(※引き続き番外編という名の本編。
　 さて、特に何もネタが思いつかなかったっていうね。
　 なのでゆったり適当に書いていきます。
　 それでは日記をお楽しみ下さい)

「……」
「……で、
　もう一辺いってもらえるかな？
　なんて言った？」
「そちらの要求はお断り。
　――でも、
　こちらの要求は通してもらうわ。
　何度でもいってあげる。
　貴方達に交渉の余地はないの。
　要求をのむか、
　飲まずに破滅するかの２択だけ。
　選択の余地のない取引ね。
　まぁ、強制ともいうわね。
　で、それがどうかしたの？」
「――テメェ！
　今の状況が分かっていってやがんのか！？」
発するのは異国の言葉。
返す私の言葉もまた異国の言葉である。
まぁ、他国に来ている以上当たり前の話ではあるけれど、
やはり日本語の方がいい。
喋りやすい。
やっぱり自分は日本人なのねとのんきに思いつつ、
今の状況といわれて、
小首をかしげて周囲を見渡す。
状況といわれても、
周囲を見渡す限りでは、
屈強な男に銃を四方八方から突きつけられて、
味方のいない孤立無援ってぐらいで、
別段変わった事というか問題はない。
しいていえば、
正直な話彼我の戦力差は明らかといった所。
か弱い女子高生と犯罪組織……マフィアの一団。
ええ。完全にこちらの方が圧倒的に下ね。
普通に考えて。
「分かってるからいってるのよ。
　まぁ、そもそも大した用件でもないし、
　穏便にいきたいとは思っているわ。
　面子だとか考えてるんでしょうけど、
　それなら器の広い所みせればいいじゃない。
　別に減るもんでもないでしょう？
　私を目的地まで送って欲しいってだけ。
　ただ、あそこは貴方達の土地だから、
　こうして許可を取りにきてるだけじゃない。
　送って貰うのも、
　私が余計な事しないよう監視するには丁度いいでしょう？
　何か問題があるかしら？」
でも、私は一歩も引くつもりはない。
ケチケチするなといってやる。
全く持ってケチ臭い。
まぁ、どうせ小娘に乗り込まれて、
好き勝手いわれて、
面子だのプライドだの考えてるんでしょうけど。
まぁ、だけど、
ここまで劣勢の状況で、
脅して動じもしない相手に対して、
本気で武力行使をしようものなら、
底が知れている。
試すのはこちら側。
はたしてどちらを選ぶのかしら。
じっと微笑みを浮かべて様子を伺う。
暴発しそうな連中もいるが、
交渉相手としてさっきから私と会話してる男は、
少し視線が左右にさまよっている辺り、
不安がこみ上げてきたのだろう。
その直感を信じるか、
それとも――
ああ、考えるだけで、
どきどきわくわくしてきたわ。
「……」
「黙っていても分からないのだけど……」
「チッ……
　勝手にしやがれ。
　あの島にいく船に勝手に乗ればいい。
　ただし、
　テメェの世話はしない。
　自分でどうにかしろ。
　帰りについても勝手に乗ればいい。
　生きてたらだけどな。
　おい。
　お客さんのお帰りだ。
　こんなガキに本気になってもしかたねぇ。
　だが、ここまでやってどうじない勇気に免じて、
　それくらいは許してやるとしようじゃねぇか。
　いずれにせよ損はない。
　細かい事は後で考えるとしよう。
　ほれ、お客さんがお帰りだ。
　道をあけてやれ。」
男が手を振ると、
私を囲んでいた男達は銃を下ろし、
私が帰る道をあけてくれる。
どうやら交渉は成立らしい。
ありがとと告げる私に、
舌打ちをして小さな紙を差し出したので、
それを受け取ってみてみると、
どうやら船の出向予定らしい。
滞在に許されたのは３日。
まぁ、私の目的からすると
長すぎるくらいかもしれないが、
観光と割り切る事にする。
折角の南国の島な訳だしね。
楽しまなきゃ損だし。
ちなみに、
この後ホテルまでは問題なく帰れたのはいうまでもない。
ちょっとあっけなさ過ぎてつまらないけれど、
ま、面倒がないに越した事はないわね。
ええ。

