正直なところ、拍子抜けどころか三度見レベルだった。
　ギルは一撃で吹き飛ばされ戦闘不能、戦力的にどうしようもない私の一撃ですら軽く200回は死ねるレベルの追い打ちだ。
「……シズクっていうのは強制型エンブリオだったんでしょう？　だから、つまり……契約解除状態になってるのかしら」
「そうかもしれません。瀕死という割に元気ですし」
　生命力の搾取が無くなり体は健康になる。が、同時にエンブリオの力も失い一般人に毛が生えたレベルにまで落ち込んでいたというのが真相だろう。少なくともイカ娘がエンブリオとの契約自体を不可能にしたという話は無い故に。
　エルヴェアがギルの周りをふわふわと飛び回りながら奥さんはどこ？　逃げられたの？　とひたすらに挑発しているのは見なかったことにした。
　私達の身の振り方は決まっている。エンブリオたちも。
　あとはタイミングだけだ。

　　　　　　男はそっと指輪に口づけた。