玉藻が紅梅色のケープを貰って、それのお礼を言いにいって。
玉藻が向かった先にいた男の人は、とても大きな太刀を持っていた。
私は武器について詳しくないけれど、あの太刀はなんとなく玉藻が好きそうだなって思った。
二人が話している間、外に出ていた私はふわりと玉藻の肩の上から離れて、少し遠くから二人の様子を見ながら、唇を少しだけ尖らせた。

「……時風ってば、退屈？」

ふとそんな声が聞こえて、顔を上げれば見えたのは祓の顔。
いつのまにか私を追いかけて来ていたらしい。
祓に小さく頷いた後、私はもう一度玉藻のほうを見た。

「ちょっぴり退屈。……にしても玉藻って、意外と喋るんだね」
「あ、それは私もちょっぴり思ったかな」
「祓も？」

はじめて会ったときは仏頂面ばかりで、あまり喋らない怖い人かと思ったけれど、玉藻は意外と喋る。
自分からはあまり喋りかけにいったりしないから、そう見えただけなのかもしれない。
私はまだまだ玉藻のことを知らない、まだまだ知らないことのほうが多い。
限られたこの旅の中で、私はどれだけ玉藻のことを知ることができるのかな、と少しだけ思った。