――かくして、
予定通り、船に乗って目的地に向かう事になった訳だけど、
監視役についたのは、
長身でひょろながの顔色の悪い不気味な男。
少なくとも幽霊とかそういった類ではなく、
生きている人間みたいだけど、
生きている方がやっぱり不気味。
まぁ、
私が不審で不利益な行動をしないかぎり行動は起こさないと思うが、
ちょっと厄介な相手かもしれない。
無論元より敵対するつもりはないし、
不審な行動はあっても、
不利益な行動をするつもりはない。
というか……
正直、遺品を探して取りに行くのに、
過剰な面倒事はいらない。
「せめてからかい甲斐のある相手ならよかったのだけどね、
　それならもうちょっと楽しいのに……
　残念……」
ぽつりと独り言でもらしてしまうほどに、
つまらない監視役である。
しかも、
この手に限って敵に回った時に過剰な面倒事を撒き散らす。
めんどくさい。
一気呵成に潰してしまえとも思わないでもなかったけれど、
別に敵対する事は本意ではない為、
それをやってしまうと自分の主義に反してしまう。
こういうときにやる事は、
相手を無視するに限る。
ま、幸いにも風景は綺麗だし、
退屈はしない。
ゆっくりとこの景色を楽しみましょうか。

――島について、風光明媚な土地を観光しながら、
霊を利用して、
遺品を捜す。
遺品というものは、
人の想いがつまったものであり、
どんなに小さな代物でも探しやすい。
大体の方をみてみると、
うっそうとした森の茂った小さな山。
まぁ、想像通りというかなんというか、
人気が少ない場所に。
「ねぇ。
　あそこに行きたいんだけど、
　構わないかしら？」
人気の少ないところなので、
案外というか、
基本的にそういったところに限って、
人は隠したいものを隠す。
つまりは、
みられたくないものがあるとしたらそこにある。
みられたくないものをみられたら、
まぁ、必然的に敵対する事になる為、
監視役の男に聞いてみる。
すると、少し私の指差した方向をみて、
少し考え頷いたのを見て、
「じゃ、早速いってみようかしら。
　ああ、
　そうそう。
　野宿になるかもしれないけど大丈夫？
　私は用意できてるけど。」
一方的に喋り続ける。
別に口に出して返答してもいいのに、
口に出さずに返答する所をみると、
こちらを警戒してるのと、
無駄口をたたくのは趣味ではないようで、
全く愛嬌の欠片もない。
まぁ、その分実直で、
扱いやすい男なのだと思うが。
まぁ、いいわ。
さっさと終わらせましょう。
そのまま目的の場所へと移動して、
目的の物を拾う。
錆びた指輪。
ついている宝石も、汚れが付着してくすんで見える。
だが、
そのまま何もせず小箱にしまって、仕事完了。
やはりいうかなんというか、
見つける頃には暗くなってしまったのでそのまま野営。
翌日は観光しつつホテルにとまって、
帰還となった。

