燃え盛っていた業火はいつしか火炎となり、種火となり、そして消えていった。

そう、戦いは僕達の勝利で幕を閉じた。


僕達は勝利を喜び合い、ベルフィは約束通り世界の破壊をやめてくれた。
彼女は悪神ではなく、そしてこの世界を嫌っていたわけではなかったのだ。

……いや、単に気まぐれなだけかもしれないけど。

とはいえ、考えを改めたベルフィはここを最高の観光名所にすると意気込み、そしてどこかに飛んで行った。
観光名所を案内するガイドのベルフィはちょっと見てみたいかもしれない。


そんな事を考えながら僕は少しの間目を閉じ、意識を身体に傾ける。

僕の身体を巡る熱い波動の力。
それは戦いの中で僕がベルフィから奪った炎の力の一片だ。

その力は彼女の手を離れてなお、大きな力を発している。
このまま持ち続けるには僕の手に余る程だ。
しかし、折角の力を手放すには少し惜しいし、彼女がいなくなってしまったのでこれをその辺に放る訳にもいかない。



僕は少し思案した後、ふとある方法が頭に浮かんだ。

力の固定化――つまりふわもこ達の印章技術だ。

まったく同じようにはいかないにしても……僕が持つ技術を応用すればできるかもしれない。試す価値はある。
僕は精神を集中し、力を形にするためのイメージを思い浮かべる。

――不定形かつ広大な物から形のある、そして凝縮された物へイメージを転換していく。

――そのイメージを『付加』するための器を具現化させる。

――そして器にイメージを、力を遷す。

そう呟く僕の手の中には炎の力が宿った結晶があった。
強大な力は奥に収められており、結晶からは僅かに暖かさを感じる程になった。

僕は炎の結晶を大切に仕舞いながら、先程の工程を思い出す。
意識して紡いだ言葉ではなく、それは意識の底から出てきた――そんな感じだった。

王を打倒し、ネクターを取り戻し、そして世界の危機を回避した。
僕達はやるべき事をやり通す事ができたのだ。

最後にやるべき事、それは――彼女たちへの報告。