『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2077.12.24.18:32、とある惑星にて――


　硝子の筒の一つが反応した。淡い緑の光が消え、硝子が中央から上下に
開き、収納される。
　無数のケーブルに繋がれた人型のロボットがあった。目を閉じ、
静かにしている。ケーブルの幾つかに振動があるが、このロボット自体は
起動していないようだ。
　男性型で俺に似た容姿だった。頭髪は黒い。
「これは……まさか、アオイ少佐か？」
　少女は笑みを浮かべる。
「違うわ。黒髪にしちゃったけど、ミライのために作った高性能な
ロボットよ、戦闘力を重視したロボットよ」
「俺のため？」
　空間に白い四角形が現れ、文字と図を表示する。このロボットの
性能と仕様についての説明らしい。
「ミライ、よく言ってたよね。人間を助けるのも重要だが、マスターの
役に立てるくらいの強さが、戦闘に特化した力が欲しいって。
これは主に白兵戦向きに設計されたロボットよ」
「確かに力が欲しいとは言ったが……」
「後は『核(コア)』を入れて、色々と設定するだけで動くわ」
　ここで古い身体から新しい身体へと移植しろと言いたいのか。
「ミライの『核(コア)』と『記憶』を入れれば、ミライは戦闘に特化した
ロボットに生まれ変われるのよ」
「生まれ変わる……だって？」
　性能と仕様を見る限り、かなり魅力的な話である。
「そう。低性能より高性能な方がいいでしょ。低性能の方は別の
『核(コア)』を埋め込んで、別のロボットとして生まれ変わるの」
　微笑みを浮かべる少女。少女の右手には光輝く球体が浮かんでいた。
　高熱の球体が浮かんでいる。機械ではない。謎の熱源が球状となって
空間に浮かんでいるではないか。
「前に夢で見せたけど、これが魔法ね。不思議でしょう」
「いつの間に！？　何が起きたんだ！？」
「常識、概念に囚われない力……それが魔法。魔法の解明なんて
絶対不可能。何故なら、未知の力だから」
「うわっ！？」
「ミライ、私と共に悪に……宇宙の支配を狙いましょう」


　まずい。性能が落ちる。機能停止に追い込まれる。身体的損傷も酷い。
　意識が飛ぶ直前、背後で激しい音がして、部屋が激しく揺れた。何者かの
駆けつける足音と聞き覚えのある声の悲痛な感じの叫びが聞こえた。
人間と球状のロボットの熱源を感知する。
「ミライ〜っ！」
「ぽ……ち……」
　一瞬だけ視界に映り込んだのはぽちと人型の知人の姿だった。