ステンドグラスの外側が目映い輝きに満たされる。色味も姿もさまざまに描かれたものたちがその彩度を増し、次いでその形を歪めていく。戦いの場から遠く離れているはずのこの場をも脅かすほどの劫火、そこから発せられる熱風がガラスを舐めて、それが持つ輪郭も意味も奪い去っていく。
　暫くの間、進むことも忘れ二人その炎へ見入っていた。元より何の目的があって来たというのでもない。時間を気にすることもなく、目の前の興味へ注力していた。
　そうしていればふっと唐突に光は潰えて。
　それきりどうなったかも分からないまま。その先はその日の進攻を終えた後の、一揆衆への公布で知らされた。

　魔神ベルフィの打倒。
　彼女による協力の約束。
　宣言された一揆の終結。
　ここから先は撤退戦。
　全構成員の撤退を終えた後、一揆衆という名においての支援は失われる。

　遂に来たかと、感慨が胸の内を満たした。始まったものに終わりの来ることは必然で、けれどどこかでそれを望まない自分もいた。

　誤魔化しだと知っていた。互いに、とうにそれを了承していた。

　告げられた拒絶と求められた変革は未だ胸の内にわだかまる。それは果たして自分に成し得るものか、その答えは既に知っている。それを幾度求められたか知れないのだから。
　端から結末など決まっていたのだと言われればそうかもしれない。ただ私は今なお信じている。側になくとも及ぼす影響の大きさというものを。私は多くそれによって動かされていて、それによって様々に人を動かしていけるのだと。

　緑眼を静かに見据えた。その内の侮蔑が困惑へ変貌していく様がつぶさに見て取れる。その表情からでなくその心の揺れよう、視覚によって私の捉えることのできるそれそのものから。

　向けられる視線が冷えていく。互いのそれが刺すように交錯する。受け止めねばならなかった。この旅路を真に彼のためとする、そのために。
　それを大人の責任と言えば、きっと彼は鼻で笑うだろうけれど。ただそれを果たさねばならないという使命感だけは、何より強く私のうちに根付いていた。
　――の男は次代のためにあるものだと。そう教えられたこと、それも一つ私というものを構成する最も根深い要素であるのだと、改めて実感して。
　笑んだ。彼への慈しみと、私の人間性のために。