机と椅子と強いてあげれば天井の照明以外に何もない無機質な室内で二人の男が向かい合っていた。
一人は椅子に座らず背筋を伸ばしたまま微動だにしない。サングラス越しに見える蒼い瞳からはなんの感情も伺えなかった。
もう一人は椅子に座って、コピー用紙の紙束に書かれた内容を黙読している。お互いに言葉を発さず、聞こえる音は紙をめくるときのわずかなものだけ。しばらくの後、座っている男は最後まで読み終えると、紙束を乱雑に机の上に放り投げた。
深く息を吐き、疑わしげな視線をサングラスの男に向け、一言だけ尋ねる。

　紙束に書かれていたのはある男の物語だった。正確に言えば、その断片であった。
造られた存在であるその男は、目的を果たすために一揆に参加する。彼は共に戦う仲間と出会い、力を身につけ、
……何も起こらずに終了する。そんな物語だった。意味のない終わりと価値のない幕引きが最後を飾る、唾棄すべき大団円。

相手の言葉を遮り、サングラスの男が語り出す。

段々と声は大きくなる。室内に響くその言葉は、まるで物語るかのように、

何かがおかしい。この男はここまで観測対象に入れ込む人間だったか？
疑問で言葉を失った聞き手の様子を意に介さず、何かに取り憑かれたような熱でサングラスの男は語り続けた。

ふと、言葉が止まった。

物語から外れた端役の結末など、誰も語りません。だから、一揆が終われば男の話は終わるんです。

先ほどまでとは打って変わった冷静さでサングラスの男は説明を終えた。
何があったのか、座っている男は聞こうとしなかった。いや、できなかった。
その代わりに、頭のなかに別の質問が思い浮かんだ。

めでたし、めでたし。

――この話の続きは、また今度。