SIDE*ユリシス

…操られていた父上の死体がぴくりとも動かなくなり。

この世から、オリフィアの気配が消えた。



ああ、全てが終わったんだな…。



結局、私は…父も、妹も、救う事ができなかった。


だが・・・。


不安そうに父の死体と、私を交互に見るマグノリア。

そう、私も、オリフィアも、そして父ですら彼女が一緒に居た時は安らかな気持ちでいた。

大切な家族の一人。

そして、私が愛する人。

彼女だけは、守ることができた。

ふと、周りを見渡せば私が記憶召喚で召喚した人々が徐々に消えていっている。
もう、タイムリミットなのだろう。

もうすぐ、私の居たという記憶と記録は全てこの世界から消えてなくなる。

彼女の…マグノリアの中からも私の記憶は消えてしまうだろう。
だが、それでも


「マグノリア。」

そっと、不安そうにしているマグノリアの頭を撫でる。

「きっと、父も…オリフィアも、本当はお前を愛していたよ。そして、私も。」

マグノリアを撫でながら、そっとマグノリアの少し後ろに居る少年を見る。
マグノリアの本当の家族、彼にも声をかける。

「私達の妹、娘を…頼む。」

きっと、そんなことを頼まずとも彼ならばマグノリアを大切にしてくれるだろう。


そっと、マグノリアの頭から手を離す。
ああ、自分の存在が透けて来たのがわかる。

「さようなら、マグノリア。私も、愛していたよ。」

「…どうしたの？マグノリア。泣いてるの？」

ユカラがはらはらと目から涙を流すマグノリアに声をかける。

「悲しいの…けど…何故こんなにも悲しいのか、わからないの。」




そして、彼が消えた後には。

1匹の蝶がひらりと舞っていた。


1羽の兎はその蝶を見て涙を流し続けた。