『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.09.09.03:41、とある施設にて――


　金髪の少女は銀髪の少女と同じであり、異なる存在である。
「……よく判らないが、異なる人格である君が無事であるということは、
俺とデートした少女も無事ってことか？」
　三個目のサンドイッチもぺろりと食べて、金髪の少女は頷いた。
「そうね。私達の身体は一つだし、私が無事なら、あの子も無事よ」
「そうか。無事だったのか。よかった」
　少女の救出のためにここまで来たのだ。少女の安全が判って、
一安心した。しかし、少女に瓜二つの少女は、少女とは別人のようだ。
「うふふ。残念ながら、彼を逃がしちゃったけど、この世界でこの私に
勝とうなんて甘いわ。女子供だからって舐めないで欲しいわね」
「……大した自信だな」
　銀髪の少女と異なり、勝ち気な少女のようだ。
「当然でしょう。永い時を生きていれば、知識は自然と身につくわ」
「そうなのか。お嬢さんには科学技術なんて縁がなさそうだしな。
お嬢さんは誰かと組んでるんじゃないかと思っていたが……」
「自力よ。私は自分でここにいるの。お嬢さんだからって馬鹿にしないで。
科学技術に関しては、それなりに知識を持っているつもりよ。だから、
あの子がお兄さんを助けられたのよ」
　ディバイダーのウイルスから助けられた時の話か。
「何ならお兄さんの本体を直接動かしましょうか？　丸っこいロボットさんで
お手玉してみる？」
「やめてくれ。ぽちが可哀想だ。これは失礼だったな。うん、お嬢さんは
科学方面にかなり強いようだ」
「そうよ、私はとても強いのよ」
　少女が赤いジャムの焼き菓子を差し出した。
「食べ物の情報は得られるが、ロボットだから食べられないぞ」
「食べられなくても、食べる仕草は出来るんでしょ？」
「仕草は出来るが……味は分析した結果しか出ないぞ」
　焼き菓子の情報の塊を口へ運んだ。苺ジャムのクッキーだ。
「人間の味覚なら、バターの匂いが強めでちょっと甘めか？　多分、
ほどよく甘めで美味しい」
　情報を分析していると、少女がじっとこちらを見つめていることに気付いた。
「……どうしたんだ？」
　少女は俺の顔を見つめたまま、その白い手で頬に触れてきた。
「金髪ではなく黒髪だったら、見間違いそうだわ」
　指が髪に触れた。指で髪を梳く。
「お兄さん、あの少佐に……アオイに似ている」
　銀髪の少女にも言われたことだった。