「で、その後、きっちり指輪を届けて、
　報酬をしっかりもらったわ。
　その報酬がこの古書という訳よ。
　その後、
　一仕事あって今にいたる……それくらいよ？」
ケーキをつつきつつ、
世間話。
面白い話聞かせてといわれて、
今回何事も面白い事もなかったので、
つまらない話ではあるが、
仕事の前に私用を済ませたので、
何かのネタになるかと思って話したのだけど、
話している途中でやはりつまらないと思って、
適当に切り上げた。
「いやいや、
　なんか肝心の部分だけぼやかされた気がするんだけど！」
「ど、どこから突っ込めばいいんだろう。」
だが、
何が不満なのかというより、
肝心な部分をはぐらかかされただの、
突っ込み所が多いだの散々ないわれようである。
「魅月さんらしいといえばらしいですけどね。
　そもそも最初の状況とか、
　観光で楽しんだときの内容とかはないんですか？」
「観光で楽しんだ様子は、
　写真見せたほうが早いし、
　最初の状況に関しては、
　目的地で余計なトラブルを起こす前に、
　なんとかしようと思った結果じゃない。
　監視役の人がもうちょっと喋る人なら、
　色々ネタができたと思うのだけど、
　ずーっとだんまりだもの。
　つまらないにも程があるわ。
　そういうそっちはどうなのよ。
　私のいない間に何か面白い事でもあった？」
「まー、私のほうはないよ。
　というより、
　あんな話聞かされて、
　私の話っつっても――
　……うん、ついこないだ昇給したくらい？」
「あら、それはおめでたいわね。
　おめでとう。」
「おめでとう！」
「おめでとうございます！
　いい話じゃないですか、
　私にも面白い話がありますよ。
　実はですね。
　皆さんの母校の校舎がこの度、
　改築の運びとなりました！
　綺麗な校舎になりますよ、
　是非改築が終わったら訪問してくださいね。
　あ、でも、
　春まで待って貰ったほうがいいでしょうか。」
「へぇ、それは楽しみねぇ。」
まぁ、ともあれ、
折角なので、
近況を聞いてみると、
睦美さんも真白さんも平和そうでなによりである。
ひょっとしたら、
私の話よりも面白く興味深いかもしれない。
こういう些細な日常的な幸せの話は、
とても貴重というか、
私にとっては憧れるのだから。
しかし、なぜか咲良さんだけは、
何かを話そうとしない。
一体何があったのか……
仕方ないので、
私から話をふってみる事にした。
「――咲良さんは何かあったかしら？」
静かに微笑みかけてそう聴くと、
何か嬉しそうににっこり笑って、
「――ううん、私のほうは何も。
　でもね。
　面白い話を聞いたよ。」
「面白い話？」
「どんな話でしょう？」
面白い、話を聞いた、か。
そういえば、
咲良さんは割りとオカルト系の話が好きである。
今回もそれ系の話、
しかも、
この近辺での話しなのではないかと推測しつつ、
どんな話かしら？楽しみねといいつつ、
聞く体勢に入る。
「――実はね。
　最近この辺りには妙な噂があるのよ。
　夜になると人通りが少ない道だと凄く暗いのね。
　電灯が少なくて。
　その中でも酷い場所になると、
　電灯が一つもない上に、
　建物からの光も差し込まない道があるらしいの。
　完全な闇に包まれた道。
　だけどね。
　時折、
　光がないはずなのに、
　誰もいないはずなのに、
　ぽうっとした光が漂うなんてのはよく聞く話なんだけど、
　最近ね。
　その道を帰り道に使ってる人が、
　２、３人行方不明になったらしいの。
　夜の闇に食われたんだみたいな話。
　それで、その道を写真でとると、
　何の変哲もない写真とれるらしいけど、
　近いうちに不幸に見舞われるなんて事もあったみたい。
　で、ここからが本番なんだけど、」
ゴクリと息を呑んで聞く二人に、
面白そうな話に、
思わずへぇ、と声を出す私。
そんな様子に満足したのか、
咲良さんは息を呑んで声を潜め――
「行方不明に原因不明の昏倒者が数名――
　どうやら噂は本当みたい。
　結びつけて考えたって可能はあるけど、
　それは裏側の世界を知らなければの話、
　だけど――」
期待をこめて私と真白さんの方をみる。
成る程、
確かにこれを判断するならば、
完全にそちら側の人間が判断するのが一番だろう。
真白さんの方をみやると、
私の眼をじっと見て一つ頷いてきたので、
どうやら私も真白さんも同じ結論に達したらしい。
だから私も一つ頷き――
「ええ、貴女の考えている通りでしょうね。
　確実にいるわ。
　それもたちの悪いのがね。
　それで、まさかとは思うけど、
　四人で解決しましょうっていいたいって事でいいかしら！」
「はいっ！」
元気よく答える咲良さん。
「その、危険ですよ？」
「でも、二人がいれば大丈夫かなって……
　本当にどうにもならないくらい危険なら安全な場所に退避するし。
　ね？どうかな？」
「あー、まぁ……
　興味がないといえば嘘になるし、
　一緒にいきたいのは確かかな。
　迷惑にならなければ是非お願いしたいけど？」
止めようとする真白さんだが、
どうやら睦美さんも乗り気になったらしく、
二人の意志は固いらしい。
まぁ、とはいえ、
二人とも危険といえば大人しくできるタイプだし、
無茶はしない、
最低限の護身も出来る事を考えると別に問題はない。
とすれば、
私に断る理由はない。
「構わないわよ。
　それじゃ、夜まで遊んでからいきましょうか。
　――別に私達の誰かが損するわけでもないしね。」
「魅月さんがいうなら大丈夫そうですね。
　ええ、
　私もしっかりお二人を護りますよ。
　今晩が楽しみですね。」
承諾する私達二人に、
手をあわせてやったぁと喜ぶ二人。
ま、何がきても、
何があっても護らなきゃね。
そして、楽しく愉快な経験を四人で共有。
ああ、
全く……
友達というのは本当にいいものね。
ありがとう、三人共。
クスリとこぼれる笑みにこの暖かな日常の感謝を込めるとしましょうか。

中途半端に多大なる期待を乗せて任された猫又