりでもなかった。残念な報告を受けたのは、目覚めたその日、
オリジナルの最期と自身の立場を理解した直後だった。
　それは、先の大戦でマスターを失ったことだ。マスターが固執していた
ディバイダーを相手に機体共々ロストしたという。マスターは命と引き替えに
かつての仲間の仇、ディバイダーを討ったのだった。
　この戦闘に特化した身体さえあれば、マスターの役に立てると喜んだのも
束の間のことだった。

　今は誰のバディ(相棒)でもない。戦闘に特化した故に、単独での行動が
出来るようになってしまったからだ。ぽちも不要である。
　力を得た代償である。寂しくもあるが、資源の無駄を減らすために
仕方のないことだ。ぽちは別のサポートへと回ることになった。


　もうやめだ。
　今日は休日だ。仕事の話も、湿っぽい話もなしだ。

　先の教訓を生かし、街へ遊びに行こうか。
　恋が実るかどうかがは判らないが、恋を経験したいものである。