搾取するもの。
　喰らい尽くすもの。
　終末を始めるもの。

　知り尽くした口振りで、魔女はエンブリオをそう呼んだ。実際彼女は誰よりも何よりもその性質を知っているのだろう。その言を信じるのならば、彼女こそがこのメルンテーゼの造物主であるのだから。
　それを素直に信じるかと、そうであれば辻褄が合うかを考えることは別の次元にある。無論俄には信じられず、しかしその智の深さにもその傲慢にも、言葉が真実であると考えれば筋は通る。
　そうなのだとしたら私は奇妙な符合を感じずにはいられなかった。私がエンブリオに疎外され、内包されるものであるエンブリオの内奥へ潜まなければならなかった、その理由について。

　自らで生み出すことができず、
　周囲を喰らわずにはあれず、
　結果として終末に向かわずにいられぬもの。

　そこにおいて私と彼等にどのような違いがあろう。不幸にして私にはこれを抑えるものがなかった。抑えようとしてそれが叶うほど、小さな存在として収まりきれなかった。
　故に私はどこまででも野放図で身勝手だ。それが私のようなものは皆持ちうる気質だとして、私はそれを十割許せたことはない。折り合いのために大なり小なりを認める形で妥協することは数多あれど。
　きっとそれを彼等も許さなかったのだ。自らの生きてきた世界で、自らに属さぬものが野放図に世界を喰い荒らすということを。

　心中で呟く、正しいよ、という言葉はどこにも届かない。身体たる清龍、能力たる死の王と星河の女神。そのどれももはや意識を保たず、その一言を聞くこともましてや返事を返すこともない。
　ただそれでも言わずにはおれなかった。彼等の拒絶とそれが成した警告の意を悟ったものとして。その警告をとうに破ったものとして。