『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.09.09.02:42、とある施設にて――


　夢……いや、違う。俺が知り得ない何かを伝えようとしている。
　俺はあんな弱気なマスターを見たことはないし、完成までの
過程は知らない。水槽の中のボディが見えた瞬間、それが、
自身であると確信した。与えられた『核(コア)』のダメージ……
焼き付いた記憶の原因が判った。俺の『核(コア)』はマスターの
『核(コア)』の複製だ。要はマスターにとって記憶を失ったマスターに
等しい能力を持ったロボットだったのだ。

　理由が何となく判った気がして、少しだけ安心した。俺が自身の
複製に近しい存在故に、彼は俺を気味悪がって極力避けていたのか。
　相棒よりも、予備の複製扱いだ。自身が倒れたなら、予備である
俺が活動する想定なのか。それはそれで寂しいが、そう作られたなら
それに従い、役割を果たすのみだ。


　夢はパステルカラーの世界へ変わった。空と大地に近代的な都市、
そして、遊園地を中心とした風景だ。全てデフォルメで表現されている。
行き交う人々や動物も皆がデフォルメだ。
　遊園地が舞台のようだ。先に見た魔法使いの少女と思われる
デフォルメの少女も遊園地で遊んでいた。
　何なんだこれは。人々が遊園地で楽しんでいるだけだ。
　夢が終わらないかと苛々してきた頃、夢に変化が現れた。
　竜である。巨大な竜が空より舞い降りて、遊園地を破壊し始めたのだ。
逃げ惑う人々。竜は人々を嘲笑うように咆哮する。竜が人々に向けて
尻尾を振り上げようとした時、人々を光の膜が包み、竜の尻尾を
跳ね返した。人々が驚きの声を上げ、誰かが竜と対峙する人物に
気付き、人々が声援を送る。あの魔法使いの少女だった。
「待ちなさい！　みんなを困らせる悪い子はお仕置きです！」
　手にした杖が光を放ち、人々を光の膜で覆っていった。ダメージを
跳ね返す障壁の魔法らしい。
　まるで子供向けのヒーロー番組だ。しかも、世界観は滅茶苦茶だ。
現代とファンタジーが混ざって、統一感がない。
　少女が魔法で竜と戦い、少女が危機になると、どこからか巨大
ロボットが現れて、少女の代わりに竜と戦い始めた。ロボットが
竜を懲らしめ、竜は謝ってその場を去っていった。後は少女が
魔法で遊園地を元に戻して、ロボットと共に去っていく。


　何を伝えたいのか全く判らない。
　しかし、少女の声に近い声に聞き覚えがあった。